2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

中世文学研究会350

午後から、東大の中世文学研究会がハイブリッドで行われました。院生とOBと合同の研究会、350回目だそうです。発表は①院生の杉山翔哉さん「謡曲《八島》のいくさ語り」 ②OBの原田敦史さん「真名本『曽我物語』考」 の2本、参加者は対面・リモート併せて…

天真爛漫

NHKの朝ドラが完結しました。かつての園芸学志望はもうとっくに視聴をやめたらしいのですが、植物分類学志望だった私は、ほぼ全回視ました。友人はNHKの自家番宣が目に余るのでやめた、と言い、全く同感です。そもそもあれは「このドラマはモデルのあるフィ…

扶養

「130万円の壁」と言われる問題解決の政策に、根本的な、しかしもやもやした疑問を懐いています。「扶養」とは何か。世帯別と個人別とを混同したまま、公費で目先の既得権保護をやろうとしているのではないか。選挙対策かどうかは分かりませんが。 そもそ…

信濃便り・山法師篇

長野の友人から、訪問先で見つけた、と写メールが来ました。 ヤマボウシの実 春にはハナミズキに似た白い花が咲きます、とあったので、調べるとハナミズキと同じ仲間なのですね。花弁に見える苞の先端が尖っているのがヤマボウシだそうで、緑の芯(それが花…

鴨東通信117

「鴨東通信」117号(思文閣出版)を読みました。有富純也・佐藤雄基対談「通史なき時代をどうとらえるか」と、大島真理夫さんの「研究史の世代間共有について」、高野信治さんの「知行論からのささやかな展望」を読んで、あれこれ考えさせられました。研…

駅地下

用があって、東京駅のみどりの窓口へ出かけました。ようやく季節相応の気候になり、地下鉄の駅まで汗をかかずに歩いたのは、何ヶ月ぶりでしょうか。窓口の行列はまあまあ、と思って並びましたが、アナウンスがしきりに、「並んでもこの窓口ではできないこと…

早歌とは何か

外村南都子さんの遺稿集『早歌とは何かー能に影響を与えた歌謡』(三弥井書店)が出ました。外村さんは私の大学院入学当時の最上級生、ずっと後ろ姿を見続けてきた先輩でした。2021年11月に亡くなり、本ブログにも追悼文を書きました(「先輩の背中」)。本…

彼岸まで

雨の合間を縫って、扇屋へおはぎを買いに行きました。待っているらしい客に順番を譲ったら外国人だったらしく、片言英語で応対した後今度は私がスルーされました。どうやら桜木天神祭礼の手配で、店の主人も大女将も気がそぞろのようです。若女将に「待って…

阿波国便り・玉虫篇

徳島の原水民樹さんから、写メールが来ました。 玉虫 【まだまだ暑いですが、昨日から日中の散歩に切り替えたところ、玉虫(死骸です)を見つけました。子供の頃は虫取り網を手に走り回っていましたが、郷里で見たことはなく、徳島に来て初めて見ました。今…

見えないコロナ

9月に入って、銀座や丸の内に出かける用が続き、地下鉄に乗ってみると、もう若者の殆どはマスクをしていません。銀座ではほぼ皆無でした。私も暑いので店や乗り物に入る時だけマスクをするのですが、電車内の座席に座った頭の上でノーマスクで喋りまくられ…

スリランカより・続

8月にスリランカへ古代の水利施設のフィールド調査に行った鈴木慎也さんのスリランカ便りの続編です。【スリランカには26の国立公園と100以上の自然保護区が存在しており、多種多様な生き物が生息している。今回の調査地は国立公園に隣接した密林地帯であっ…

口頭発表の前に

前回も今回も、私は研究報告会の講評で「プレゼンテーションの能力向上を意識してください」と言いましたので、口頭発表のスキルについて、ごく初歩的なことを書いてみます。学部の演習段階で習うことかもしれませんが、役に立てば幸いです。 基本的に、原稿…

豊後便り・樫原湿原篇

別府はすでに初秋になった、真夏日ではない、と友人から写メールが来ました。 樫原湿原 西国では地名の「原」を「ばる」と読むことが多く、鳥取にも福岡にも例があります。 【標高500m程度の低山ですが、樫原湿原ツアーに参加してみました。関東や中部地…

2~4世紀の銅鏡

実盛良彦編『銅鏡から読み解く2~4世紀の東アジアー三角縁神獣鏡と関連鏡群の諸問題』(アジア遊学237 勉誠出版 2019)を読んでいます。実盛さんは考古学が専門、今は四條畷市教育委員会勤務、『明日へ翔ぶ 2』(風間書房 2011)に「楽浪郡地域における青…

人材育成

内閣が改造されました。近年、何をするのかよく分からない(と見える)職名が増え、大臣政務官や首相補佐官はその最たるものです。なぜ副大臣と政務官の両方が必要なのか、首相補佐官と秘書官とはどう違うのか、素人の我々にはよく分かりません。 新内閣では…

スリランカより

明翔会の鈴木慎也さんが、スリランカへ4年ぶりでフィールド調査に行ってきた、というので、その報告を投稿して貰いました。 【私は2017年から古代スリランカの水利施設の調査を行っている。この8月に実施したジャングル内での遺跡探査の様子(今回のテーマ…

中世の任官情報伝達

手嶋大侑さんの論文「平安・鎌倉時代における任官情報伝達文書とその公験的機能」(「年報中世史研究」48)を読みました。2度の口頭発表を経て書いたとのことで、要領よく整理されていて分かりやすい。 10~13世紀の任官情報はどのように伝達されたの…

活躍報告4点

明翔会研究報告会の席上で貰った、各人の活動報告について紹介します。 ①龍真未さん「展覧会評<修道女:中世の強い女性たち>」(「東京芸術大学西洋美術史研究室紀要」18)=龍さんは西洋美術史、中でも中世のキリスト教美術が専門。中世欧州では女子修…

羨望の伊太利亜紀行(3)

松薗斉さんの伊太利亜紀行、今夏の完結編です。 【ローマ・フィウミチーノ空港からローマ市内寄りのホテルに1泊。駅からホテルを抜けるとそこは巨大なショッピングモール。そろそろ疲れが溜まってきたようでもあるので、この辺でのんびりすることにしました…

羨望の伊太利亜紀行(2)

松薗斉さんの南伊太利亜紀行の続編です。 【8月25日、バーリを離れ、さらに南の内陸部の町マルティナ・フランカへ。この町は、私の住む名古屋市本山にあるイタリア料理店「ピアチェーレ・ミオ」の店主エジーリオの生まれた町で、彼に勧められて選びました…

第4回研究報告会2日目

10:00から明翔会研究報告会2日目。午前中1本目は岡部柊太さんの「黒龍会のアジア認識と文明観」。1901年に結成され、共同事業による日本のアジア進出や帝国主義的アジア研究を主張した団体、黒龍会の歩みを辿り、西洋の物質文明に対して、東洋の…

第4回研究報告会1日目

明翔会主催第4回研究報告会の1日目。昼過ぎに新橋の国際善隣会館へ入ると、すでに会場の準備ができていました。世話役の人たちがこれまでオンライン会議を重ね、メールのやりとりを繰り返して用意してきた会です。会場とZoomとを併せて、参加者は老若30…

創られた証言

日赤東京支部がAIによって生成した資料によって関東大震災100年プロジェクトを企画したが、「新証言」と銘打つことへの疑問が出て中止した、との新聞報道を見て仰天しました。日赤東京支部のHPを開けると、こう書いてあります(下線はmamedlit)。 「100年と…

羨望の伊太利亜紀行(1)

松薗斉さんが南イタリアへ旅行するというので、いい写真が撮れたら送って下さい、と頼んでおきました。松薗さんは美声で学生時代は合唱部、その後もバチカンで聖歌を歌ったこともあるのだそうで、イタリア語を習い、毎年のようにイタリアを旅行していたが、…

中世文学68

「中世文学」68号を読みました。関心のある箇所を主に読んだのですが、学会誌らしく、新人の論文もなかなか重いな、と思いました。 シンポジウム「中世文学と絵画」(石川透・藤原重雄・山本聡美・斎藤真麻理)では、絵画研究が次第に、文学や歴史の分野へ…

梨の話

台風で鳥取の二十世紀梨のできばえを心配しましたが、まずまずの出来だったようです。毎年この季節に二十世紀を送ってくれる昔の教え子から、今年は「新甘泉」という品種が届きました。巨大な(huge)赤梨です。1個で5~600gはある。梨は切るとすぐ色…

源平の人々に出会う旅 第80回「熊谷市・熊谷直実」

『平家物語』の名場面の一つに「敦盛最期」(巻九)があります。寿永3年(1184)、一の谷の戦いにおいて、美しい若武者平敦盛を熊谷直実が涙ながらに討ち取る場面は、人々の胸を打つものでした。 【熊谷直実像】 直実は埼玉県熊谷市の出身とされ、熊谷駅前に…

語感

先日の池袋デパートのストライキについては、このブログにも書きましたが、昨日の「天声人語」でも取り上げられ、1951年、三越デパートのストライキの際に流行った「三越にはストもございます」という語が引かれていました。コラムの主旨は、ストは労働者の…

中世日光山

永井晋さんの『日本史のなかの中世日光山ー忘れられた全盛時代』(文学通信)を読みました。宇都宮勤務の頃、市内の二荒山神社と日光の関係がよく呑み込めず、また芭蕉が、奥の細道への旅立ちとして日光に参詣した折の昂ぶりが、いま一つ腑に落ちないでいた…

ストライキ

池袋のデパートが外国ファンドに身売りすることになり、雇用の保障を求めた労組が1日だけのストライキを打ったことが、ニュースになりました。街頭でインタビューされた若者が、教科書の中でしか知らなかったストライキを初めて見た、と言ったので吃驚、百…