2018-02-01から1ヶ月間の記事一覧

鱓(ごまめ)

多ヶ谷有子さんの研究室の論文集『チョーサー・アーサー・中世浪漫Ⅲ』(ほんのしろ)が出ました。多ヶ谷さんの論文「チョーサー『カンタベリー物語』の「免償符売りの話」」のほか、ゼミのOBたちの書いた、英文の論文3本及び邦文の論文2本が収められていま…

八重の侘助

寒い冬でしたが日脚が延びてきたので、春の気配が近づいてきました。小学校の門前にはクロッカス(私がこっそり植えました)が咲き始め、我が家のベランダでは葡萄ムスカリや素馨花、室内では胡蝶蘭の蕾が、日に日に膨らんでいます。一列に植えた球根は東寄…

芸能史研究会シンポジウム

第55回芸能史研究会大会 シンポジウム「<平家語り>の展開と継承」 日時:6月10日(日)13:30~17:30 会場:同志社女子大学純正館S014(今出川キャンパス) *来聴歓迎 基調講演:松尾葦江「『平家物語』諸本の発生と<平家語り>」 講師:…

美食の3日間

宮古島から来たシェフの一家と共に、青山霊園へお参りに出かけました。私はまず、我が家の祖父母の墓へ。隣の墓が取り払われ、後ろの志賀直哉の墓がよく見えるようになっていました。霊園全体、植木を刈り込んで、明るく見通しがよくなるようにしたようです…

シェフの冒険

宮古島からフレンチ・シェフがやって来ました。38年前に亡くなった親友の遺児(40代半ば)です。私が住む町の飲食店をあちこち見て歩きながら、よもやまの話をしました。公務員共済の宿にあるフレンチ・レストランの話をしたら、ぜひ入ってみたいと言う…

座談会「古典のあり方」

國學院雑誌2月号に座談会「古典のあり方をめぐって」が載っています。賑やかで、しかしよく話が噛み合った座談会です。中国文学の川合康三さん、西洋文学の沓掛良彦さん、万葉集の上野誠さん、欧米から来て日本文学を研究しているワトソン・マイケルさん、…

医療現場の会話術

下枝みちよさんの『医療現場のおもてなし会話術』(秀和システム 2017)という本を読みました。「たった一声で評価アップ!」という角書がついています。著者の肩書がメディカルケアコーチとなっているので、調べてみたら、今はそういう名のついた活動が…

面接試験

女子短大に勤めていた頃、高齢の男性教員とペアで面接試験をしたことがありました。受験者の中に、パンタロンスーツを着てきた一浪生がいました。口頭試問は難なく終えたのですが、判定の際に相方が、面接にズボンを穿いてくるなんて非常識、と言い張って聞…

雨月物語

長島弘明さん校注の『雨月物語』(岩波文庫)が出ました。かつて鳥取大学を離任した際、後任が来るまでの集中講義を近世は長島さん、中世は佐藤恒雄さんにお願いしました(なんと豪華な顔ぶれでしょう!)。学生たちの評判は、とてもわかりやすい講義だった…

納税義務

確定申告をしに税務署へ出かけました。親の家を処分したので今年は用紙の入手から、複雑な計算方法を理解するまで、10日以上かかり、その間ずっと、重くて暗い気分の日々でした。税務署では相談中も書類記入にも待っている間も、座らせてくれず、1時間半…

膏薬

今年の冬は一際寒い、というのがどこの店へ入っても挨拶代わりになりました。例年、手袋なんかしたことは殆どなかったのに、今年ははめずに外出するとたちまち指の関節にひびができて、痛い。ハンドクリームを塗ってもなかなか治りません。 子供の頃、祖母は…

羊羹

芥川龍之介の書簡集に「羊羹をありがとう(こう書くと、羊羹に毛が生えているような気がしてならぬ)。」という礼状があります。芥川も漱石も、胃酸過多で悩んでいたのに、なぜか甘い物を貰って書いた礼状が多い。周囲も気が利かないなあ、と以前は思ってい…

標準服

生涯で制服を着たのは高校3年間だけです。都立の中でも当時は極めつきの進学校、「標準服」だということになっていましたが、私服は許されず、冬にカーディガンを羽織っただけで厳しく追及されました。男子は詰襟のセルロイドの芯が痛い(喉仏が大きくなる…

ウィスキーボンボン

聖バレンタインは伝説の多い人らしく、小鳥たちに愛されたとされ、鳥に囲まれて説法する絵を見たことがあります。弊国で言えば良寛さんのような人でしょうか。この時期は日脚も延び、鳥たちの恋が始まるので愛の記念日になったのだという説明を聞いたことが…

立雛

確定申告に必要な書類を捜索したついでに、納戸で雛道具の箱を開け、いつもとは違う雛を出すことにしました。母が嫁入りに持って来た親王雛は100年以上経って、鼠に鼻を囓られたりしているので、例年大内塗の達磨型の親王雛を飾っていたのですが、今年は…

蹌踉蹣跚

高田馬場のメキシコ料理店で、3人の女子会(年齢幅34年)をやりました。この春定年になる方のご苦労さん会のはずでしたが、あれこれ話がはずむ内に、それは忘れられました。退職記念旅行の話、蔵書処分の話、今の学界の話、理想的な教師とはという話、国…

従妹たち

従妹の一周忌が近いので、別の従妹と連れ立って、お仏壇に線香を上げに行きました。昨夏3人目の孫が生まれて、元気な男の子たちの作り出す、明るく力強い雰囲気が救いでした。生命の鎖をつなげていくのが、死者への最大の貢献なのかもしれないなあ、と思い…

時計台

東北新幹線の下りで東京駅を出てすぐ、ビルとビルの切れ目から、服部の時計台がちらりと見える所があります。宇都宮に通勤していた時は、授業は2限目からでしたが、万一の時に間に合わないといけない、と朝6時台の新幹線に乗ることにしていました。朝食の…

いじめ

小学5年の二学期に、湘南の茅ヶ崎から東京の小石川へ転校しました。ポマードで頭を固めた担任が、近所の素封家の一人娘(Qさんとしておきましょう)の隣に席を決めてくれました。転校生の面倒をみてあげなさい、という意味だったのでしょう。彼女はクラスの…

中世芸能史の研究

必要があって、芸能史のおさらいをしています。最近の沖本幸子さんたちの研究から(本ブログ1/29,2/01参照)遡って、岩橋小弥太『日本芸能史―中世歌舞の研究』(日本芸苑社 1951)、林屋辰三郎『中世芸能史の研究』(岩波書店 1960)までた…

古活字版悉皆調査目録

高木浩明さんの「古活字版悉皆調査目録稿(9)」(「書籍文化史」19)を見ました。今回は静嘉堂文庫の調査が中心です。 静嘉堂には院生時代、『国書総目録』制作のアルバイトで通いました。編集部の質問カードに、実際の古典籍を調べて回答を書き込むアル…

石窯漁

ある冬の寒い日、鳥取のスーパーの棚に金銀の鱗が輝く魚が2匹、トレイに載って売られていました。体長は優に20cm以上あります。何だろう?金魚にしては大きすぎる。飾り物にしたいように綺麗です。ふと前日の「ニュース645」で、湖山池の石窯漁が報…

平成30年度奨学基金募集

平成30年度公益信託松尾金藏記念奨学基金の募集が始まりました。本基金は、人文系大学院生に向けた給付型の奨学金です。募集要領や応募書類は、三菱UFJ信託銀行のHPに掲載されています。「三菱UFJ信託銀行 公益信託 奨学金」というキーワードで検索できま…

続・峠越え

太平洋側からバスで鳥取へ入って行く時は、峠を越えた途端に川の流れが逆方向になり、分水嶺を越えたことが分かりました。もう一つ、山陰へ入ったのだと分かるしるしがあります。森の美しさです。山陽側は森林が荒れているが山陰側は手入れが行き届き、林業…

峠越え

このところ毎朝整腸剤代わりに飲んでいる牛乳が切れたのに気づき、雪の合間を縫って買いに行くことにしました。鳥取仕様のゴム長(魚河岸で履いているような長靴です)を履いて、恐る恐る出かけました。児童遊園にはさすがに人影はありませんでしたが、子供…

中世芸能の異性装

辻浩和さんの論文「中世芸能の異性装」(「アジア遊学」 2017/6)を読みました。12世紀から13世紀にかけて流行った白拍子の男装は、じつは男装としては不完全なものであったと述べています。鎌倉時代になって白拍子は、成人男子の身分標識であった…