2~4世紀の銅鏡

実盛良彦編『銅鏡から読み解く2~4世紀の東アジアー三角縁神獣鏡と関連鏡群の諸問題』(アジア遊学237 勉誠出版 2019)を読んでいます。実盛さんは考古学が専門、今は四條畷市教育委員会勤務、『明日へ翔ぶ 2』(風間書房 2011)に「楽浪郡地域における青銅鏡』という論文を書いています。あとがきによれば、本書は明翔会主宰の研究報告会での出遭いから生まれた、とのこと。編集を担当した森貝聡恵さんは『明日へ翔ぶ 4』(2017)に「ウイルタ語における与格を伴う形動詞句の機能について」を書いていますし、本書に「類書に映る鏡の記述」を執筆した佐藤裕亮さんは、『明日へ翔ぶ 2』に「梁啓超の経録研究をめぐって」を書いています。

本書は実盛さんの序跋「銅鏡研究と日本考古学」「銅鏡から読み解く2~4世紀の東アジア」、森下章句さんの「東アジア世界と銅鏡」を総説として、Ⅰ中国の鏡 Ⅱ倭でつくられた鏡 Ⅲ三角縁神獣鏡と関連の鏡 Ⅳ銅鏡から歴史を読む という構成になっていて、16人の論文と、銅鏡の写真がふんだんに載っています。

銅鏡というと、マニアがいて浪漫もあるが決着のつかない論争の多い分野、との思い込みで敷居が高かったのですが、本書にはその分野の専門的、かつ最新の成果のみならず土器や文献、政治史の視点も盛り込まれ、ふくらみのある編集と見受けました。

意外だったのは、銅鏡は中国での出土よりも日本へ流入、また日本で製造された数が多く、研究も進んでいるということ。先進国、大国の中国から後進国、小国の倭へ下賜されて権力の象徴となった、という中学校以来の知識はあまりに狭小だったようです。

明翔会の人たちの成果はどれも新鮮で面白く、こういう話を金蔵に聞かせてやりたいなあ、とふと思い、気がつくと彼はもういないのでした。