口頭発表の前に

前回も今回も、私は研究報告会の講評で「プレゼンテーションの能力向上を意識してください」と言いましたので、口頭発表のスキルについて、ごく初歩的なことを書いてみます。学部の演習段階で習うことかもしれませんが、役に立てば幸いです。

基本的に、原稿を読み上げるのとは別の視点で資料を作って構成すること。聴く方は、手持ち資料を目で追いながら(時にはパワポ画面を見ながら)耳から聞くので、そういう立場に立って資料を作ります。逆に「この点は資料を御覧下さい」と言って、口頭では一部通り過ぎてしまうことも可能です。それゆえ、配布資料に細かい字で書き言葉をぎっしり詰め込むのは愚策。引用資料を呈示する場合以外は、ぱっと目で見て意味を捉えられるように、ビジュアルな工夫を凝らすこと。要点は箇条書、太字で示しておくと親切です。

時間配分を考え、ストップウオッチを片手に予行演習をしておくこと。上がると早口になりがちですが、どこで何分になっていればよいか、時間が足りなくなったらどこを省くか、原稿に印をつけておくとよい。滑舌の練習は教壇に立つ職業なら重要なので、録音して自分で聞いてみるのも一方法。メリハリのある発声は聞きやすいが、強調する部分と聞こえなくてもいい部分とは、内容に連動している必要がある。助詞や間投詞は弱く早くて(聞こえなくても)よいが、聞いて貰いたい部分はややゆっくり、はっきり発音します。声は低い方が聞きやすく(甲高い声は聞きにくい)、顔を上げ、聴衆に向けて声を前に押し出します。息継ぎをすると意味が切れて聞こえるので、プロのアナウンサーは、文章構造(修飾語は何処へ掛かるか、目的節と動詞の関係など)を理解して読むよう、訓練されます。話の変わり目で、秒単位で間を空けるのも工夫のうち。

要は、口頭発表は「聞き取って貰ってなんぼ」だと自覚することでしょう。