2017-08-01から1ヶ月間の記事一覧

梨列車

鳥取は夏の終わりに20世紀梨、冬の初めに蟹の初出荷という大事な節目があります。鳥大教育学部に在任時代、現職の先生が内地研修の挨拶に見えました。ゼミの学生に何か教訓になるお話を、新任時代のこととか、とお願いしました。ちょっと苦笑いした後、次…

源頼義

元木泰雄さんの『源頼義』(吉川弘文館)を読みました。元木さんはつぎつぎに本を出していますがどれも分かりやすく、安定した記述ぶりで、心地よく読み進めることができます。同じ叢書の『藤原忠実』(H12)もそうでした。 源頼義は八幡太郎義家や頼朝の…

ブルーベリー

後輩から、「退職した夫が庭で作りました」というふれこみで、自家栽培のブルーベリーをどっさり貰いました。新鮮、完熟です。ちょうど、難渋していた原稿がほぼできあがったところだったので、夕食後カットグラスに盛って、冷酒のつまみにぽつり、ぽつり楽…

和文の切れ目

沼尻利通さんの「『枕草子』「春はあけぼの」条の諸問題」(「西日本国語国文学」4)を読みました。枕草子冒頭の、かの有名な段の解釈(区切れ)をめぐる諸説を整理し、考察しています。教材研究には便利でしょう。 春はあけぼの*やうやうしろくなりゆく@…

昭和一桁のつぶやき

中村格さんの『遅々庵ずいひつ―昭和一桁のつぶやき―』を読んでいます。俳誌「隗」に連載された「遅々庵随筆」を米寿記念にまとめた本です。話題はさまざまですが、御専門の能楽や歌謡に関するもの、戦争にまつわるものなどが、わかりやすく丁寧な文章で綴ら…

押し買い

昭和20年代までは、押し売りという商売人(今ふうに言えば飛び込みセールス)がいました。寅さんのような鞄にゴム紐(1,2回洗濯すれば伸びてしまう粗悪品)などの雑貨小物を詰めて各戸を訪ね、玄関先で強引に売る男性です。漫画「サザエさん」にも出て…

費目指定

昨日の朝日朝刊のコラムに「いくらなら払えますか?―国税庁」というギャグが載っていました。巧いなあ、と笑ってしまいましたが、そのうち笑っているバヤイではない、と気がつきました。籠池でなく納税者の我々に訊いてくれ、出来るか、という気持ちはみんな…

神の恋歌

橋本正俊さんの「神の恋歌―三輪明神と口決ー「(國語國文4月号)を読みました。山王神道の伝書『山家要略記』に見える、三輪明神と女神の贈答歌に付された「此歌有口決」について考察したものです。『古今集』では詠み人知らずであった歌が、山王神道におい…

軍記・語り物研究会大会

渋谷の國學院大學で行われた軍記・語り物研究会大会の2日目に出ました。会場が大きかったので、出席数はすこし寂しい感じでしたが、それぞれに真剣な研究発表が5本行われました。 この頃は近世の文献研究が多くなり、いわゆる中世軍記物語の主要作品に文学…

朝のサラダ

都会では雀が減ったと言われていますが、我が家の近辺ではここ数年で増えた気がします。早朝の窓辺でぺちゃくちゃとうるさい。尤も梔子が青虫に食い荒らされなくなったのは、彼らの働きです。 今年は例年と違って日々草を減らし、コリウスを中心にベランダ庭…

日常から

終戦記念日に合わせてさまざまなドキュメント番組や特集記事が眼に入って来ます。軍部の暴走や判断ミス、それに無責任に乗っかって煽る人々―ちょっと待って、プレイバック!と思わず言いたくなるような既視感に襲われることしばしばでした。職場の会議からマ…

家ごとの「さきの大戦」・ラジオ番組篇

我が家には大きなラジオがありました。勿論、未だTV放送は始まっていません。私は大本営発表や終戦の詔勅などは覚えがないのですが、毎日「尋ね人」の時間という番組があったことを記憶しています。ハイケンスのセレナーデという主題曲に乗せて、行方不明…

フリーマーケット

区が主宰するステージ・エコという催しがある日なので、未使用食器を持参して小さな石鹸を貰って来ました。区役所の地下階は不用生活用品を持ち寄ったフリーマーケットでごった返していました。出品は衣料品が多いようで、育ち盛りの子どものいる家は助かる…

家ごとの「さきの大戦」・学校給食篇

茅ヶ崎第一小学校は、私が入学した当時生徒数3000人といわれました。朝礼のラジオ体操で脇に曲げる運動の時、腕が脇腹に当たる音が谺を呼ぶほどでした。下駄履きで通学し、休み時間になるとさっと裸足になって、石蹴りやおはじきで遊ぶのですが、空襲の…

家ごとの「さきの大戦」・湘南海岸篇

幼年時代を茅ヶ崎で過ごしました。未だサザンもサーフィンもない頃です。陸には甘藷畑と麦、ようやく陸稲が普及し始めた頃でした。海岸は未だ何もない砂浜で、松の植林が少しずつ始まっていました。戦争末期に、ガソリンの代用品として松根から油を採るため…

戦争体験

軍記・語り物研究会はもとは軍記物談話会という名でした。私よりも8年くらい上に、後に軍記物研究の錚錚たるメンバーになった人たちが何人もいて、新人の勉強会として手弁当で始めた会です。私は卒論を書いている時に、指導教授から先輩を紹介されて入った…

家ごとの「さきの大戦」・進駐前夜篇

九州は終戦直前、激しい都市爆撃に襲われました。敗戦後、明日は進駐軍が上陸するという晩、博多の町ではそこここで鶏の悲鳴が聞こえた、という一つ話があります。占領軍に食われるくらいなら自分たちで、というわけで、飼っていた鶏を絞めて水炊き(博多の…

家ごとの「さきの大戦」・ミンダナオ篇

8月9日は叔父の命日です。昭和20年8月9日、フィリピンのミンダナオ島で戦病死、享年24と我が家の過去帳にはあります。私が生まれてすぐ出征したらしいので、何も記憶がありませんが、我が家には祖父母の写真と並んで、丸眼鏡、軍服姿の若者の写真が…

保田与重郎

前田雅之さんの『保田与重郎 近代・古典・日本』(勉誠出版)という本が出ました。2010~2016年に雑誌連載した評論をまとめたもので、保田の30歳までの活動を取り上げています。序章「なぜいま保田与重郎か」と第三章の一部「木曽冠者と大衆」、第…

擬人化と異類合戦

伊藤慎吾さんが『擬人化と異類合戦の文芸史』(三弥井書店)という本を出しました。まず、装幀が楽しい本です。表紙、見返し、帯にも妖怪がうようよ。中にも挿絵がたくさん入っており、資料を日常的に博捜している伊藤さん(この「日常的に」は誰にでもでき…

社会老年学

大学図書館に用があって出かけ、新着図書のコーナーで『老いとはなにか―副田義也社会学作品集Ⅲ』(東信堂)という本を見つけて、拾い読みしました。トオマス・マンの小説「ヴェニスに死す」や長谷川町子の漫画「いじわるばあさん」(私も全巻揃えて愛読して…

29年度奨学生の専攻テーマ

今年度採用の奨学生10名が確定しました。下記は各人の専攻テーマです( )内に専攻分野を鍵語で示しました)。いずれ将来のことを語り合える日が楽しみです。 修士課程: (基礎文化研究)弥生墳丘墓にみる日本海沿岸部における地域間交流 (学校教育)ス…

高校野球

高校野球が始まりました。東京育ちは、代表校とあまり縁のない場合が多いので、盛夏名物ともいえる熱狂とはやや距離があります。地方勤務のおかげで、贔屓する対象ができ、ベース1周したら1点、くらいの知識しかない私でも、関心を持てるようになりました…

変わりゆく田園風景

学生時代の旅行はたいてい夏休みでしたから、一面の青田風景でした。未だ大半の道路は舗装されておらず、青田の中に一筋白い土埃が走るのを目印に、バス通りを見つけました。あちこちで青田と農家の合間に咲く濃い黄色の花むらが印象的だったので、尋ねると…

ピーマン

ピーマンが好きになれません。油で揚げるか刻んで炒め物にすれば食べられますが、あの匂いと、ざくざくした肉厚の食感が苦手です。獅子唐は好きなのですが。 学生時代、ユースホステルを使って全国を歩きました。未だビジネスホテルなどは普及していない頃で…

グリーンカーテン

菊坂を下りていくと、葡萄やあけびでグリーンカーテンを作っている家が1軒あります。今年は時計草も植えられ、初夏に花が咲き、いまは円い実がつやつや光りながら幾つも下がっています。よそながら豊かな眺めです。 店に出る葡萄は緑か紫一色ですが、自然に…

しっかり

当今、政治家がやたらに「しっかり」「しっかりと」を連発するのにうんざりしています。新閣僚の中には、30秒足らずのインタビューに4回も発した人がいました(望んで党務へ移った人が、40秒くらいのコメントに1回も使わず、具体性のある言葉で応対し…

源平の人々に出会う旅 第8回「神奈川県・石橋山の戦い」

治承4年(1180年)8月、ついに頼朝は挙兵、伊豆の山木兼隆館に夜討をかけ勝利を収め、続いて大場景親を討つべく石橋山(小田原市)に布陣します。【佐奈田霊社(与一塚)】 石橋合戦で特に活躍したのが佐奈田与一です。岡部弥次郎を斬った後、景親の弟俣野五…

リハビリ

5月末に転倒して右膝の靱帯を損傷し、外出が不自由でしたがようやく痛みが取れ、自己流のリハビリ態勢に入りました。スポーツをやっていないので大きな怪我をした経験がなく、大学院時代に足首を捻挫して以来でした。あの当時は勤め先が決まらず、高校の非…

田村伝承

佐々木紀一さんの論文「田村利仁伝承と鹿島神の縁起」(「国語國文」5月号)を読みました。室町物語の『田村草子』、『鈴鹿草子』、奥浄瑠璃『田村三代記』などの構成要素を多様な資料の中に求め、室町時代には田村利仁伝承が鹿島縁起と交錯していたと予測…