2018-03-01から1ヶ月間の記事一覧

花相似、人不同

長泉寺の八重桜がほぼ満開になったので、喜福寿寺の枝垂桜と赤門の八重桜を見て歩きました。昔あった桜は伐られ、思いがけない所に若木が花をつけていたりします。安田講堂の前の大楠の下で、新聞を読みました。この楠も、あちこち大枝を切り落とされていま…

桜の一日

好天に誘われて、伝通院の桜を見に出かけました。境内で、幼稚園や老人ホームの遠足とすれ違いました。種類の異なる枝垂桜4本が見事。染井吉野は散り始めていましたが、風下に立つと、天空から私を目がけて降ってくる花びらが刺さるようで、いい気持ちにな…

胡蝶蘭が咲き始めました。毎年、花を贈って下さっていた先輩が亡くなって2年、ようやく我が家になじんで、自力で咲いてくれたのが嬉しいです。 蘭は、もともとどんな環境で生育していたのか知らずに室内で育てるので、意外な失敗があります。マレーシアやシ…

薺(なずな)

薺(なずな)の白い花が路傍に咲いています。『明恵上人伝記』の中にこんな話がありました―ある時、庭の薺を摘んで味噌味の雑炊に入れて食事に出したところ、上人は1口食べて周囲を見回し、引き戸の桟に積もった埃を指で掬って雑炊に混ぜた。わけを訊くと、…

平家琵琶

国立小劇場で、6月2日に「日本音楽の流れⅡー琵琶ー」と題する邦楽公演があるらしく、案内が来ました。楽琵琶、盲僧琵琶、今井勉検校の平家琵琶「竹生島詣」、そして薦田治子さんたちの解説と共に、筑前琵琶、薩摩琵琶など近代の琵琶楽の演奏もあります。今…

定点観察

播磨坂と南大塚の桜並木を、友人と歩きました。このところ毎年、花見はここと決めているのです。今年はまさに満開、最高の時季の花見でした。 犬を連れている人が多く、犬はきょろきょろしていましたが、花見どきの興奮は分かっているのでしょうか。大塚の三…

飛蝗の現場

前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社新書 2017)を読みました。表紙にぶきみな飛蝗コスプレが描かれている本です。売れているらしい。 昆虫好きが高じて飛蝗研究者になり、ポスドクの生活不安を抱えつつ、学振の海外特別研究員に応募…

今年の桜

東京の桜は今日が満開、と天気予報が言うので、花見に出かけました。まずは教育大跡地の古木の桜並木の下を歩こうと、バスで旧磯野邸の近くまで行きました。親子連れや老人グループが散策しています。ところがー並木は高い塀で囲われ、3/24(今日です)…

鷹書

二本松泰子さん2冊目の単著『鷹書と鷹術流派の系譜』(三弥井書店)が出ました。二本松さんは、母校の立命館大学が所蔵していた鷹書(鷹を使う狩猟に関する書物)を調査するところから始めて、鷹書の共同研究に参加するだけでなく研究会を起ち上げたり、各…

喫茶店今昔・その3

近所に江戸時代から続いているという金魚屋があって、喫茶店も経営しています。屋内はちょっと変わった構造になっていますが、女将の言うには、もとは金魚を入れる水槽だった由。店が小路の引っ込んだ所にあるので、知名度を上げるために改造して喫茶店を始…

土筆

新しく土を入れた公園や道路脇などに杉菜が生え、そう言えば土筆に気づかなかったなあ、と改めて見直す事があります(杉菜は、土筆の胞子から芽を出して増える)。土と一緒に杉菜の地下茎も運ばれてきたのでしょう。土筆は保護色をしていて、よくよく目を凝…

長秋詠藻

檜垣孝さんのライフワークともいうべき『長秋詠藻全評釈』が完結しました(全3巻 武蔵野書院)。意外なことに『長秋詠藻』の注釈書はあまり多くないのだそうで、和歌が専門でない者が、例えば授業の予習などで一気に理解したい場合には、本書があると助かり…

田中花実

鈴木るりか『さよなら、田中さん』(小学館 2017)を読みました。作者は「12歳文学賞」を小学生時代に3年連続受賞した人で、受賞作2篇に書き下ろしを加えて出した本です。主人公田中花実の眼から見た4篇と、彼女の存在に励まされて成長していく意気…

ひとりいぐも

若竹千佐子の芥川賞受賞作『おらおらでひとりいぐも』を読みました。「作家」というものに古い固定観念(創作は、やむにやまれぬ内的衝動につき動かされて、なりふり構わず書くもので、それゆえ才能のしだいでなれるかどうか決まってしまう)があって、文芸…

書評・ともに読む古典

国語教育が御専門の高山実佐さんが、『ともに読む古典 中世文学編』(笠間書院 2017/3)の紹介を、國學院雑誌3月号に書いて下さいました。限られた誌面ですが、丁寧に読み込んだ紹介です。この本は文学愛好者だけでなく、現場の(必ずしも古典文学専…

ギター・コンサート

朝からの霧雨が止まぬ中、文京シビックホールへコンサートを聴きに出かけました。荘村清志と福田進一のギターデュオに、ソプラノ歌手の林正子という顔ぶれです。 最初にギターデュオでドビュッシーの「月光」が始まった時は、強弱、高低、様々な音の重なりに…

猫水仙

近所の家の塀際に、猫水仙や貝母が咲き出したのを見つけました。「猫水仙」という名前のいわれは分かりませんが、純白で房咲き、ブライダルブーケにぴったりな感じの水仙の一種です。葉はつけずに花だけ束にして、売るようです。 名古屋で住んでいた小さなマ…

国際基準

地方都市(県の警察学校がある)に住む友人から、信号のない横断歩道で車の途切れるのを待っていたら、一時停止しなかった車が目の前でパトカーに指導され、吃驚した、この春は一際、交通取り締まりのテンションが高い、とのメールが来ました。 思い当たる節…

開花予報

4ヶ月に1回、口腔ケアに通っています。当初はがみがみ叱られた歯科衛生士から、ようやく歯磨きの成果や歯茎の質を褒められるようになりました。それまで横向きに使っていた歯ブラシを縦に使い、3種類も使い分けているのですから、劇的な変化があって当然…

納税者の意地

所得税を納めました。久しぶりに還付でなく納付だったので、朝、緊張して銀行へ出かけたのですが、手続き書類の一部を忘れ、一旦帰宅しました。ちょうど正午のニュースで、財務省の書類書き換えが報じられ、納付期限は15日なのですが、ぜったい今日中に納…

紀州根来寺

根来寺は境内がだだっ広くて寂しかった、という記憶があります。学生時代の紀伊半島一周旅行だったか、その後調査旅行か学会参加のついでに寄ったのか、覚えていません。近年は考古学、日本史、仏教文学など各方面からの研究成果が世に出ています。山岸常人…

喫茶店今昔・その2

世田谷のある駅裏に、「提督」とか「艦長」とか訳す、いかにも男のロマンらしい名の小さな喫茶店がありました。入り口はうらぶれた感じでしたが、中はあかるくて、何よりもカウンターやテーブル、銀色の砂糖壺がぴかぴかに磨き上げられているのが印象的でし…

喫茶店今昔・その1

地方勤務だった頃、帰京するのは夜遅くで、家の冷蔵庫は空っぽでしたから、翌朝は喫茶店でモーニングを摂りました。世田谷在住の時は、駅前の喫茶店に、買い立ての朝刊を持って入り、つかのまの自由を楽しんだのですが、いつも、初老の男性集団がかさばりな…

共同体の祝祭として

大津雄一さんの論文「『平家物語』という祝祭」(「古典遺産」66 2017/3)を読みました。大津さんは、文学はすべからく共同体のガス抜きとして機能する、というのが持論です。おしゃれな人なので、冒頭からにぎやかで、楽しそうな(『シャーロックホ…

苺の開発

宇都宮に勤めて以来、苺はとちおとめを買うことにしています。以前はパックの底部に赤くない実を詰めたりすることがありましたが、この頃はそういうこともなく、平均して美味しい。苺は絶えず品種改良される宿命にあるようで(同品種を長期間同じ畑に植えて…

体の幅

校正刷の戻しを発送しに出かけ、ついでにスーパーで買い物をしました。街中の狭いスペースに出来たスーパーなので、棚の間をすれ違うにも苦労します。年を取ると体の幅が広がるのを知っていますか。バランスを取るため脇を締めずに歩くからです。 明らかに定…

梅花

春の嵐が吹き荒れる一日です。和漢朗詠集をめくっていたら、「養得自為花父母」の句が眼に留まりました。まさにこの季節の雨です。近所でも梅が盛りになりました。 梅は桜と違って林や並木よりも、家の軒先など人里にまばらにある方が風情があります。例えば…

声の文芸を紙上に

今朝の朝刊の読書欄に、伊藤比呂美の石牟礼道子追悼文が載っていました。自ら石牟礼道子を、「詩的代理母」と思っていたと書いています。伊藤比呂美の小説は読んだことがありませんが、般若心経の現代語訳を読んだことがあります(調べたら、高校は同窓でし…

日常詠

吉崎敬子さんの第5歌集『グリーンタウン便り[続]』(YU企画)を読みました。吉崎さんは都立高校定年後、歌誌「玉ゆら」同人として日常詠を発表したり、和歌説話集や古事記に関するエッセイを出したりしています。歌は口語と文語の混じった詠み口です。 若…

源平の人々に出会う旅 第14回「武蔵嵐山・義仲誕生」

平家討伐を呼びかけた以仁王の令旨を受け取った源氏の一人に、木曽の義仲がいます。父義賢は上野国多胡郡を本拠地としましたが、久寿2年(1155)、悪源太義平に武蔵国大蔵館で討たれてしまいました。 【鎌形八幡神社(義仲産湯の清水)】 義賢は秩父重隆を養…