2019-09-01から1ヶ月間の記事一覧

平家物語を繙く

清水由美子さんの『平家物語を繙く』(若草書房)という本が出ました。ここ20年間に執筆した論文をまとめた、410頁を越える1冊。第一部『平家物語』と宗教と歴史、第二部『平家物語』と東国の歴史、第三部『平家物語』と中世の女性、という構成になっ…

積木的議論のために(5)

かつて原潜寄港反対や核持ち込み反対運動が行われた頃、私は未だ院生でしたが、早く結婚した幼なじみの友人は、市民運動の中で環境問題や平和運動に取り組んでいました。夫婦と食卓を囲んだ時、「学生たちの気持ちは分かるけど、過激な挑発をされると却って…

義務教育

今朝の新聞報道によれば、義務教育年齢に当たる滞日外国人の子供で、未就学者が2万人近くに上るというー目を疑いました。日本で暮らしながら基本的な教育を受けられないでいる子供たちの数が、5桁にもなっているなんて。日本はそんな国だったのか、という…

仙台行き

10月末の仙台行きの切符を買いに行きました。午後早く行ったのですが、みどりの窓口の行列は、6~7割が外国人でした。30分ほど並んで目的の切符を購入、駅地下のカフェでパンを買い(行きつけのパン屋が閉めてから、あちこちでパンを買ってみているの…

部立

古家愛斗さんの「『千載集』編纂にみる藤原俊成の神祇歌観」(日文協「日本文学」6月号)を読みました。藤原俊成が『千載和歌集』撰集に当たって、神祇部への入集基準をどのように定めていたかを考察し、俊成の神祇歌観を明らかにしようとするもの。 まず藤…

風害

台風15号の影響は我が家では大したことはなかった、と思っていたのですが、今頃になって菊や日々草の一部が枯れ始め、よく見ると、根こぎにぐるぐる吹かれたらしく、茎の根元が潰れたり、根が浮き上がっていたことが判明、彼等も苦しかったんだなあと思い…

積木的議論のために(4)

「古典は必要か」もしくは「文学は必要か」というタイトルで議論するのは、不毛な気がします(ツイッターには、まるで揚げ足取りのような問答―じゃ、◯◯は必要?✕✕は?といった―が出ていて、どちらにも気の毒な気がしました)。何のために、とか、現在と未来…

熊楠の妖怪研究

伊藤慎吾・飯倉義之・広川英一郎『怪人熊楠、妖怪を語る』(三弥井書店)という本が出ました。あとがきによれば、2016年7月から9月、紀伊田辺の南方熊楠顕彰館で行われた特別企画展「熊楠と熊野の妖怪」の準備の中から生まれた本だそうです。博物学の…

樹木たちの生活

ペーター・ヴォールレーベン『樹木たちの知られざる生活―森林管理官が聴いた森の声―』(長谷川圭訳 早川書房 2018)を読みました。2015年にドイツでベストセラーとなった本を翻訳、文庫化したものです。著者は1964年生まれ。大学で林業を学び、…

ポイント制

扇屋へおはぎを買いに出かけました。野上弥生子の愛した老舗です。店は年配客で混んでいました。もう初冬のゆず餅が出ています。仏壇に上げるので、父の好みの粒餡と黒胡麻のおはぎを1個ずつ買いました。まもなく消費税が上がります。扇屋にもちょっと腰掛…

鵺の正体

母校の中世文学研究会に出かけました。今年度は院生の入学が1名だけだったそうで、今後は年2回の開催とのことでしたが、今日は20人程度の参加者がありました。発表は2本。1本目は岡本光加里さんの「『千五百番歌合』における先行作品摂取と同時代歌人…

房総半島

西の方から羽田へ帰ってくる時、たまに飛行機は房総半島を旋回しながら降りていきます。九十九里浜の弧が目に入って来るまで、かなり盛り上がった山林地帯が続き、一体どこかな、と思ったりしたものでした。千葉県が広域な山と森であることを、首都通勤圏と…

積木的議論のために(3)

学部時代(52年くらい前です)、近世文学の先生が授業時に、「無用の用」論をぶったことがありました。その当時から、大学教育に文学は必要なのかという論調はあったのです。先生は、田の畔がなければ田は作れない、という『老子』の一節を引いたのですが…

パン屋の開業

行きつけのパン屋が突然閉店し、あちこちでパンを買ってみては失望を繰り返していましたが、久しぶりに通ってみると、新規開店の予告が出ていました。その後開業延期の貼り紙が出て、何度も無駄足を踏みましたが、やっと開いたので入ってみました。 以前は3…

枕草子本文

沼尻利通さんの「東松本『大鏡』裏書所引枕草子本文の検討」(「福岡教育大学 国語科研究論集」60号)という論文を読みました。『大鏡』はもともと巻子本仕立だったらしく、裏書があります。その中に引用されている『枕草子』の本文が、どの諸本に近いかを…

積木的議論のために(2)

たくさんの人を見てきて、就中その晩年を見るようになって、つくづく思うのは、人の一生には、消費的人生と、(何がしかの)生産的人生とがあるのだなあ、ということです。どちらが上ということはありません。「生産」とは、子供を作るとか物作りを仕事にす…

全訳注平治物語

谷口耕一・小番達共著『平治物語 全訳注』(講談社学術文庫)が出ました。 文庫本とはいえ650頁を越え、情報のびっしり詰まった1冊です。谷口さんは永年、平治物語の注釈稿を抱え続け、紆余曲折を経ていま会心の著として世に出すことになりました。 底本…

定年後の買い物

日本橋三越へ出かけました。濱田友緒作陶展が目的でしたが、生活方法が変わった故の、諸々必要な買い物もありました。杖を突くようになったので、肩に掛けるエコバッグを使っていたのですが、ちゃんとした、軽くて大きなバッグを、と鞄売り場へ行ってみまし…

積木的議論のために(1)

高校の頃、古文や英語がなぜ面白かったかというと、(特に英語の場合)単なる記号(ABC)の羅列でしかないものが、辞書を引き、自分の想像力を動員してつなげていくと、意味を持って生きて起ち上がってくる、その悦びだったと思います。知らない世界が眼前に…

辞退率

就活援助をうたうビジネスが、辞退率を予測するデータを勝手に売っていたのは、個人情報保護法に触れるとして警告を受けたそうです。そういうビジネスが成り立っていることを知った時は憤慨し、就活生に同情しました。説明する機会のない情報で将来を判断さ…

日脚

台風の後、猛暑が戻ってきました。36度を越えると肌で分かります。自分自身が一番冷たいわけで、家具も食器も、さわる物みな温かい。昨日は午後からの陽ざしでしたが、今朝は日の出から。おまけにベランダの陽光が次第に家の中に近づいてきて(そうなる設…

国家神道

木村悠之介さんの「明治後期における神道改革の潮流とその行方―教派神道と『日本主義』から「国家神道」へー」(「神道文化」31号)と、「1896年における「国家神道」の用例―道生館『闇夜の灯』の神宮教批判とその反響を通して―」(「神道宗教」253…

台風前夜

宮古島のシェフから電話がかかってきました。ホテルの副料理長から独立して、小さなランチの店を出し、1年になります。いま宮古島は、下地空港(島で2つ目の空港です)ができ、近隣の島々に橋が架かり、観光客が増えて、店もそこそこ流行っているらしい。…

3/14発表者募集

第三回 明翔会研究報告会 2020年3月14日(土) 10:00~16:00 星陵会館会議室3A(東京都千代田区永田町2-16-2) 研究発表6名・記念講演1名 *公益信託松尾金藏奨学基金の受給者及びその修了者による研究成果報告と交流とを目的とし…

夏は過ぎ

終日、写本と対峙して過ごしました。源平盛衰記の版本の展開を追う共同研究に便乗させて貰って、16世紀前半の本文とも言われた写本を調べ始めたら、腑に落ちないことが続出。こちらの書誌学的経験が足りないせいばかりではないようです。ひたすら墨の色、…

平家物語の「作者」

勉誠出版『古典文学の常識を疑うⅡ』が出ました。日本古典文学の諸学説の帰趨を知ることのできる工具書を意図して(同書「はじめに」より)、2017年5月に出た同題の書の続編です。「縦・横・斜めから書き換える文学史」という副題を持ち、57の項目を立…

古代心性表現

森正人さんの『古代心性表現の研究』(岩波書店)という本が出ました。前書きによれば、「本書は、古代日本における心性すなわち心、魂、霊およびその他の超自然的存在の性質や働きに対する理解、また死生観、冥界観、およびこれらに関する表現の成立と特質…

源平の人々に出会う旅 第32回「深谷市・忠度と六弥太」

寿永3年(1184)2月、搦手の義経軍は鵯越の逆落しで平家館の背後を襲い、館内の人々は海上へと逃げ出します。海岸沿いでは平家の公達が次々と命を失いました。 【普済寺】 清盛の弟で歌人の忠度は岡部六弥太忠澄に討たれます。忠度は最後まで名乗りませんでし…

食用菊

スーパーで食用菊が売れ残っていたので、1パック買いました。黄色い菊花です。1輪はカクテルグラスに浮かべて、洗面台に飾りました。TVニュースを視ながら残りの花弁を毟っているとー画面では児相がまたも対応は適切だった、と言い張っています。適切だ…

トマト

現代のトマトは匂いがありません。あるよ、と言う人は、かつての(本来の)トマトの臭いを知らないからです。買い物から帰ってきた家人が通ってきた道を言い当てることができる(あ、今日はトマト畑の傍の道だったね)ほどでした。 子供の頃、井戸水で冷やし…