2018-07-01から1ヶ月間の記事一覧

現場の日々

栃木県の高校教諭をしている、20年前の教え子がやって来ました。定年まであと4年になったとのこと。進学校に転任して11年目、サッカー部の指導その他、忙しく暮らしているらしい。いろんな話をしました。高校にも女性教諭が多くなったこと、アクティブ…

授業の作り方

古田尚行さんの『国語の授業の作り方』(文学通信)という本が出ました。古田さんは「国語科教員の部屋」というブログもお持ちで、30代半ばの中高一貫校教諭です。真面目な方で、国語教育の前衛たらんとする意欲が、この本にも満ちています。 本書は、1授…

昆虫学者の老後

新聞の「ひと」欄に30年前の同僚が紹介されていました。鳥取砂丘のハンミョウ保護活動のリーダーだそうです。私の鳥大赴任1年後に、生物学の助手(現在は「助教」という)で任用された青年でした。寡黙で、人付き合いは殆どないように見えましたが、理系…

仕事の流儀

「プロフェショナルー仕事の流儀」というTV番組があります。ばりばりの仕事人を1人選び、その数日を追うドキュメントです。最後に、主人公に向かって「プロフェショナル」の定義を訊くシーンがあり、それぞれ答に深い含蓄があって面白い。平凡な答であっ…

教師たち

我々の時代、学校の「先生」はお友達ではありませんでした。小学校では、児童と教師(家庭内では、子供と親、も同様に)、はそれぞれ別世界の生物と言ってもいいくらい、厳然たる区別がありました。中学になると、生徒と教師は、子供と大人という別の範疇で…

平成30年度奨学生

今年度の松尾金藏記念奨学基金の受給者が確定しました。継続者9名(博士課程5,修士課程4)のほか、新たに12名が決まりました。新規採択者の研究テーマは以下の通りです。( )内に専門分野をキーワードで示しました。 博士課程4名: 来迎芸術論再考―…

8月の本

本屋へ注文した本を受取りに行きました。近所の本屋は次々潰れて、15分以上歩いて行かねばなりません。カウンターで受け取る前に隣りのコンビニ(いつの間にか、本屋の半分がイートインのコンビニに改装されていた)で飲料を買い、まず新刊書と文庫本の棚…

巴旦杏

今日は河童忌。芥川龍之介に、「漢口」と題する、「ひと籃の暑さ照りけり巴旦杏」という句があります。アジアの市場、酷暑の街、そしてはちきれそうな夏色の果実が眼に浮かぶような句です。 巴旦杏という語は、子供の頃、欧米の翻訳小説か何かで覚えたのだっ…

酷暑

連日の酷暑に参っています。週間天気予報を眺めて、10日も我慢すれば楽になるかと期待しても、馬の鼻先の人参のように、先へ先へと延びるだけ。花屋の主人は、舗装の上では膝下の気温が50度になる、と言っていました。美女桜も夕霧草も駄目になり、元気…

日本霊異記の地蔵説話

霧林宏道さんの「地蔵説話の享受と展開―『日本霊異記』から十四巻本『地蔵菩薩霊験記』までー」(「國學院雑誌」7月号)を読みました。『霊異記』中唯一の地蔵説話である下巻第九話を取り上げ、『宇治拾遺物語』、『地蔵菩薩霊験記』とその絵詞、公誉法印草…

産児休暇・育児休暇

都立高校に勤めていた頃、ある日出勤したら、黒板に「◯◯先生産休」と書いてありました。◯◯先生は男性です。私は何かの間違いだと思って笑い出し、教頭から、公務員は男性でも子供が生まれたら2日間の休暇が取れる、知らないのか、と叱られました。吃驚しま…

日本歴史学会賞

日本史の友人から、手嶋大侑さんの論文「平安中期の年官と庄園」が第19回日本歴史学会賞に選ばれたことが、雑誌「日本歴史」7月号に出ていた、と知らせてきました。手嶋さんは日本古代史が専門で、平成26年度から28年度、名古屋市立大学大学院修士課…

日韓の医療制度

小野寺(旧姓土屋)悠子さんから、富士ゼロックス小林フェローシップ研究助成論文「日韓の医療一元化社会と医療二元化社会―日本と韓国の近代医療制度史を比較して―」(2017/8)が送られて来ました。小野寺さんは、東アジア地域における伝統医学制度史…

須賀敦子

須賀敦子詩集『主よ 一羽の鳩のために』(河出書房新社)を読みました。一服の清涼剤、とはこういうことを言うのでしょうか。池澤夏樹の解説にはリルケを思わせるとありますが、言葉の配置からいうと立原道造が連想されます。こんな本を2,3冊出すだけで一…

やせ我慢

定例の口腔ケアに出かけました。16:30の指定です。西南へ15分歩いて行く歯医者なので、西日をたっぷり浴び、舗装の熱と各戸の室外機から吹き出す熱風とで、殆ど命賭けのような気になりました。歯科衛生士からは、1,2箇所を除きよく歯磨き出来てい…

暑気払い

連日の酷暑に音を上げて、暑気払いの会をやることにしました。ベジタリアンの人に合わせて、駒込の野菜料理専門店を予約したのですが、肝心の幹事が来ません。どうやら、定年後半年で早くも日にちの感覚を失くしたらしい。 まずは前菜盛り合わせに生ビールで…

中世文学の領域

必要があって『谷山茂著作集』(角川書店)を読んでいます。「中世和歌とその風土」や「中世の美学・美意識」など、現代の国文学研究が敬遠しているかに見える、大きく時代やジャンルを把握し、ときには蛇行や佇立を厭わず考察を進めていく文章です。 『新古…

和歌の鶴

木村尚志さんの論文「院政期和歌と自然―女房文化との関わり―」(「和洋國文研究」52 2017/3)と「和歌における「鶴」―高内侍と西行の和歌を繋ぐものー」(「和洋女子大紀要」57 2017/3)を読みました。前者は「虫めづる姫君」から虫合、俊頼…

役者の老後

学部入学後、演劇部に入りました。劇団「雲」が旗揚げした頃です。サルトルの「汚れた手」の公演準備が始まっていました。部長は東大留年6年目というむさい人で、新入生歓迎コンパのために上着を質入れしてきたんだよ、と上級生から教えられ、恩着せがまし…

虫たち

やっと蝉が鳴き出しました。年々蝉の声が少なくなります。緑が減り、舗装が進むのに抗しきれなくなったのでしょう。虫は苦手ですが、蝉と蜻蛉と蝶は、身近かにいて欲しい。朝、菊の茂みで茎の擬態をしている青虫を見つけました。私も草花も暑さでぐったりし…

開かれた対話

東大臨床倫理学の公開講座「治癒に寄与する「倫理」―オープンダイアローグの可能性―」を聞きに行きました。明翔会の山本栄美子さんや大学院後輩の林さんが受付にいました。講師は筑波大学の斎藤環教授で、学生や医療・介護現場の人たちで法文2号館の大教室…

防災

西日本の豪雨・土砂崩れの被害はひどいようです。以前も同じ地域で土砂災害があったのに、対策が2~3年では間に合わなかった、ということでしょうか。森林の手入れや下水道の補修は遅れ気味なのに宅地造成が広がり、その上に気候天候が、地球規模で予測を…

荻野検校

尾崎正忠さんの『増訂版 荻野検校』(荻野検校顕彰会 限定500部 非売品)が出ました。林和利さんの監修です。初版は1976年に出され、入手しにくい本でしたが、その後『平家正節』の影印が刊行され、荻野検校の業績が見やすくなったこともふまえて、増…

ニコライ堂の鐘

朝、ニコライ堂の鐘の音がいつもより大きく長く鳴り続けました。普段は気づかない程度なのですが、東北大地震の年忌や原爆記念日、クリスマスなどには、おや、と思うほどよく聞こえます。NYテロの年忌とか、法皇の交替にも。今日は何があったのか、西日本…

中世文学第63号

中世文学会の機関誌「中世文学」63号が出たので、関心のある箇所を読みました。講演録「中世根来寺の法儀と聖教」(永村真 2017/11/04)・「「2人の三郎」からみた室町時代「能作」史」(天野文雄 同)がためになりました。 シンポジウム報告「…

中世文学研究会

母校の大学院の中世文学研究会に出ました。参加者は現役の院生からOBまで約20人、豪雨で山陽新幹線が不通になったりしていましたが、岡山、神戸、名古屋からもOBがやって来ていました。発表は2本。石井悠加さんの「真宗絵巻『拾遺古徳伝』の法然詠歌…

源平の人々に出会う旅 第18回「北陸・倶梨伽羅落」

燧ヶ城落城の知らせを聞いた義仲は越中へ向かいます。『源平盛衰記』では、寿永2年(1183)5月9日に先鋒隊の今井兼平軍が般若野(砺波市)で勝利をおさめます。義仲は軍勢を七手に分け、自らは埴生庄(小矢部市)に布陣しました。 【護国八幡宮(埴生八幡宮…

いずみ通信

木戸裕子さんの「大江匡衡の晩年と杖」(「いずみ通信」44)という小文を読みました。赤染衛門が、61歳で亡くなった夫匡衡の遺品を見て詠んだ追悼歌「独りしていかなる道に惑ふらん千年の杖も身に添はずして」を引き、詞書にある「せんざいの杖」とは、…

今年の梔子

ベランダで梔子の木を育てています。 今年最後の1輪が咲きました。宇都宮に勤めた頃、同僚から切り花で戴いた枝を挿し木にし、今では私の背丈を越えるほどに大きくなった樹です。鉢が小さすぎるのはよく分かっているのですが、これ以上大きくすると私の腕力…

朋有り、遠方より来たる

長野の友人が上京のついでに我が家へ寄ってくれて、久しぶりにあれこれお喋りをしました。お土産は名産の杏。見事な大粒で、友人の妹さんから、種を埋めれば必ず生えます、との伝言と、宇和島信用金庫が企画した『豊姫物語』という絵本が添えられていました。…