活躍報告4点

明翔会研究報告会の席上で貰った、各人の活動報告について紹介します。

①龍真未さん「展覧会評<修道女:中世の強い女性たち>」(「東京芸術大学西洋美術史研究室紀要」18)=龍さんは西洋美術史、中でも中世のキリスト教美術が専門。中世欧州では女子修道院の院長は教会に対しても政治経済にも発言力を持ち、13世紀末にはスイスだけでも約80の女子修道院があって、権力、宗教、道徳、知識などの分野でそれぞれに傑出した女性がいました。2021年は、スイスの女性参政権獲得50周年だったそうで、いわばその前夜祭に当たる展覧会へのコメント(展覧会は20200512~0816 スイス国立博物館)。キリストとヨハネが1対で表現されたこと、母マリアの魂を抱くキリストという逆母子像があったこと、当時の絵画の人物像にはどこか、弊国の奈良絵本と共通する雰囲気があることなど、大いに蒙を啓かれました。

②実盛良彦さん「遺跡立地からみた放牧地」(『牧の景観考古学』京都府立大学文学部)=四條畷市教育委員会に勤務する考古学専門の実盛さんによる、現寝屋川市の一部、讃良(さらら)地域の古墳時代馬飼い集団の遺跡についての調査報告。当時の放牧には自由・限定の2種のやり方があり、花粉分析で牧に適した草地の範囲が分かること、牧と耕作地とが季節ごとに交替していたことなど面白く読みました。

③東京高専准教授の鈴木慎也さん「浅川地下壕の三次元計測」(「多摩のあゆみ」191号「資料を3Dで記録する」特集)=地元高尾の戦争遺跡浅川地下壕をバーチャル体験できる映像を、学生と共に作成した報告です。作成する過程そのものが平和教育の実践になり、文化財保護の一環として、出来上がった映像は地域に公開する、という高専ならではの試み。平和学習教材ASAKAWAについては https://onl.sc/WP3iwh6

④中尾文香さんが代表を務めるディーセントワーク・ラボが出した『「コクリコ対話」から生まれるディーセントワーク』=福祉医療機構社会福祉振興助成事業の報告書。副題に「障がい者雇用の質を高めるためのポイント」とある通り、身体・知能・発達に何らかの偏りを持つ人たちと、同じ組織、同じ労働環境の中で共に働くための基本的ノウハウを楽しげに、端的に書き出した冊子。誰にとっても有益です。問い合わせはdecentwork-lab.orgまで。