2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

敗けた後の生き方

昨日の朝日新聞朝刊の「月刊安心新聞+」欄に、神里達博さんが「私たちはみな「平家」―負けた後どう生きるか」との見出しで書いています。神里さんの専門は科学史・科学技術社会論なのだそうで、これまでの連載には共感するところが多かったのですが、今回は…

川越便り・初咲き薔薇篇

川越の友人から、今年最初の薔薇が咲いた、と写メールが来ました。 イントゥリーグ 香りのある薔薇だそうで、2輪だけでも周辺にはいい香りがするそうです。 そろそろ水道公苑や大塚駅前に薔薇を観に行く季節が近づいてきました。コロナ下のステイホームのお…

更級日記異解

高田信敬さんの論文「上洛の旅―『更級日記』異解ー」(「国文鶴見」56)を読みました。川越の友人からも、近年は少なくなった論文の見本、という手紙が来ました。 更級日記の謎の一つを明快に解いた論文です。更級日記の研究者は無論、教材として扱う教師…

阿波国便り・通草の花篇

徳島の原水民樹さんから、久しぶりにメールが来ました。 「最近よく転ぶそうだが気をつけるように。年を取るとすり足になるという。それを意識してか、兵隊のような足取りで散歩している老人を時に見かけるが、あれは見ていてもシンドイ」とありました。あり…

承久の乱と文学

「国語と国文学」令和3年11月号を取り寄せて読みました。「承久の乱と文学」という特集号です。論文は9本、うち3本は後鳥羽院の和歌に関するもので、題詠と実感、自讃歌、隠岐本新古今集を取り上げています。そのほか、慈円の和歌と願文、無住が運と果…

信濃便り・弘前花筏篇

長野の友人が、弘前に赴任した親族から来た写メールを転送してきました。 弘前城の落花 かつては長野の友人と、私と、同い年の従妹の三婆で年に数回、集まってお喋りしました。最初に定年が来たのは長野の友人で、宮古島へ慰労旅行に行き、彼女はすっかり彼…

万の星の御挨拶

このブログも5年と3ヶ月、皆様からの御声援を頂き、贈って下さった星の数は先週で1万を越えました。ありがとうございます。 スクロールせずに読める分量、なるべく正確な情報、ほどほどの味、を心がけて書いてきました。各地の友人から送って貰う写真が彩…

体験的電子事情・マンション回線篇

マンション管理組合の総会に出ました。3年ぶりに会場を借りての総会です。議事は順調に進み、マンション共有のIT回線の契約会社を変えるかどうか、という話になりました。速度を上げて繋がりやすくするには現在のメルアドが使えなくなる、ということなので…

信濃便り・自家製珈琲篇

長野の友人から、足取りの速い北国の春の写メールが来ました。 信濃の春 梢が色づいている林は、山桜だそうです。いかにもふるさとの春ですね。 長野はこのところコロナの感染者数が増えているようで、ニュースを視ながら心配していました。善光寺御開帳や諏…

祝辞

東大の学部入学式で奈良出身の女性映画監督が述べた祝辞に複数の国際政治学者が反論し、話題になっているので、公式サイトで読んでみました。もしもその主旨を次のようにまとめるならば、彼女の言は正しいし、有益なはなむけでもあります―悪の塊を1個作って…

山城便り・天南星篇

鉢植えの武蔵鐙の花が見頃になった、と錦織さんからメールが来ました。 鉢植えのムサシアブミ もう1鉢、近縁種らしい株を育てているが、花(正しくは仏炎苞)が色づかない、浦島草だろうか?と、さらに数枚の写真が送られて来ました。 私は誰でしょう 浦島…

増鏡の後醍醐天皇詠

君嶋亜紀さんの論文「後醍醐天皇配流の道行と和歌―『増鏡』「久米のさら山」試論―」(「大妻国文」53)を読みました。『増鏡』は歴史物語の中でも和歌が多いことで知られていますが、巻16「久米のさら山」には、元弘の乱の失敗後の後醍醐天皇隠岐配流記事…

川越便り・女王篇

川越の友人から、山芍薬が開花した、と写メールが来ました。 ヤマシャクヤク 山野草マニアの間では、女王と呼ばれているとのこと。見た目は芍薬と牡丹の間のようですね。我が家の近所にも愛好家がいて、最近嫁さんに代替わりしたらしく、ネットでマニア同士…

預かりもの

近年は「後進国」という語は使わない方がいい(現に「先進国」はすぐ漢字変換できるのに、反対語の方はなかなか出て来ない。「発展途上国」と言うらしい)のかもしれませんが、政治体制の成熟度を測る目安の1つは、前権力者が平和に隠居生活を送れるかどう…

残高不足

2つの学会費(値上がりした)を払い、細々とした本を買ったら財布が軽くなったので、久々に通帳記入を兼ねて銀行に向かいました。所得税の還付金も入ったはずだし、余裕綽々の心算で引き出しボタンを押し(現役時代なら生活費1週間分の金額です)たら、す…

平曲の感情表現

鈴木孝庸さんの「平曲における感情表現―登場人物の発声とその曲節ー」(新潟大学「人文科学研究」150)を読みました。軍記物語講座2『無常の鐘声―平家物語―』(花鳥社 2020)に書いた「平家語りー声による平家物語の解釈と表現―」の続考だそうです。 鈴…

山城便り・武蔵鐙篇

鳥取で同僚だった錦織さんから、ちょっと珍しい花便りが来ました。 ムサシアブミの芽 【昔、名和町の道の駅に立ち寄ったときに、山野草のコーナーで、ムサシアブミという見慣れない、聞き慣れない植物があったので、物珍しさで買い求めました。ほったらかし…

天正本の北野通夜物語

李章姫さんの論文「天正本『太平記』巻三十八「政道雑談事」の現実認識―巻三十五以降の考察を通して―」(「国際日本学」19)を読みました。李さんは軍記物語講座3『平和の世は来るか』(花鳥社 2019)に精確な3本記事対照表を載せ、その後も着実な太平記…

コロナな日々 26th stage

本屋から、取り寄せの本が来たと電話があったので、引き取りに出かけました。街は、八重桜から躑躅の季節、そして新緑へと移りつつあります。 最近膝が弱くなって、一昨日は播磨坂の交差点で転びました。道幅の広い交差点なので小走りしたのがいけなかった。…

川越便り・一人静篇

川越の友人に、フタリシズカは花穂の形が違うのではないか、と問い合わせたところ、これがヒトリシズカだ、と写メールが返ってきました。 ヒトリシズカ この時季は次々に花芽が出るようで、矢継早に花便りが来ます。 イカリソウとヒメリュウキンカ 錨草は私…

平治物語絵巻

依田徹さんから、遠山記念館のテーマ展「源頼朝の時代―平治物語と源平合戦」の案内が来ましたので、御披露します。依田さんは東京芸大修士課程で岡倉天心の研究をしていた時に本奨学金を受給、その後大宮盆栽美術館に勤め、茶道文化に関する著書も多く出し、…

山城便り・木津篇

京都郊外在住の錦織さんから、桜は散り始めた、と写メールが来ました。 北山十八間戸 【般若寺と北山十八間戸に行ってきました。奈良坂(般若寺坂)を一度歩いて越えてみたいと思っていたので、JRの木津駅で降りて、歩いて奈良に入りました。車では何度か…

宗教芸能としての能楽

高橋悠介編『宗教芸能としての能楽』(勉誠出版 「アジア遊学」265)という本が出ました。法政大学能楽研究所の共同研究の成果をもとにしたそうで、勉誠出版は科研費や機関プロジェクトの報告書をこのシリーズでどんどん出版しており、有意義だと思います。…

川越便り・茶花の庭篇

先週、川越の友人から、庭が賑やかになってきた、と写メールが来ました。 ヒトリシズカ(だと私は思う) フタリシズカだとメールにはありましたが、これはヒトリシズカでしょう。 子供の頃寝たきりだった私がこの花を知ったのは、岩波写真文庫によってでした…

新任挨拶

手嶋大侑さんから、新任挨拶のメールが来たので、御披露します。 【4月1日をもって、同朋大学文学部人文学科・専任講師に着任致しました。これからは、研究はもちろんのこと、学生の教育にも力をいれて頑張っていきたいと思います。 今は、雑誌投稿の準備と…

コロナの街・part36

ワクチン3回目接種の抗体ができた頃なので、歯医者へ出かけました。生憎終日冷たい雨のざあざあ降り。いつもは徒歩ですが、ワンコインバスに2停留所乗ることにしました。空いていましたが、赤ちゃん連れのヤンママ2人が、通路を挟んで大声でお喋りしてい…

源平の人々に出会う旅 第63回「東京・志田義広」

志田三郎先生義広(信太義憲などとも)は源為義の三男で、常陸国信太荘(稲敷市)に居住していました。『平家物語』ではあまり目立たない人物ですが、甥の頼朝とは犬猿の仲です。 【明王院(赤不動)】 寿永2年(1183年)2月、義広は頼朝軍と野木宮(栃木県…

能狂言と説話

岩崎雅彦さんの論文「〈愚痴の鏡説話〉の流伝と変容―『直談因縁集』と鷺流狂言「鏡男」を中心に―」(「伝承文学研究」70 2021/8)と、「能〈安字〉の説話的考察―文字を買う話と男装の論理―」(『宗教芸能としての能楽』勉誠出版 2022)を読みました。岩崎…

川越便り・秩父桜狩篇

川越の友人から、天気が好いので車で桜狩りに出かけた、と写メールが来ました。うーん、これはさすがに見事。 秩父清雲寺の桜 【花冷えですね。秩父では雪が降ると前夜の天気予報にありましたが、確かに当地から見える秩父の山並みには白く雪が積もった跡が…

古文書昆虫学

ゼミの教え子が修士を了えて国文学研究資料館に非常勤で勤めた時、仕事内容を尋ねたら、受け入れた古典籍の塵を払っている、丁の間に挟まっている虫の死骸は丁寧に保存しておくよう言われている、と話したことがありました。和古書の扱い方は一応教え込んだ…