2017-09-01から1ヶ月間の記事一覧

乃木大将の母

子供の頃、茄子の味噌汁が苦手でした。茄子自体は嫌いではなく、焼茄子は大好きでしたし、炒め物や天麩羅、糠漬も好きでしたが、芯の部分が味噌汁の中でざくざくどろりとなっているのが厭だったのです。すると決まって親からこう言われましたー乃木大将は子…

夫婦別姓(続・ジェンダーとメディア)

随分前(未だ同棲や事実婚が好奇の目で見られた頃)のことですが、我が家の購読紙がジェンダーに関する連載をしたことがありました。差別される女性側に立った視点です。ある日、夫婦別姓について、こんな話が載りました。 フリーランスのデザイナーの女性、…

マイノリティ条項

以前、所属する小さな団体から上部団体の委員候補を出すことになって、選挙をしました。後日、事務局担当の後輩(男性)から電話がかかってきて、「貴女は女性枠の方に入れて・・」とぺらぺら言われたので、かっとなりました。票数上位から順次、性別に関係…

源平盛衰記の「可能性」

井上翠さんの「『源平盛衰記』の敦盛最期譚の可能性」(「日文協日本文学」9月号)を読みました。軍記物語の重要なテーマとして、父と子の関係がありますが、一ノ谷合戦での敦盛最期譚は、熊谷直実が平敦盛を討とうとして、我が子直家と重ね合わせて武士と…

オクラ

子供の頃(未だ戦後の食糧不足時代です)、裏庭でオクラを栽培したことがありました。花が綺麗なので野菜とは思えませんでした。黄蜀葵にそっくりですが、薄黄色の花弁の底が臙脂色で、ハイカラな感じなのです。ただ一日花なので、切り花にはできません。当…

言い訳

李窓益さんの「世越号沈没事故と死の表象の疫学―韓国社会における「死ぬこと」の意味について―」(「死生学・応用倫理研究」21 2016/3)を読みました、壮絶な論考に吃驚し、併せて同誌に載っている裵寛紋さんの報告「韓国における生死学研究の現況と…

色づく街

昨日あたりから街を歩くと、ふと木犀の香りがします。気のせいかな、ちょっと早すぎると思いましたが、天気予報でもそう言っていました。東京は、秋に木犀の香り、春は桜の木が思いがけない所で自己主張をして、季節が過ぎるとまたありかが判らなくなる―そう…

薬玉と鳩

近所の小学校で運動会の応援練習が始まりました。以前は我が家からも運動場が見えたのですが、間にマンションが建って見えなくなりました。 中学時代の運動会では、競技だけでなく応援のアイディアも加点されたので、チームごとに知恵を絞りました。ある年、…

物語の変貌

三角洋一さんの論文「改作物語の和歌」(『物語の変貌』若草書房 1996)を読み直しました。平家物語の諸本をみていくと、何故か和歌には本文異同が多い。若い頃は、一字一句を重んじる和歌の詞がどうしてこんなに動くのだろう、と不思議に思いました。口…

声と文字

大隅和雄さんの『中世の声と文字―親鸞の手紙と平家物語-』(集英社新書)を読みました。大隅さんとはかつて日文協の太平記輪読会(本ブログ「昭和一桁のつぶやき」参照)で御一緒しましたが、定年後文学関係の学会にはお出かけにならないようで、20年以上…

眼科検診

御茶ノ水駅近くの大学病院へ眼科検診に行きました。このところあちこちに不具合が出て、眼にも光り物が出たりしたからです。この病院は患者の権利を謳っており、患者の話をよく聴くことを宣言しています。ほぼ2時間で検査も診察も終わりました。感心するの…

秋の本屋

消化器内科受診の帰りに本屋へ寄って、エンディングノートを買いました。新書のコーナーを見渡して、南北朝史の研究が進んでいることを知り、2冊ばかり購入してみました。もう、来年の手帳のコーナーも出来ていましたが、見ずに店を出ました。 町には秋祭り…

良医

どうも胃腸の具合がよくないところへ、区の無料胃癌内視鏡検査の通知が来たので、近くの消化器内科専門の医院で初めて受診することにしました。先週、腹部CTと腫瘍マーカー検査を受けてあったので、まずその結果説明、愛想のいい副院長でした。 70代まで…

鼻濁音

高校時代の部活は放送部でした。アナウンスメントの練習ではアクセントと鼻濁音が私にとっては課題でした、我が家は福岡県出身なので。アクセントは、東京でもしだいに一律、平板型に変わりつつある、だから未知の単語はとりあえず平板型で発音しておけばい…

犬化する猫

相手を知る、もしくは話題を引き出すために訊く二者択一の質問があります。海と山とどっちが好きか、清少納言と紫式部では、方丈記と徒然草では(これはちょっと渋い)等々。最もポピュラーなのが、犬と猫とどっちが好きか?でしょう。 私は猫。犬は全身投げ…

ジェンダーとメディア

我が家は親の代から同じ新聞(一般紙では最も進歩的と見られている)を取っているので、ほかの報道と比べたことはありませんが、かつて身の上相談欄があった頃、妻には「不倫」、夫には「浮気」という見出しがつくのを、子供心に不審に思っていました。 日本…

身元不詳

昨夏、石榴の木の根元に芽を出したものがありました。こんな所に何か播いたっけなあ、と考えて紫式部の実をこぼしたことを思いだし、春になったら植え替えることにしました。秋には葉が落ち、しかし枯れず、春先に大きな鉢の隅に植え替えました。 しばらくし…

家ごとの「さきの大戦」・配給物資篇

戦後しばらくは配給制度(米の統制)が続き、米は外米が主でした。たまに内地米、大麦(精白してない)や粟、干した杏などもあり、今なら粟も喜ばれたかも知れませんが、我が家では食膳に上らなかったところを見ると、飼っていた鶏の餌になったのかも知れま…

用があって渋谷へ出かけました。大工事が続き、行く度に通路が変更されています。 この頃の都心では「エスカレーターにお乗りの際は手すりにおつかまり下さい」という注意が出ています。かつては「右側を歩行者のためにお空け下さい」という札が出ていて、利…

蕎麦屋の代替わり

久しぶりに小石川へ行きました。昼頃、用が済んだので、大黒湯の隣の蕎麦屋に入ってみました。親の家にいた頃、よく入った蕎麦屋です。美味しい店でしたが後嗣ぎの息子に嫁さんが来て、大きな水車を店の前に据えたり、パック入りの年越し蕎麦を売り出したり…

風になる

肉親を亡くした時、教え子の1人から「自分も姉を亡くしたときこの詩に慰められました」という手紙と共に、1枚のカードが送られてきました。それには英語で、 Do not stand at my grave and weep, で始まる短い詩が印刷されていました。死者が、自分は風に…

空飛ぶ花

近くに大小2軒の花屋があります。小さい方の花屋では時々おまけをつけてくれることがあって、鶏頭の苗を買ったら珍しい色のカーネーションを1本、つけてくれました。秋らしい、錆朱色の花です。「コロンビアから来たんだ、カーネーションはコロンビア産が…

近世の幸若舞

須田悦生さんの「「女舞」と小田原・江戸の桐座ー近世幸若舞のゆくえー」(「伝承文学研究」66)を読みました。若い頃は芸能史にも目を配っていたのですが、最近は手が回らなくなっていたので、幸若舞の近世(しかも関東で)の生態を初めて知りました。中…

人参

小説や物語に出て来た食物が美味しそうに思えるのは誰しも経験があるのではないでしょうか。父親は玄海育ちのくせに生臭い魚が大嫌いで、箸もつけませんでしたが、なぜか伊豆のくさやは好物。矛盾しているじゃないかと追及したところ、横光利一の「日輪」を…

漢文スタイル

斎藤希史さんの『漢文スタイル』(羽鳥書店 2010)を読んでいます。詩による予言を扱った論文に引用されていたので、そうそう、我が家にもあったっけ、とツンドクの山の中から探し出しました。斎藤さんとは名古屋だったか、国文研の客員を務めた折(ある…

橋本敏江さんを偲ぶ会

前田流平曲奏者・橋本敏江さんは昨年10月24日に亡くなられました。百二十句通し語りを果たされ、「平家」全巻を語りで実演できる数少ない方でした。海外でも、国内の平家ゆかりの地でも度々演奏され、放送大学やNHKの「古典への招待」でも語って頂き…

産地の果物

かつての教え子が東郷町の梨を送ってくれました。鳥取県中部にある東郷町は、今は湯梨浜(温泉と梨のある海岸沿いの)町と名を変えたようですが、周囲12kmもある東郷池(ちなみに、日本一大きな池は鳥大の近くにある湖山池。池、沼、湖を区別する基準は不…

中国史における「中領域」

東洋史の平㔟隆郎さんからメールを貰いました。 「難しいあなたの著書論文を、出版社の宣伝と違って、やさしい説明にしてまとめてください」と大学の担当者から依頼がありました。無理難題を自覚しつつ少しだけ工夫して、「戦後60年代ぐらいに、日本の歴史…

家ごとの「さきの大戦」・鶏卵保存篇

うっかりして、冷蔵庫に眠らせっぱなしだった賞味期限切れの鶏卵を捨てようとした時、日頃は用心深い父から、「卵は長持ちするんだから大丈夫」と止められたことがありました。聞き返すと、こんな話をしました―会計将校だった父は、戦地で物資調達に当たって…

古事談の解読

松本昭彦さんの「作られた<詩讖>―『古事談』巻二・第21話考―」(「國語國文」4月号)を読みました。『古事談』巻二の頼長に関する説話を、説話集編者が特別な意味づけを附与したと解釈した論文です。私は単純に、気安い男同士のふざけ合いが過ぎて、生…