阿波国便り・玉虫篇

徳島の原水民樹さんから、写メールが来ました。

玉虫

【まだまだ暑いですが、昨日から日中の散歩に切り替えたところ、玉虫(死骸です)を見つけました。子供の頃は虫取り網を手に走り回っていましたが、郷里で見たことはなく、徳島に来て初めて見ました。今回が50年間で2度目です。前回(20年ほど前でしょうか)は、草葉に止まっているのを見ました。】

死骸とはいえ綺麗で、そのまま標本になりそうですね。私も子供の頃(湘南地方で)、死骸を見たことがあり、思っていたより小さいな、という印象を持ったことを覚えています。この翅で厨子の全面を覆うのは大変だったろうな、という感想でした。

【学生時代、玉虫厨子を見ましたが、薄汚い感じで感銘を受けませんでした。今思えば、わざわざ連れて行ってくれた友人に悪いことをしました。制作当時は美しかったのでしょう(原水民樹)】。

じつは私も同じ思いを懐きました。現在厨子に残っている玉虫の翅はごく一部で、制作当時はもっと華やかだったのでしょう。青貝摺を見慣れてしまった私たちの目は、小さな玉虫の翅が僅かに残る厨子から往年の面影を想像することが難しいようです。

今年の暑さは、稲作、野菜果物の実りだけでなく昆虫の世界にも異常を引き起こしているようで、今年は蝉を聞かなかったね、とエノキさんに言ったら、「ようやく蚊が出てきました」との返事。蚊もあまりに暑いと出て来れないのだそうで、そう言えばこの頃、買物に行って蚊に食われて帰って来ることが多くなった、と気がつきました。

鮮やかな光彩の翅を持つ玉虫は、死んでもなかなか土に還ることが難しいでしょうね。何だか憐憫を感じました。