イバラキ

水戸在住の教え子から、茨城パスポート申請用紙の写メールが来ました。知事がパクりまくったと公言して歩いている、とある。何のことだか分からなかったのでネット検索してみると、「群パス」というトレンドワードがあるらしい。

群馬、栃木、茨城のいわゆる北関東3県は、何かにつけて、知名度が低い、田舎で名所も名産品もない、といった自虐ネタで売っています。ネットには、夜間に警官から職務質問され、群馬から来たと言ったら、外国人と間違われてパスポート呈示を要求された、という笑話が載っていました(かつて文化人類学専門の同僚が、フィールドワークを終えてオーストラリアから帰国しようとしたら、日焼けした顔を見ただけで出入国の係官が、ジャカルタ!と言ってインドネシア行きのカウンターへパスポートを投げた、という話をしていたことを思い出しました)。

群馬県は笑話を逆手に取って、群馬パスポートなる観光パンフレットを作り(海外渡航用のパスポートと大きさが同じ。外務省に合法性を問い合わせた、という伝説もつけた)、累計10万冊を売り上げるヒットになったのだそうです。茨城県知事がわざわざ群馬県知事に断りを入れて、茨城パスポートを作り、パクったパクったと言いふらしたところ、初刷1万冊のところ2万7千件の「申請」があったので増刷した、という。

              イバラキパスポート

群パスは黒地に銀文字なので公文書感があるけど、青だと医療手帳かなんかのようだなと思ったのですが、青は茨城のシンボルカラーなのだそう。中味は県内観光地のスタンプラリー用の御朱印帳みたいなものです。私は、イバラキは関西の茨木で、関東の茨城はイバラギだと思っていたのですが、それは県民からは許せない誤謬なのらしい。ローマ字表記のおかげで、清音であることがはっきりします。

藺草

我が家は夏の間、シーツではなく花茣蓙を敷いて寝ます。ひんやりとして気持ちがいい。父祖の地博多は、夏は寝苦しい夜が多いので、親の代からの習慣です。畳表よりももっとしっかり織った、綺麗な花模様が織り出されている藺草の茣蓙、ここへ越してきた年に新調しました。結構な値段でしたが、永く使う物だから、と張り込みました。しかしさすがに20年以上経ち、背中の当たる所の藺草が折れ始め、あちこち孔が開きました。買い換えなくては、と思いながら仕舞ったのですが、今年は熊本大水害で、藺草農家は壊滅の危機に瀕しているとの報道があり、心配していました。

昨日の午、ニュースを視ようとTVのスイッチを入れたら、衆議院予算委員会の中継中で、藺草農家への対策はどうなるのかと野党議員が質問していました。TVカメラはまず経産相を映しましたが、答弁に立ったのは農水相、話題の人です。仕事で返せ、と総理から言われたそうですが、大半は質問内容を繰り返し、しっかりと対応して参ります(当たり前だ!)とだけの答弁。

そして夕方、TVのスイッチを入れたら、辞任の見出しが画面に躍っている。おっそい!誰もがそう思っているのではないでしょうか。予算カットが行われたかどうか以前に、そういう発言(恫喝成功体験を誇示)をしたことが問題なのだから、発言を確認した時点で更迭に値する事案でしょう(さらに問題なのは、所有格をつけ、ちゃん付けして、選挙カーの上で彼の名を絶叫していた人の目利きでもあります)。

備後畳表という広島の特産品があります。半世紀以上前、福山に文献調査に行き、藺草の香りと手触りに誘われて定期入れを買い、いつも世話になる大学図書館職員へのお土産にしました。現在は藺草の生産は熊本が99%、僅かに福岡でも作っているという。

川越便り・遠目美人篇

川越の友人から、長雨で庭へ出られずにいる内に恐ろしいほど草が茂り、1週間かけて少しずつ除去を進め、ようやく足の踏み場を作った、望遠レンズで背景をぼかして撮った、とメールが来ました。

            秋明菊

【雑草に隠れていた植物たちをあらためて眺めてみたら、それなりに季節の花々がひっそりと咲いていました。

 秋明菊は貴船菊が原種らしく、白は品種改良されたものだそうです。ピンクの貴船菊はもう終わっていました。】

               ブルーサルビア

【紫のサルビアは強い。毎年旺盛に花を咲かせます。秋桐は他の花に負けて消えてしまいそうだったので少し日の差す所に移植しておいたら、たくさん花をつけていました。】

我が家でも紫サルビアを窓下に植えたことがありましたが、花が加齢臭に似た匂いを出し、大失敗。大柄なサルビアガラチニカが欲しくて実生を狙うのですが、どうも苞の中には種子ができないらしく、成功しません。それに我が家の鉢植えには大きすぎるか。

                 杜鵑

【杜鵑は強すぎます。1度殆ど抜き取ったのだけれど、またしっかり広がっています。】

へえそうなのか。庭があったら植えたい花ですが。和室の机脇に活けたい。

                  桜蓼

【桜蓼は、ピンクの可憐な花姿ですが、根っこはランナーでどこにでも広がって行き、絶えることはなさそうです。】

遠目美人というけれど、それぞれの花への愛おしさが感じられる写真でした。もともと茶道を嗜む愛妻のために植え込んだ茶花たちなので、愛おしさはそのせいか。

我が家では諦めかけた菊が一斉に蕾をつけ、2年ぶりに楽しめそうです。パプリカは長い期間に亘って咲き続け、黄色くなった実は早くも萎び始めました。

沖縄で、スリランカで

11月7日に那覇で開催予定だった明翔会研究報告会は、内容変更も含めて延期になりましたが、当日発表予定だった2本の報告を、同じ日の午後、東京の大岡山にある「しいちゃんのカフェ」で、対面集会として聞いて頂くことになりました。対面ですので、会場の収容能力が許す限り、明翔会会員だけでなく地域の方々や一般の方にも御参加頂き、交流を図りたいと、主催者側は言っております。

11月7日(土)13:00~16:30 要予約

 しいちゃんのカフェ(大岡山商店街の中、大岡駅から環状7号線へ抜ける通り沿い)

➀障がいのある方とつくる職場環境と仕事の可能性についてー沖縄のバニラプロジェクトと日々の障碍者就労・雇用支援の現場からー  ディーセントワークラボ 中尾文香

②遺跡の向こうに見えるスリランカー現地調査のこぼれ話と、人々の暮らし、日本とのつながりー                  国士舘大学准教授 鈴木慎也

中尾さんは障碍者就労支援の専門家。障碍者も自分や家族の生活がなり立つような就労ができなければいけない、という信念を持って活動をしています。今回は沖縄での農福連携によるバニラ栽培の話。アイスクリームなどでおなじみのバニラ、どんな原料からどうやって作られるのか、知っていますか?バニラはカトレアの花と隠元豆の実の莢とを併せ持つような植物で、世界でも栽培地は限られ、製品化には大変な手間がかかる。

鈴木さんはスリランカの古代灌漑施設の研究者。スリランカはもとはセイロンといい、インド洋の宝石と言われた観光地でした。今は政治的事情で観光は困難です(しかしスリランカの人たちは、私たちの日常身近かで働いています)が、鈴木さんは毎夏フィールドワークに出かけ、密林の中の遺跡(現地では今も信仰の対象)を調査し、現地の言葉で交流しています。今夏は留学生募集の公務を帯びて行ってみたが・・・さて。

[追記]11月7日の参加申し込みがQRコードからでは難しい

場合は info@decentwork-lab.org へ、メールでどうぞ。

件名:11/7のカフェイベントについて

お申し込み内容:◯お名前 ◯当日の連絡先(携帯番号などがあれば) ◯所属組織(任意) ◯参加時間 ①沖縄とスリランカのお話(13:00〜15:00)②茶話会(15:00〜16:30)③その他(自由回答)

家蜘蛛

数日前、風呂の蓋を動かしたら、何か茶色い小さな影がシュッと視界を横切りました。きゃっ、ゴキブリ!ここ数年、我が家では1度もゴキブリを見かけない夏が続いていたのですが、水回りやベランダからはどうしても来訪する。小さくて茶色かったところからするとチャバネゴキブリだな(姿形は目にも止まらなかった)と思って、道具棚から殺虫剤を探し出し、逃げ込んだと思われる排水口附近に撒いて寝ました。

そして昨日の夕方、書斎を出ようとしたら、戸口脇の壁に丸い輪紋のようなものが見え、立ち止まって見たら、蜘蛛です。足先まで測れば直径7,8cmはあるでしょうか、ベージュ色に模様が入っていて、一見バーバリーの飾り布のようで美しい。今まで戸外室内、いろいろな蜘蛛を見ましたが、これは初見です。しかし美しいのは毒蜘蛛かもしれません。どうしようかと思案しましたが、ふと捨てるはずの紙を手に持っていることに気づき、抑えようとした瞬間、さっと逃げられました。俊敏です。

風呂場で見た影もこれだったのかも、と思い、毒蜘蛛だったら大変(どこかでペットに飼っていた珍しい昆虫が逃げ出すことは偶にある)、と不安になりました。我が家では小さな家蜘蛛(多分、ハエトリグモ)が壁や机上を這っていることはよくあるのですが、あれは無害、寧ろダニを食べてくれる益虫だと考えていました(延慶本平家物語の校訂をしていた頃によく見かけたので、何となく、ああいう細かい仕事の「友」というイメージです)。子供の頃、祖母は室内を這う小さな蜘蛛を見かけると、懐ろに入れておくと金が貯まるのだと言って掬い取って懐中に入れました(さすがにあれはできません)。

調べた結果は、アシダカグモ。印度原産で明治初期には長崎で発見されていたという。ゴキブリなどを食べてくれる益虫だということでした。

情報漏洩

連日、サーバー攻撃や個人情報漏出のニュースが流れ、止まりません。1件当たり何百万人という単位で、1日10件前後もある。ネット上には情報漏洩ニュースという見出しも出来ています。AIのおかげでサーバー攻撃が簡単に、大量にできるようになったのが原因だという説が出ています。そもそも管轄官庁の総務省すら、漏洩させたらしい。深刻なのは、身分証明に使う運転免許証や健康保険証が流出してしまった場合です。

それを思うと、電子バンキングやマイナンバーカードはもとより、メルカリや通販などの便利なシステムを使う気になれません。いちど流れ出た情報は取り返すことができない。我が家はもう四半世紀前、金融機関が情報流出の初期対応を誤った(社長が記者会見で「買い戻す」と言った)ので、その後もずっと怪しい電話に悩まされました。10年前、親の家を整理した時に1度だけ金杯を売ったため、未だに買い取り業者から執拗な電話がかかります。

個人情報保護法ができる以前はこんなに面倒ではなかった、と思うのは話が逆でしょうか。個人情報に市場価値がついたのは、何がきっかけだったのか。そしてさらに、どんどん価値が重くなっていくのは情報処理の速度が変わった、つまりコンピューターが普及し、あらゆるシステムに食い込んで来たから、それだけなのか。

個人主義が強まるにつれて他人への、今までとは別の注目度が上がってきたのかも知れません。他人を自分の利益の資源として見るようになった。あるいは他人の「油断」が人目を惹くようになったー心中でそうぼやきながら、今日もDMの封筒の宛名を、捨てる前にせっせとマジックペンで塗りつぶしています。尤も考えてみれば、宅配や贈答用の伝票を書く時には、ばっちり個人情報をさらしているんだけど。

名古屋にて

平家正節250年記念三都巻通し演奏会も大詰、今井検校が6年ぶりに語ると聞いて、名古屋へ出かけました。3連休の初日、東京駅はごった返していました。東海道線を下るのは何年ぶりでしょうか。よく晴れて、富士山も全姿見えましたが、誰も見ていない。名古屋駅構内はすっかり変わっていて、うろうろしました。

今井検校2026

今井検校の演奏は6年ぶりだとかで、御自身が三重甲はもうむつかしい、と言っておられたようですが、聞いてみて、声は慣らせば出るようになる、と思いました。未だ68歳、声に力もあり、何よりも平家物語を聴いた実感が残りました。会場に来てから愛用の琵琶の覆手が取れたとかで、急遽別の琵琶を用意したそうです。絃の強さが足りない感じはしましたが、それでも見事な語りでした。

加藤幸兵衛秘蔵琵琶展

この日の呼び物はもうひとつ、陶芸家加藤幸兵衛7代目の琵琶コレクション(400面の中)の一部展示でした。

世界各地の琵琶

7代目はペルシャのラスター彩を復元した作品で有名ですが、シルクロードを通って世界に広がった琵琶に惹かれて、蒐集してきたのだという。なるほど木工の造型としても面白い。盲僧琵琶にも漆塗りに青貝を鏤めた物もあるのは、初めて見ました。

明日から2日間、巻通し演奏が行われ、仙台、名古屋、東京の語り手が巻9~灌頂巻の1句ずつを語ります。会場は八事山興正寺。

名古屋在勤時代の知人や明翔会の若手と、名駅で軽く吞んで帰りました。35年前は紅顔の美青年だった人が今や定年後のオジサンになっている。よもやまの話が出ましたが、世の中がどんどんわるくなり、自分たちは辛うじて「戦争のない時代」を逃げ切れるが、若手はそうはいかないかも、と深刻さを紛らしながら吞みました。