2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

美しい誤解

前にも書きましたが、猫を家飼いする風潮にどうもなじめません。猫は束縛を嫌う自由な生き物。半野良で餌をくれる家々を廻って歩くのが普通だった時代(今どきは地域猫と言って、去勢して管理するのらしい)と違って、都市部では、今や純粋な野良猫は絶滅種…

地域創生

所用で久しぶりに丸ノ内へ出かけました。ほんとに久しぶり、新丸ビルを出たら、東京駅が小さく、よそよそしく見えたほどです。人通りは我が家の近辺よりずっと少なく、静かです。若いサラリーマンしか歩いていない。 用が済んで、駅地下にある地方開発食品の…

アフターコロナ

第6波が来るのは確実、と言われながら緊急事態宣言全面解除が決まりました。最近、街では若い男性のノーマスク姿が増えた気がします。然るべき所では、この2年間のてんやわんやを踏まえて、ネックとなった問題を解決する準備が進められているのでしょうね…

愛したのが家族だった

岸田奈美さんの自伝的エッセイ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(小学館 2020)を友人から借りて読みました(最近の本はむやみにタイトルが長い。TV番組やタレントの場合はラテ欄を独占するため、論文名の場合は検索に引っかかりやす…

シンポジウム・平家物語と国語教育

軍記・語り物研究会シンポジウム「軍記研究が国語科教育へ届けるべきことは何か」(オンライン)を視聴しました。講師は4人、①栃木県立那須拓陽高校 大谷貞德「生徒の実態を踏まえた指導実践」②暁星中学・高校 吉永昌弘「中学生と「敦盛最期」を読む」③愛媛…

鎌倉殿と執権北条氏

坂井孝一さんの『鎌倉殿と執権北条氏―義時はいかに朝廷を乗り越えたか』(NHK出版新書)を読みました。このところ坂井さんは実朝や鎌倉政権、承久の乱について立て続けに新書(中公新書、PHP新書)を書いていて、本書も含め三部作だそうです。しかも従来の人…

近所に白山吹の繁みがあって、黒くつやつやとした実がたくさん実ります。そのままでは舗道に落ちるだけなので、こっそり採種して我が家にも、あちこちの放置プランターにも播いていましたが、芽はすぐ出るものの何故か育ちません。諦めかけていたら、去年、…

軍記物語講座読後感2-2

アメリカ文学専門の友人から、軍記物語講座(全4巻 花鳥社)の読後感が送られてきました。第2巻『無常の鐘声』を中心に読んだそうです。専門外の人からの感想は嬉しい。一部、紹介させて貰うことにしました。 【まず、古典文学および古典文学研究の確かな…

回想的長門本平家物語研究史(6)

国書総目録では、諸本分類には踏み込まない、というのが原則でしたが、平家物語の場合、それでは所在情報として役に立たない、と私は主張しました。先輩の栃木孝惟さんも同意見を具申したので、平家物語に関しては判る範囲で諸本を( )つきで注記することに…

回想的長門本平家物語研究史(5)

学部を卒業して就職し、1年も経たずに進路変更した頃のことは、『文学研究の窓を開ける』(笠間書院 2018)や本ブログにも書きましたが、大学院入学後未だ西も東も分からない6月に、いわゆる東大闘争が始まり、授業も図書館も全く利用できなくなりました。…

コロナの街・part 24

文字通り雲一つない晴天に誘われて、播磨坂のスーパーへ出かけました。休日なので街には親子連れが多いのですが、最近何故か、異常に燥ぐ子を見かけます。横断歩道を渡った途端、前を歩いていた男の子がいきなり舗道に座り込みました。杖を突いていると、こ…

専守防衛で

台風一過晴れ上がり、暑さが戻ってきて、薄い葉のコリウスは朝からよれよれに萎れていました。コキアの茎が赤くなり始め、パプリカの白い花が点々と、地上の星のように落ちています。久しぶりに印度の壺に水を張りました。木犀や彼岸花は、全国的に例年より…

源氏物語宿木巻評釈

田村俊介さんから「源氏物語宿木後半評釈(2)」(「富山大学人文学部紀要」75号)の抜刷が送られてきたので、解説を読んでいるうちに、本文批判の問題は作品ごとでなく汎く共有されるべきだ、と痛感したので書いてみます。私は源氏物語の諸本研究につい…

幸せの選択肢

ダイバーシティという理念で括られる運動の中で、障害者への対応と、同性婚に関して、私には何か歯に引っかかる、あるいは喉につかえる感じがあって、うまく問題を掴み出すことができずにいたのですが、前者について16日付朝日新聞朝刊(13面)の岸田奈…

巴里からの電話

昨夜、夕食後に電話が鳴りました。出てみたら、巴里のj.ピジョーさんからでした。特別な用事ではないけど、と断って、15分ほど互いの近況を話しました。毎年、秋には訪日していたのに、昨年も今年もCOVID19のためできずにいる、そのうちに自分が旅行でき…

阿波国便り・実りの秋篇

徳島の原水民樹さんから、先週このブログに書いたアムンゼンの物語はかつて愛読した、とメールが来ました。 【子供の頃読んだアムンゼンとスコットの南極点到達競争の物語を思い出しました。縁側に寝転んで、宝島や巌窟王などを読みふけっていたあの頃が一番…

コロナの街・part 23

ウィズコロナももう1年8ヶ月、生活様式の変化が残すいいものもあるでしょうが、2年を超えると、取り返せない爪痕にも注意を向けておかなければと思います。殊に学校関係では後々の世代への、見えない負の遺産が蓄積する恐れがある。小学校、中高、そして大…

源氏物語幻巻の苗代水

大津直子さんの論文「断絶する「苗代水」と六条院四季の町―『源氏物語』「幻」巻明石の君の和歌をめぐって―」(「文学・語学」230号 2020/12)を読みました。光源氏が造営した六条院には四季の壺が設けられ、実子のない紫上の住む春の壺が母屋格、光の血…

豊後便り・名水篇

東京はまた暑さが戻ってきました。別府暮らしの友人から、涼しい写真を送る、とメールが来ました。 小津留湧水 【九州は福岡以外は好天に恵まれています。写真は豊後竹田市のおづる湧水。水汲みに訪れる人の群れが一段落した、つかの間の無人の瞬間です。】 …

後白河院時代の文化

会員ではないのですが、オンラインの仏教文学会大会を視聴しました。かれこれ20年近く仏教文学会、説話文学会、さらに中世文学会までもが殆ど同内容―仏教関係資料の話で埋め尽くされ、浮草で水面が覆われた池のように酸欠状態が続き、複数学会に所属する意…

東大中世文学研究会第345回

午後からオンラインで開催された東大中世文学研究会に参加しました。いつもなら夕方から始まるのですが、大学側の事情があるようです。失敗は、先週夜半にちあきなおみを聴いたまま、PCの音量を絞っていたことで、zoomが始まってからでは調整できず、ヘリや…

平家物語を読むには

平家物語の読者、もしくは読んでみたいという人はこんなにいるんだなあ、とやや意外でした。新作アニメがTV放映予定とのニュースに反応するツイッターを見ての感想です。折から小説連載も始まったらしい。大河ドラマが失敗して以来(あれは日本史とCGとに頼…

防災地図

缶詰は半永久的に保つ、と思い込んできたのですが、最近、賞味期限があることを知りました。殊に缶つまと呼ばれる、簡便な缶は期限が早いようです。何故そう思い込んだのか考えてみたら、アムンゼンの残した缶詰が数十年後にも食べられた、という話を何かで…

コロナな日々 20th stage

五輪の全日程がようやく終わりました。TV画面に日本人のメダル数が臨時ニュースで割り込んでくることもないし、上空をヘリがうるさく飛び回ることもない。一気に秋らしくなって日差しが和らぎ、富士山には雪が降りました。春愁という語があるように、秋には…

回想的長門本平家物語研究史(4)

日本史専門の友人から、高橋貞一氏が軍記物語研究者だとは知らなかったので、という問い合わせが来て、愕然。もうそういう時代なのか!と改めて知り、この項を書いています。私が卒論で平家物語に取り組む決心をした頃(1965年)、平家物語諸本論に関する出…

間に合ううちに

遅すぎる。このところ、あらゆるニュースを見る度にそう思いました。老人特有の焦燥感ではないと思います。アフガニスタンへの邦人救出機の出発は、空港近辺に人が集まり、見るからにテロが起こりそうになってからで、他の国々の手配より1週間以上遅れてい…

源平の人々に出会う旅 第56回「駿河・海道下」

元暦2年(1185)、壇の浦の合戦で平家が滅びた後、捕虜として京と鎌倉を往復したのが、一の谷で生け捕られた平重衡と、壇の浦で生け捕られた平宗盛父子です。 【小夜の中山】 『平家物語』では、寿永3年(1183)に重衡が鎌倉へ護送されるまでの道程を、地名…

山城便り・羨望篇

鳥取時代の同僚が、京都郊外に移住し、悠々の老後を送っています。 【先週、京セラ美術館(京都市美術館)に「上村松園展」を見に行きました。予約制でしたが、それでもかなりの人が入っていました。展示作品はかつてないほど集めたということで、美人画がず…

パプリカ

パプリカ(観賞用唐辛子)を育てています。夏の花や菊が終わり、春用の苗を植える前の空白期間のためです。去年は実が赤、黄、紫の3種を揃えて植えた所存でしたが、日照良好の我が家でガンガン日に当てたら、紫が真赤になってしまいました。珈琲色の実の苗…

国語をめぐる冒険

岩波ジュニア新書『国語をめぐる冒険』を読みました。渡部泰明さんが序を書いていますが、5人のリレー執筆のようになっていて、編集部もかなり関わったのではないかと思われ、以前『ともに読む古典』(笠間書院 2017)を編んだ私としては、企画・編集の過程…