2018-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ボンボニエール

親の家を整理したときのことを思い返すと、我が家には蓋物が多かったなあ、という気がします。かつてはジャムも調味料も、必ず商品の容器から自家のうつわものに移して卓上に出されました。蓋物に移されたら、食べてもいいものなのです。主婦のいる家なら、…

武者の世が始まる

軍記物語講座第1巻『武者の世が始まる』 松尾葦江編 (将門記・陸奥話記・後三年記・保元物語・平治物語・承久記) 2020年1月 花鳥社刊 まえがき 早川厚一 東国の武士たちと軍記 志立正知 『将門記』を拓く 佐倉由泰 『陸奥話記』冒頭考―『今昔物語集…

もう一つの道

先日ブログに書いた「卒論指導」を読んで、日本史をやっている友人から、メールが来ました。以下に引用します。 【「卒論指導」の記事を拝読し、私も昔のことを思い出しました。卒論は、農業史をやろうと思っていたのですが、指導教授から「ん~、史料がね」…

立ち読み

歯医者へ定期の口腔ケアに出かけました。口の辛い歯科衛生士から、右下奥の1本を除けばよく磨けている、歯茎もきれいになった、と褒められました(ここまでに4年半かかった)。支払いの段階になって、高額請求に一瞬耳を疑いました(後期高齢者保険なので…

スポーツの勝敗

小結貴景勝の優勝は、上位陣の休場や突っ張りだけが持ち技、という限定条件を差し引いても嬉しいことです。何故なら、師匠の突然の引退、部屋替えという衝撃を真正面から突破しての優勝だから。かの親方の言動は、スター横綱のイメージを損ね、相撲というス…

菊見酒

このところ月の美しい晩が続きます。我が家では小菊が咲き始めました。あちこちから小枝を失敬してきて、挿し木で増やしたのですが、数年のうちに新種から消えてゆき、けっきょく残ったのは、シンプルな白と黄色の小菊でした。これが一番、菊らしい、と満足…

ハンパク

1969年夏、大阪城公園では、ハンパク(反戦のための万国博)が開催されていました。翌年開かれる予定の大阪万国博は、ちょうど70年安保(日米安保条約の更新)と重なり、その問題点から国民の眼を逸らす目的がある、とされ、なら反戦の意志を示す民衆…

天皇陵

24年も前の、暑い夏の日のこと。八坂系平家物語に関する共同研究で、私は村上學さんと共に、天理図書館へ書誌調査に行っていました。この時季、天理図書館の閲覧は午前中だけだったので、午後からの時間が空き、三輪山の麓を歩いてみたい、と言う村上さん…

英雄叙事詩

福田晃・荻原真子共編『英雄叙事詩―アイヌ・日本からユーラシアへ』(三弥井書店)という本が出ました。福田さんのバイタリティには、数々の伝説があります。86歳の今日もこうして、世界的な視野で伝承文芸の集大成に成果を挙げ、多様な人々を結びつけてお…

過少申告

数字が大きすぎてぴんとこない、自動車会社トップの不正。最近は、CEOと社長と会長と代表権のある何とやら・・・と、誰に最高責任があるのか、外部からはよく分からない組織が多くなりました。私に違和感があるのは、あの会社の社長がしゃらっと、記者会…

平和の世は来るか

軍記物語講座第三巻『平和の世は来るか―太平記』 松尾葦江編 2019/10/30発売(花鳥社) まえがき 小秋元段 忠義の行方―楠の刀 井上泰至 『太平記』諸本研究の軌跡と課題 -1990年代以降を中心にー 長坂成行 『太平記』と武家―天正本と佐々木京…

空飛ぶ酔漢

航空機パイロットの酒酔い乗務が、問題になっています。怖い話です。落ちる側だけでなく、落ちてこられる側からすれば避けようがなく、予測もできないのですから。 一昔前、未だ酔っ払い運転の取り締まりがそれほど厳しくなかった頃は、ちょっと引っかけた方…

太平記シンポ余談

昨日の太平記シンポジウムは計4本の発表があり、最後の発表者伊藤慎吾さんは「妖怪資料としての『太平記』受容―「広有射怪鳥事」を中心に―」と題して、巻12で建武元年改元記事に伴って、紫宸殿の上で「いつまでいつまで」と鳴く怪鳥を隠岐広有が射落とす…

太平記シンポジウム

京都の日文研で開催された、太平記シンポジウムを傍聴しに行きました。急いで出たので、ガラケーと腕時計を忘れたのに気づきましたが、引き返す時間がなく、不安でいっぱいのまま、深川めしの駅弁(東京駅発の朝食は、これに決めているのです)を買って乗車…

卒論指導

松薗斉さんが自著のあとがきで、学部時代の卒論の思い出を書いているのがほほえましく、ちょっぴり苦く(似たような覚えが誰にもあるはず)もあります。指導教授の川添昭二先生に、早歌(宴曲)研究をしたいと申し出たが、微笑まれるばかりで何も返事されず…

佳日

よく晴れた穏やかな日、朝の家事を済ませて腰を下ろし、珈琲を淹れる頃、宅配便がやってきて、仕事仲間からの献本を届けてくれる。期待に満ちて包装を解き、紙の匂い立つ新本を開いて、まず目次、まえがき、あとがきを読み、再び目次に戻ってきて、どういう…

中世の女房

松薗斉さんの『中世禁裏女房の研究』(思文閣出版)という本が出ました。550頁近い、持ち重りのする本です。装幀は瀟洒ですが、中身はびっしり。序章「中世の内裏女房を理解するために」から始まって、1内侍の職務と補任 2中世の内侍の復元 3大納言典…

石蕗

石蕗の花が咲き始めました。東京では日本庭園の置石の裾に植え込んだりしますが、九州では山に自生し、茎を食用にします。庭にもよく植えてあります。親族の話では、河豚の解毒剤になるので、植えておくのだとか。 かつて下関や博多では、魚屋で買った河豚を…

ランチにワインを

朝から新しいプロジェクトの打ち合わせが続き、久しぶりで、がっつりランチ。本郷通りへスパゲティを食べに行きました。私はキャベツとからすみの1皿、相棒は菠薐草と桜蝦の1皿。白いポタージュにオリーブオイルをたらしたものが出たので、確かめるとさつ…

幸若舞の展開

須田悦生さんの『幸若舞の展開―芸能伝承の諸相―』(三弥井書店)という本が出ました。須田さんは福井出身だそうで、よく学会の後の酒席などで御一緒しましたが、もの静かでしかし暗くなく、温和な雰囲気を漂わせている方でした。越前が本拠地だった幸若舞の…

花鳥社

国文学専門の出版社がひとつ、この秋から活動を開始しました。 (株式会社)花鳥社 公式サイト https://kachosha.com/ 153-0064東京都目黒区下目黒4-11-18-410 電話 03-6303-2505 ファクス 03-3792-2323 国文学とその関連分野を中心に、企画・編集・出版をや…

古今伝受

鶴崎裕雄さんと小高道子さんが編んだ『歌神と古今伝受』(和泉書院)という本が出ました。古今伝授(授ける側からは「伝授」、受ける側からは「伝受」)とは、『古今和歌集』を中心とする歌学上の諸説の一部を秘伝化し、師から弟子へと口伝や切紙、抄物のか…

野党はあるか

米国ではねじれ国会誕生で、今後ますます、口汚い演説をニュースで視ることになるのかと、やるせない気になります。しかし翻って脚下を見ると、いま日本に野党はあるのか、と言いたくなるような現状です。 国会中継を視ても、どうでもよさそうなことばかりを…

就職面接

我が家では正月2日にめいめい墨を擦って、書き初めをしました。ある年、私が『万葉集』の「君が行く道のながてを繰りたたね焼きほろぼさむ天の火もがも」(巻15 狭野弟上娘子)を書いているのを見た父が、その歌は就職面接の時に訊かれた、と言うのです。…

夕陽

我が家の仕事机は、間取りの都合ですべて東向きの窓の下に据えてあるので、夕方には一時的に仕事ができなくなります。本郷通りに並ぶ高層ビルの窓硝子に夕陽が反射し、眩しくて目が開けられなくなるからです。やむなくその間は、家事や買い物に当てることに…

一房の葡萄

初夏と晩秋は果物の彩りが楽しめる季節。我が家は毎朝果物を食卓に出し、仏壇にもつねに果物を上げてあるので、スーパーや八百屋の店先が気になります。いまは輸入物の葡萄が年中出回っていて、大きな粒を皮ごとむしゃむしゃ食べるようですが、いまいち葡萄…

学びの原点

「國學院雑誌」10月号が届き、中でも川合康三さんの「渋谷で中国古典を読む」と飯倉義之さんの「日本色話大成序説―研究史の整理から―」2編が印象に残りました。 川合さんは渋谷へ赴任して3年目、現代文化最先端の街で、時代遅れの古くさいものに見える古…

源平の人々に出会う旅 第22回「鎌倉・征夷大将軍」

寿永2年(1183)7月、入京を果たした義仲でしたが、帝位争いで北陸宮(以仁王の遺児)の擁立に失敗します。『平家物語』では、義仲の田舎育ちの粗野な言動が強調されています。 【大蔵幕府・東御門跡】 いっぽう頼朝は、鎌倉に大蔵御所を建て、着々と地盤固…

小春日和

初めて家を買ったのは34歳の時、横浜の青葉台でした。近くに同年代の同業者が3家族もいて、軍記村と称してよく往き来しました。正月には我が家で新年会もしました。しかし1人はアル中で亡くなり、1人は肝炎で亡くなり、もう1人は愛妻が動脈瘤で急死し…

後期軍記

必要があって、後期軍記の研究状況をおさらいしています。笹川祥生・松林靖明・梶原正昭さんの著書や古典遺産の会編の事典類、雑誌「国文学」の特集「軍記物語―エポックをおさえる」(2000/6)や「軍記と語り物」の研究展望・研究文献目録など。後期軍…