2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

阿波国便り・忍冬篇

徳島の原水民樹さんからの花便りです。 スイカズラ(忍冬) 昔読んだ英国の田園小説(もう題名も作者も、あらすじも忘れてしまいましたが)で、若いカップルを取り巻く緑の中にこの花の甘い香りがずっと漂っていて、結婚式当日、花嫁が着付けをしている部屋…

中世文学会大会129

中世文学会春季大会2日目。初日のオンラインがスムーズだったので、今日の研究発表も聞く気になりました。1本目は北条暁子さんの「臍の緒を自ら切る女院たちー待賢門院璋子の吉例と院政-」。『古事談』が伝えた噂を「実証」した角田文衛氏以来、璋子の生涯…

徒然草の視界

中世文学会初日、オンラインによるシンポジウム「徒然草の視界」を視聴しました。会員外も含め370人の参加申し込みがあったそうで、盛会でした。講師は中野貴文・小川剛生・川平敏文、司会は荒木浩という、いま徒然草研究の最前線を走っている人たちです。予…

阿波国便り・ゆすら篇

徳島の原水さんから、季節の写真を添えたメールが来ました。徳島はCOVID19の流行当初は感染者数が少なかったのに、ここのところ急激に増え、ワクチン接種の準備もてんやわんやだったらしい。しかし都会と違って、愛犬を連れて新緑と花々の中を散歩する特権が…

月蝕の夜

昨夜はスーパームーンの月蝕。8時過ぎがピーク、ということで、ヘリが上空を飛び回っています。夕食を済ませて南東の空を見上げましたが、何も見えません。ちぎれ雲が見えるので、晴れてはいるらしいのですが、もしやちょうど階上に当たって見えないのかと、…

労働の対価

「逃げるは恥だが役に立つ」(略称「逃げ恥」。最近のドラマにはむやみに長いタイトルが多い。ラテ欄を独占するための作戦だとか)というTVドラマが放映されていた頃、エノキさん(家事代行業です)とその同僚たちは、たいへん共感したそうです。 中でも彼ら…

コロナの街・part 21

茗荷谷まで買物に行こうと、地下鉄の駅に下りました。ホームの壁際に、若い女性が正座しています。こんな所で、気分でも悪いのだろうか、声を掛けた方がいいかなと、歩みを緩めかけた時、女性は突然、五体投地を始めました。額も腕も地に着ける、丁寧な五体…

川越便り・白薔薇篇

川越の友人からの薔薇便りです。 アイスバーグ 【純白の薔薇が好きです。そのひとつ、ドイツ名は「シュネービッチェン=白雪姫」といいます。株一杯に真っ白な花が咲くのですが、次第にピンクの細かい斑点が現れたりするのが、やや残念な点です。】 この薔薇は花屋で…

錦蛇

ペットの錦蛇が、アパートの1室から逃げ出し、県警の大捜索にも見つからず、結局屋根裏から見つかった、との報道に、胸を撫で下ろした人は多かったでしょう。長さ3・5m、重さ13kgとあっては、いくら飼主が、温順しくて餌にも貪欲ではないと説明しても、跳…

狂騒曲

全国あちこち、わらえない笑い話が毎日発生しています。エノキさんが住む区では、医療従事者のワクチン接種がようやく始まり、30代の友人が受けたところ、2度目の接種で38度の発熱があったので、休ませて欲しいと勤務先(医療機関です)に電話したら、それは…

古代の法会でうたう歌

牧野淳司さんの論文「古代の法会でうたう歌ー「しぐれの雨」の歌と「秋萩の」の歌から考えるー」(「文化継承学論集」15)を読みました。『万葉集』1594歌と2205歌とが法会の席で歌われたと考え、秋の自然詠のように見えるこの2首が、どのような意味を籠…

この世界の片隅で

終日暗い、雨もよいの日が続きます。今年は梅雨入りが早く、いろいろ手順が狂いました。ロベリアが伸びすぎ、ビオラとの植え替えが間に合いません。惜しまず摘んで、室内に活けることにしました。さすがにビオラもどんどん花が小さくなり、草丈が伸び、曲が…

大島本源氏物語再検討

佐々木孝浩さんの論文「「大島本源氏物語」の再検討ー新発見の定家監督書写本「若紫」帖との比較を中心としてー」(「斯道文庫論集」55)を読みました。複雑な問題を丁寧に説明した長い論文ですが、分かりやすい。近代国文学における本文研究のバイブルと…

国語教材としての雲雀

今井正之助さんの「小・中学校国語科教科書ひばり教材考ー1950年度以降の採録状況の概観を中心に-」(「愛知教育大学大学院国語研究」28 2020/3)と同誌29「坂本遼「春」小考ー雲雀のためにー」を読みました。戦後の小中学校国語教科書から雲雀を扱…

実山椒

衝動買いした実山椒は、持て余すかと思いのほか、冷凍する間もなく無くなりました。まず茹でて醤油漬を1瓶作りました(冷奴に合います)。鶏挽肉と濃い味付けで煮たら美味しかったので、牛コマでやってみようと買いに行ったのですが、売り切れ(最近は家で…

川越便り・薔薇マニア篇

川越の友人から薔薇見物に誘いたかったが行けないので、というメールが来ました。 プリンセス・オブ・マーガレット 【英国現女王の妹マーガレット妃に捧げられた、比較的古い薔薇です。現代主流の品種は病気に強く、あまり農薬を使わなくても育つのですが、…

ワクチン・その2

高齢者仲間やエノキさんから、ワクチン接種の情報を収集しています。腹が立つのを通り越してわらっちゃう、という話が多い。派手な柄物マスクの担当大臣は、「書類を手許に置いて、気長にやってくれ」と仰せですが、そもそも電話もネットもつながりません。…

源平盛衰記の伝本

拙稿「源平盛衰記の伝本を見直す」(「国語と国文学」6月号)が出ました。要旨は以下の通りです。掲載誌についてのお問い合わせは、明治書院03-5292-0117まで。 源平盛衰記の本文研究は、より古い、中世に遡れる本文を追究する目的と、読者にテキストとし…

よみがえる承久の乱

京都文化博物館特別展示「よみがえる承久の乱」の図録を取り寄せました。展示は4月6日~5月23日の予定でしたが、緊急事態宣言発出、延長によって休館のまま終了することになったのです。図録を見ると、個人蔵も含め多様な資料が120点以上出ていたようで、少…

信濃便り・旧暦篇

長野の友人から写真つきメールが来ました。6日のアヤメ、ではなく旧暦の行事です。 【5月2日に20匹の鯉が木々の間につるされ、泳ぎ始めました。長野は雛祭りも端午の節句も旧暦で祝うのですが、ゴールデン・ウィークに華を添えるため、早く揚げることにな…

悪口ワールド

大人数のフォロワーがいるSNSで女性研究者の悪口を言い合って露見し、所属学会が反省文を出す結果にまで至ったのは、最近の話です。私はFBもツイッターもやらないので、悪口の一部始終を読んだわけではありませんが、一口で言って、悪口依存症とでも呼ぶ精神…

韓国漢文愛情伝奇小説

日向一雅編『 韓国漢文愛情伝奇小説』(白帝社 2020)という本が出ました。明治大学大学院の輪読会が中心となって、韓国の漢文小説5編を選んで翻訳、注釈をつけています。『周生伝』『憑虚子訪花録』『崔陟伝』『相思洞記』『王郎返魂伝』を取り上げ、…

コロナな日々 14th stage

近所のスーパーが混み合い、ありふれた食材しか置かなくなったので、野菜とパンを買い出しに、播磨坂まで出かけました。桜並木は木下闇になり、花卯木が咲いています。播磨坂は、私が地方勤務だった間に高級マンションが建ち並び、街が一変しました。 スーパ…

川越便り・笹百合篇

川越の友人が鉢の笹百合が咲いた、と写真を送ってきました。通常の百合は花が咲くまでに3年かかりますが、笹百合は7年もかかるのだそうです。奈良の狭井神社の大祭には、山から採ってきたこの花を酒樽の周囲に飾りつけて神前に奉納するので有名です。 笹百…

今昔物語集攷

川上知里さんの『今昔物語集攷ー生成・構造と史的圏域』(花鳥社)を読みました。2011年以来の論考に新稿3本を加えた全410頁、いずれも力作です。第1部『今昔物語集』の世界 と周辺の説話集を論じる第2部『今昔物語集』の史的圏域 とに分かれ、第…

源平の人々に出会う旅 第52回「鎌倉・鎌倉幕府」

『平家物語』諸本は、「灌頂巻」で終わるものと、六代斬られ(断絶平家)で終わるものとに大きく分けられますが、延慶本はさらに頼朝讃辞を付け加えて終わります。 【源頼朝像(源氏山公園)】 文治5年(1189年)、奥州藤原氏を滅ぼした頼朝は、軍事面での全…

鴨東通信112

「鴨東通信」112号(思文閣出版)を読みました。いつものようにほどよい長さの、品のいい文章が載った宣伝誌ですが、今回まず読んだのは、北村紗衣さんの「儚いもののアーカイブ化」。北村さんは最近、思いがけないことで「時の人」になりましたが、いい…

花便り・山野草篇

山野草マニアの友人から、車で赤城自然園へ行ってきた、とのメールが来ました。 赤城自然園 【シラネアオイの群生を見に行ってきました。シラネアオイは春の山野草の女王とも呼ばれる美しい花です。かつては北関東のどこにでも普通に咲いていたそうですが、…

読み直す憲法21

そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一…

新出平家物語断簡

6月18日まで慶応大学三田キャンパスの東別館で開催されている展示「文字景ーセンチュリー赤尾コレクションの名品にみる文(ふみ)と象(かたち)」に、伝世尊寺行俊筆の断簡が4葉、出陳されています。そのうちの3葉はいわゆる「長門切」と呼ばれる読み…