2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

唱導文学研究12

福田晃・中前正志編『唱導文学研究』第12集(三弥井書店 2019)を頂きました。論考8篇、『神道雑々集』の注釈1篇、資料紹介2篇を詰め込んだ1冊です。それぞれに重量感のあるものですが、私はその中でも、児島啓裕「堅牢地神説の展開ー降魔成道譚を…

信濃便り・薔薇の家篇

「もしも私が家を建てたなら」、という歌が流行ったことがありました。その家であの人と一緒に暮らしたい、というのが主旨なのですが、庭に植えたい花が「真赤なバラと白いパンジー」と続くので、私は小馬鹿にしました。あまりに陳腐だから。 兼好法師も庭に…

コロナの街・part4

晴れ上がった金曜日。1駅地下鉄に乗って、大手スーパーへ出かけることにしました。出がけに窓を閉めていたら、轟音と共に白い航跡を引いて戦闘機が上空を横切りました。今日、ブルーインパルスが東京上空を飛ぶことは知っていたのですが、てっきり東京五輪…

後嵯峨院時代

木村尚志さんの「後嵯峨院時代の和歌」(https://kachosha.com/gunki2020052701/ 花鳥社HP)を読みました。後嵯峨院の時代(在位仁治3年1242ー没年文永9年1272)は政治の実権は武家に移りつつも一旦の平和が訪れ、宮廷を初めとする文化サロンでは、『風葉…

マスクの話

銀行の広報誌(非売品)に大西一成さんの「命と健康を守るマスクの話ーマスクは意味がない?マスク問題に思う」という一問一答が載っていました。3回連載の第1回目。大西さんは聖路加国際大学の准教授で、公衆衛生学が専門。『マスクの品格』(幻冬舎)とい…

新しい?

「新しい生活様式」という語には、拒否反応があります、殊に政府から言われるのは。公共放送のアナウンサーたちが、この語を使って燥ぐのを見ると腹が立つ。「新しい日常」の方が未だまし、new normalという言い方もそれなりに理解できます。要は、生活を維…

賀茂別雷神社所蔵法華経

相田愛子さんの「賀茂別雷神社所蔵「紺紙金字法華経并開結」について」(「アート・リサーチ」20)という論文を読みました。相田さんは仏教、美術、文学の交叉する平安末期から中世前期の絵画資料、殊に装飾経の研究をしています。この論文では標題の経典全1…

食いしんぼ

コロナの街は、天気が好いと老若のカップル(若い組にはマスクなしが増えた)や子供連れで一杯になる(自転車やキックスケーターを交えた家族連れで歩くのは、やめて欲しい。自分たちの集団内で動作を合わせるのに精一杯になってしまって、路上でどれだけ自…

コロナな日々 4th stage

ずっともやもやしていることがありますー休業要請と補償はワンセットだ、という主張についてです。必要に迫られていることは理解できますが、コロナ対策=政府の要請→収入補償という図式ですべてを捉えるのは、正しいでしょうか。 新型ウィルスの流行そのも…

梅雨入り前に

沖縄はもう梅雨入りしたそうで、東京も小糠雨が続きます。我が家では、今年はペチュニアとロベリアが咲いています。冬はビオラを、夏は日々草を植えることにしているのですが、その合間には、年によって入手できる苗が違うので、いわば浮気の楽しみ。長く咲…

特別な1年

秋山佐和子さんの第八歌集『豊旗雲』(砂子書房)を読みました。秋山さんは國學院大學の卒業生、岡野弘彦門下の歌人です。近代女性作家の評伝なども出し、歌誌「玉ゆら」の主宰者でもあります。本書は2013年晩秋、40年以上連れ添った夫から末期癌であ…

緑の葡萄

行きつけのスーパーがどうやら青物を仕入れすぎたらしく、安いな、と思って買ってくると傷んでいたりします。甘唐辛子3本入りのトレイを買ったら(焼いて鰹節醤油をかけると美味しい)、1本腐っていました(そう言えば暗がりに置いてあった)。枇杷も6個…

疫病退散

京都の祇園祭も、博多の祇園山笠も中止になりました。祇園社はもともと疫病退散のための社です。本来なら、今年こそ盛大に行われるべきでしたが、仕方がありません。 上代文学専門の荻原千鶴さんが、「桜蔭会会報」(お茶の水女子大学同窓会の機関紙)復刊2…

信濃便り・揚羽篇

最近、ネット上で「あつ森」という語をよく見かけますが、てっきり一ノ谷で直実に討たれた平敦盛のことだと思っていました(当然でしょ?)。じつは「あつまれどうぶつの森」というサイトの略語だそうです。初夏になっていくこの季節、植物だけでなく小動物…

缶つま

買い物の回数を減らせ、とのことなので、保存食を点検しました。私たちの世代は未だ、乾物を少しずつ揃えておくのが習慣になっている時代に、主婦になったのです。例えば海苔、干し椎茸、だし昆布、とろろ昆布、削り節、麩、素麺、栃木名産の湯葉と干瓢。ド…

無いもの自慢

フリーランスになって研究を続行している定年退職者同志に共通の話題は、健康問題のほかに、必要な資料をどこで見るか、です。日本史の錦織さん(現在は京都在住)と、鳥取大学の同僚だった時代(30年前)の苦労話をメールでやりとりしました。鳥取は今で…

友人が、コロナ下での買い物を心配して野菜を送ってくれた中に、蕗の束がありました。子供の頃、モヤシの足切りやサヤエンドウの筋取り、蕗の茎剥きは私の役目でした。月に何回かある「お命日」は、祖母が精進料理を作る慣わしでしたが、そういう日はよく蕗…

白い蒲公英

中西達治さんから、白と黄色の蒲公英が咲き乱れる写真の葉書が来ました。蕪村の「北寿老仙をいたむ」「春風馬堤曲」を引いて、シロバナタンポポは子供の頃からあったが、繁殖力の強い外来種の黄花に逐われがちだった、今年になってようやく、在来種のカンサ…

鎌倉期の侍と凡下

錦織勤さんの「鎌倉期の侍と凡下」(「鎌倉遺文研究」45号)を読みました。錦織さんは定年後、鳥取から京都へ移住、その際、近隣の大学や図書館の蔵書を調べ、雑誌の欠号を寄贈して、自分の蔵書は整理してから引っ越したという、用意のいい人です。掲載誌…

ハモンドオルガン

古関裕而という名前とハモンドオルガンとは、記憶の中で堅く結びついています。子供の頃(70年前です)、夕方6時、ハモンドオルガンが軽快に奏でるテーマ音楽に載せて、菊田一夫作・古関祐而音楽というコンビで放送された、連続ラジオドラマがありました…

描かれた語り物

小林健二編『絵解く 戦国の芸能と絵画ー描かれた語り物の世界』(三弥井書店)という本が出ました。編者の小林さんが2017~19年度に主宰した、科研費による共同研究「語り物を題材とした絵巻・絵本の国際的調査研究」の成果報告書を兼ねた本です。幸若…

信濃便り・母の日篇

長野の友人から、お母さんの四十九日法要と納骨を済ませたとのメールが来ました。曾孫も含めて一族でお参りした後、マスク姿で集合写真を撮り、お供えした柏餅(長野の節句は旧暦)を分け合って食べたとのことです。 長野はいま新緑の中。玄関先の小庭には苧…

東洋史の定年後

この春、定年になった東洋史の平勢隆郎さんから、近況報告のメールが来ました。 [運動不足なので、食事の量を減らしました。この2年ほど、論文や資料をPDFにする整理が追いつかなかったのですが、その作業に手を出しました。複製も作っていて、整理ファ…

コロナの街・part3

差出人厚労省医政局経済課のマスク2枚が、昨日、我が家のポストに投函されました。いわゆるアベノマスクです。ヘルパーさんたちは、薄いガーゼなのでほぐして手作りマスクに重ねて使うそうです。一時は手に入らなかった紙類の衛生用品はもう、店頭に山積み…

大学院1年

大学院へ入学したのは1968年春でした。会社勤めを断念して入ったので、退路はないと思っていました。平家物語を研究するには仏教、歴史、漢文学も必要だと考えて、他専攻の授業にも潜り込みました。辻善之助の日本仏教史、紅顔の助教授だった石井進の中…

南北朝期の元号

君嶋亜紀さん「南北朝期の勅撰集と元号」(「文学・語学」227号)と「『新古今集』春部の柳歌ー崇徳院「いなむしろ」詠の周辺ー」(「大妻国文」51号)を読みました。前者は、南北両朝が、それぞれ自らの正統性を示すべく元号を制定した時代の勅撰集及…

不登校

生涯で学校に行かなかった時期が2度、あります。1度は大学院修士課程。大学紛争のおかげで授業はおろか、研究室も図書館も封鎖、ちょうど現在のような状態でした。その話は別に書くとして、もう1度は小学校時代。入学年齢の前年の秋、脊椎カリエスで絶対…

源平の人々に出会う旅 第40回「那須・扇の的」

元暦2年(1185)2月、義経は少数の兵で阿波国勝浦に上陸し、讃岐国屋島にある平家の館を襲撃します。海上へ逃れた平家との、陸と海との戦いとなり、源氏方の佐藤嗣信が能登守教経に射殺されてしまいます。 【那須温泉神社】 日が傾くと、平家船が陸に近づき…

読み直す憲法2020

そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法はかかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切…

以前と以後

コロナで振り回されているのに悲鳴をあまり上げていない、いや上げる暇も無いのが教育現場でしょう。高等教育(大学)、中高、小学校ではそれぞれ事情が違うでしょうが、特に大学ではコロナ以前、以後では授業のあり方そのものが変わってしまうのではないで…