2019-01-01から1ヶ月間の記事一覧

知的伝統

朝日賞受賞の弁に、ローマ法研究者の木庭顕氏がこう書いています―時代に流されないことは簡単ではないが、重要です。その時こそ、古典の力が安定的です。 古典が役に立つとか、必要だとかではなく、「古典の力が安定的だ」という言い方に、信頼の念を抱きま…

神皇正統記

花鳥社の公式サイトに、軍記物語講座スタートの企画会議の一部がアップされました。小秋元段・北村昌幸・和田琢磨という、中堅・気鋭の太平記研究者と意見交換しながら企画が作られていく過程の、ごく一部が紹介されています。https://kachosha.com/gunki201…

珈琲が呼ぶ

片岡義男『珈琲が呼ぶ』(光文社 2018)を読みました。本屋で探したが入手出来なかったとぼやいたら、アメリカ文学専門の友人が取り寄せて貸してくれたのです。送り状には「片岡は父親が日系2世であり、自身も幼少時にハワイで数年暮らしたことがあるた…

人面花

朝、南向きの硝子戸を開けたら、街の音がざわざわと押し寄せてくる。一瞬、何かあったのだろうかと思いましたが、今日は南風で、音が吹き寄せられてきているのでした。昨日の風の冷たさとは変わって、春が近いような錯覚を起こしましたが、勿論未だ未だです…

相撲医

初場所がやっと終わりました。横綱が1人引退し、2横綱が休場、ふがいない場所のようでしたが、こうでもないと若手が頭を出せなくなったと思えば、それなりの楽しみ方も見えてきます。しかし、全く素人の私が観ていても、突き押し相撲ばかりで、負け方にも…

会津八一

村尾誠一さんの『会津八一』(笠間書院 コレクション日本歌人選68)という本が出ました。このシリーズは、各冊120頁前後のコンパクトな本で、1人の歌人の詠50首を取り上げ、1首ずつ見開き2頁で解説するという形式を採っています。通勤や旅行に携行…

大人のおやつ

林檎とドライプルーンを、赤ワインで煮込んでみました。いつもは、林檎をバターとレモンで煮るのですが、グルメ作家が紅玉を砂糖と赤ワインで煮る話を書いていたので、安い赤ワインを買ってきました。添加剤なしのペットボトル入りです。林檎は富士だし、ワ…

武者の世の始まり

坂井孝一さんの『承久の乱』(中公新書 2018)を読みました。分かりやすく、すいすい読める本です。中高の日本史で習ったことと、軍記物語に関わることで断片的に身についた知識とがつながって、おぼろけながら13世紀初頭が見えてきました。著者自身が…

たたみいわし

湘南地方で育ったので、たたみいわしは誰でも知っているものだと思い込んでいました。最近は店頭で見かけることがあまりありませんが、子供の頃はもっと大きくて(B5くらい?1枚を家族で分けました)、今よりずっと安かったと思います。朝食や弁当のおか…

贈る言葉

成人式や卒業式の季節には、大人から新人に贈る言葉があちこちで見聞きされます。学部を出る時に唯一耳に残ったのは、国語学の市川孝先生の謝恩会でのスピーチ。「社会に出ると、事ごとに対立する相手に出会うことがある。その時は、あの人が私を嫌うはずが…

風葉和歌集

三角洋一・高木和子著『物語二百番歌合/風葉和歌集』(和歌文学大系50 明治書院)が出ました。故三角洋一さんの遺稿を高木さんが補充し、分かりやすくまとめた解説が付されています。月報には三角美冬さんが「夫を送って」という追悼文を書いていて、最も…

扇の国

人から勧められて、六本木のサントリー美術館「扇の国、日本」展を観てきました。暖かい土曜の午後で、街には幸せそうな人々が三々五々、出歩いていました。この美術館が移転してから初めて入るので、きょろきょろしながらチケットを買い、上下階に亘る展示…

美容師の正月

近所の美容院へ調髪に行きました。いつ行っても待たされることのない、つまり客数の少ない美容院で、主は若く見えるが60代になったばかりの、地元出身の美容師です。妻子は近所で妻の親と同居し、自分は母親の店を継いだらしい。家事一切をこなし、買い物…

ながらとストロー

子供の頃、ストローは本物の麦藁を綺麗に切り揃えたものでした。勿論、商品です。束で買うのですが、保存に留意しないと中に黴が生える。使う時は、必ず中空部分を覗いてから吸いました。その後防水処理をした紙製になり、プラスチック製になりましたが、子…

明日へ翔ぶ5

論集『明日へ翔ぶー人文社会学の新視点ー』第5巻刊行の準備が始まりました。今回の論集に執筆できるのは、基金から奨学金を受け、原則として2017~19年3月に修了した方々と2020年3月に修了見込みの博士課程の方々を中心に、31名です。該当者…

小正月

小正月の会をしました。まずは軍記物語講座第1巻の付録作りの打ち合わせ、次いで源平盛衰記の古活字版と整版本の間をどう究明していくかの打ち合わせをやってから、よもやまの話と共に酒肴を準備しました。 酒は新潟から届いた「おりがらみ生原酒高千代」と…

コミュ力

昨年末からずっと、迷っていたことを書いてしまいます。手短かに書くことが難しいし、ゆかいなことでもないし、でもやっぱり見逃せない。 女性を医学部入試で差別した言訳ー女性の方がコミュ力が高いから。尤もらしい言い方をしたつもりでしょうが、つまり、…

分を知るカップ

東京は終日、寒くて暗くて湿っぽい1日でした。午前中に初雪が舞った、との報道もありました。30年前、鳥取で暮らしたアパートにはエアコンがなく(ガスストーブでしのいだ)、結構すきま風も入ってきて、冬は寒くてつらく感じました。 当時仲の良かった日…

写真を撮る

行きつけのクリーニング屋に行ったら、新年らしく富士山の写真が何枚も飾ってありました。主の趣味が写真撮影なのです。なかなかいい写真もあり、黙って帰るわけにはいかないので、水を向けたところ、いつもはクールな商売人なのですが、忽ち早口になり、ダ…

おやつ

小学校低学年までは、お八つを貰いました。梅干しを竹の皮に包んだもの(三角に折った竹の皮の隙間からちゅうちゅう吸うのです)のこともあり、夏は作りすぎたトマトのざく切りとぶっかき氷がどんぶり一杯、ということもありました。高学年になってからは、…

平家物語作者とは

松田浩・上原作和・佐谷真木人・佐伯孝弘編 『古典文学の常識を疑うⅡー縦・横・斜めから書きかえる文学史』 勉誠出版 (A5判 2019/9 ¥2800+税) 第三部 中世文学 京極派和歌の独自性(阿尾あすか)・平家物語の典拠としての早歌(岡田三津子)…

サブカルの本説

『ジーヴズの事件簿』(文春文庫 2011)を読みました。P.G.ウッドハウス作、岩永正勝・小山太一編訳の「才知縦横の巻」「大胆不敵の巻」の2冊です。リタイア後の楽しみとして挙げられる、やや古めのエンタメ小説って、どんなものだろうという興味から求…

太平記三本対照表

軍記物語講座第3巻『平和の世は来るかー太平記』の付録として、三本記事対照表を載せる計画を立て、その打ち合わせに出かけました。厖大な記事量を擁し、しかも諸本の関係や、通読しやすいテキストについて十分知られているとは言い難い太平記の場合、こう…

源平の人々に出会う旅 第24回「倉敷市・水島合戦」

寿永2年(1183)閏10月1日、屋島にいた平家が京ヘ進撃すると聞いた義仲は、海野幸親と矢田義清を派遣し、両軍が備中水島で激突します。 【玉島港】 現在、この付近は凹凸の多い地形ですが、当時は大小の島が浮かぶ海面でした(近世以降、干拓が行われてきまし…

国際家族

3通目の電子年賀状は、合衆国のマサチューセッツから届きました。 鳥取で教えたゼミの卒業生です。着任1年目のゼミ生は、私の顔も知らずに(所属ゼミは前年度末に決めなければならないので)入ってきた、個性の強い女子学生たちでしたが、その中の1人でし…

実生の苺

この冬は初めに暖かい日が続いたせいか、我が家のベランダは暦が微妙にずれています。最後の薔薇の花はリルケの命日(12月29日)に間に合わず、今ごろようやく色づいてきました。菊の葉はきれいに紅葉せず、日々草が貧弱ながら未だ咲いています。順調な…

マンガで?マンガに?

鈴木啓子さん監修『マンガで楽しむ名作 日本の文学』(ナツメ社 2018)という本が出ました。坪内逍遙から坂口安吾まで45人の近代作家を取り上げ、その作品を選んで要約をマンガと解説で示し、作家図鑑や略年表、文芸思潮相関図などをも収録した、欲張…

電子年賀状

元旦に2通の電子年賀状を貰いました。1通は能が専門の山中玲子さんから、アニメ風の少年が豚(猪?)に跨がり、菊の花束を捧げている図柄。菊慈童に見立てて、お互い長生きしようね、とのメッセージだと読みました。 もう1通は、国際結婚して正月は英国で…

年賀2019

あけましておめでとうございます。 定年後2、3年間は「老人」になる努力をしましたが、昨春から後期高齢者になり、体力的にも外観もまさしく老人になりました。しかし仕事の上では、芸能史研究会や和歌文学会で講演したり、源平盛衰記の書誌調査に行ったり…