2018-04-01から1ヶ月間の記事一覧

是歳是月

この4月で後期高齢者の区分に入りました。高齢者のグループ分けには意味が無い、と思っていたのですが、何だかフレイル(老年学で使う老衰の物指し。9段階ある)が進んだ気がします。「目覚まし時計に起こされない生活」が定年後の憧れだったので、つい朝…

摘み草

昭和天皇の誕生日だった祭日を、「みどりの日」と命名したのは名案でした。さきの大戦で国中禿げ山になり、植樹を奨励して歩いた天皇の記念としても相応しいが、この季節の喜びを最もよく表現しているからです。今の時季は、路傍で何を摘んでも見惚れるほど…

73年目の終戦

4月28日はサンフランシスコ講和条約の発効日です。その日、私は9歳でしたが、寝たきりの病人だったので、毎日、新聞を読む習慣があり、いっぱし「今日は日本が独り立ちする日だね」と父親に言いました。喜ばせる心算だったのですが、父は変な顔をして何…

アテネ・フランセ

高校から学部1年まで、お茶の水にあるアテネ・フランセの英会話に通いました。当時は小石川林町に住んでいたので、都立工芸高校前でバスを降り、水道橋から坂を登りました。神田川をゆっくりと清掃船が流れ、柳が芽を吹いて、静かで楽しい通学路でした。ク…

銀閣寺の牡丹

定時制高校に勤めていた四十数年前、京都の短大へ週1回、一般教養の講義をしに通いました。第1回の講義が終わって近くの寺の境内を通り抜けると、爽やかな晴天に、裸の幼稚園児が走り回っていました(その頃、裸保育が流行していたのです)。ふと、このま…

人事力

30代で初めて横浜に中古マンションを買いました。鹿島建設が造った、440世帯のマンションです。管理組合(自治会)の理事も40名、殆どが女性(オバサン世代)でした。入居の翌年、理事の番が回ってきたのですが、うっかり引き継ぎ会に出るのを忘れま…

自分の名前

三十数年前の教え子から手紙を貰いました。ずっと海外勤務だった夫も本社勤務になり、子供が中学へ入ったので、パートで公立小学校の特別支援員を始めたそうです。衝動性・多動性障害がある子供たちを見守る仕事らしく、「子羊ちゃんたちを追いかけ、連れ帰…

南方熊楠と猫

伊藤慎吾・杉山和也・志村真幸・岸本昌也編『熊楠と猫』(株式会社共和国)という本が出ました。伝説の博物学者南方熊楠と猫との関係を、彼の絵、俳句、書簡、そして再発見された論考をもとに綴る、コンパクトな本です。 私が南方熊楠について知っているのは…

書陵部新収『古筆手鑑』

田代圭一さんの「〈資料紹介〉宮内庁書陵部所蔵『古筆手鑑』(新収本)」(「書陵部紀要」69号)を読みました。平成19年2月に、『思文閣古書資料目録』に出た『古筆手鑑』が書陵部の所蔵になり、このほど調査が一通り済んだので、書誌や伝来、内容など…

朝比奈という勇将

岩城賢太郎さんの「「朝比奈」という勇将―狂言〈朝比奈〉のシテ造型と近世期への展開―」(「武蔵野大学能楽資料センター紀要」29号)を読みました。狂言「朝比奈」から出発して、剛勇大力の朝比奈三郎義秀像が、ほぼ実像と見られる『吾妻鏡』記事の諸要素…

新緑の街

眼科の定期検診に出かけました。2時間半ほどで検査も診察も済み、何もわるくなっていないとのことでしたが、眼に光り物が出るのは血流のせいだと言われ、新しい心配が増えました。眼科の隣りは耳鼻科ですが、往きのEVで小さな男の子と出会い、人なつこいの…

能書の説話

磯水絵さんから頂戴した「能書の説話―諸道の説話研究に向けて―」(「二松学舎大学大学院紀要」32号)、「院の北面―西行と長明―」(「西行学」8号 2017/8)、「教科書に載る説話―『宇治拾遺物語』「袴垂、保昌に合ふ事」について―」(「二松学舎大学…

遊女往生

栃木孝惟さんの「遊女往生―『平家物語』「祇王」の章段を読む―」(「清泉文苑」33~35)が完結しました。2015年度清泉女子大学の生涯学習講座清泉ラファエラ・アカデミアで講じられた、栃木孝惟さんの最終講義を書き下ろしたものです。覚一本平家物…

喫茶店今昔・その4

鳥取に赴任した時、最初に感激したのはロマンチックな喫茶店があちこちにあることでした。土地が広く、木造一戸建ての店が多かったせいでしょう。海岸の国道沿いに建っていた真っ白な洋館、中には大きな船具が飾ってありました。絵本の中のお城のような(都…

新入社員だった頃・進路変更篇

民間TVが開局した当初は、映画会社・新聞社・ラジオ局、それに銀行などの寄り合い所帯で、新聞と放送は系列関係がありました(現在でもあります)。斯界の生え抜きは未だおらず、四大卒女性正社員の初採用だった私には、アルバイトと同じ仕事しか与えられま…

桃巌寺

名古屋へ赴任した時、アパートがなかなか見つからず、地下鉄の駅の真上にある1DKを借りました。世田谷区の我が家まで、殆ど傘なしで往復できるのはメリットでしたが、ドアを開ければすべて丸見え、という間取りでした。 夜な夜な隣のカラオケビルから換気扇…

中世写経料紙の調達

相田愛子さんの「中世写経料紙の調達と漉返紙利用に関する一試論」(「アート・リサーチ」18号)という論文を読みました。 11世紀半ば頃、官製和紙の紙屋紙は漉返紙に替わり、朝廷で使用される紙も諸国産の和紙に替わって、それらは市場で売買されること…

シェフとソムリエ

宮古島のフレンチシェフが、今度はソムリエの妻を連れてやって来ました。その昔、ワーキングホリデーで出会って、追いかけて一緒になった、という恋女房です。昼はバーガー店で、夜はイタリアンレストランで食事をしました。いつも混んでいるバーガー店です…

戦国武将と能楽

原田香織さんの『戦国武将と能楽』(新典社新書)という本が出ました。活字が大きく、読みやすい。家康を中心とした戦国武将と能楽にまつわる逸話が、次々に出てくるので、読者は多いと思います。 私はちょうど芸能史の勉強をしているところで、『新猿楽記』…

新入社員だった頃・カクテル篇

東京五輪の翌年、物価は上がり、カラーテレビも普及し始め、何となく街は希望に満ちていた春、同期入社で誘い合わせて六本木で呑んだことがありました。四大卒女子はこの年初めての採用でしたが、男子はマスコミ界に進出している大学の卒業生が多くて、酒に…

小宰相身投

原田敦史さんの「小宰相身投考」(「共立女子大学文芸学部紀要」64)を読みました。原田さんはこのところ、平家物語諸本の記事を読み比べ、綿密な読みによってそれぞれの意図と方法の違いを照らし出していく論文を積み重ねていますが、今回は一ノ谷で通盛…

平家語りのシンポジウム

6月10日のシンポジウム「<平家語り>の展開と継承」(本ブログお知らせ欄参照)の打ち合わせ会に出かけました。果たして話は噛み合うだろうか?不安に駆られながら、八重桜満開の田町駅前のビルに入りました。街はあかるく賑わっています。 講師の1人鈴…

共同研究

科研費が通ったので、新たに共同研究を始めるから、という相談を受けました。久しぶりに会ったので、互いにあれこれ雑談も弾みました。科研の方は、申請したテーマが大きいので、3本の柱を立て、年ごとに優先順位を決めて実施してはどうかとアドバイスしま…

女系家族

明日喜寿になる、という母方の従姉と待ち合わせて、87歳になる従姉を老人ホームに訪ねました。今年は桜が早かったので、庭はもう葉桜になり、みずきの白い花と紅い石楠花がきれいでした。 昼食をはさんで5時間、あれやこれやのお喋りをしました。3人とも…

新入社員だった頃・アジア勉学篇

TV局に入社後、国文科卒業は売りにならない、何かジャーナリスティックな専門を持たなければ、と悟りました。 学生時代に東南アジアを訪問したことがあり、4年次にマラヤ年代記や東南アジア史の講義を受けたりもしていたので、東南アジア問題に詳しくなろう…

新入社員だった頃

学部を出てすぐTV局に勤めました。首都高環状線建設中の時代です。四大卒女子は就職口がない頃で、その会社も初めて正社員で採った、ということでした。朝はちょっと早めに出勤して全員の机を拭き、お茶を出し、昼には女性だけが交替で留守番をすることにな…

春を食べる

今年の春は駆け足です。近所のスーパーに、すこし大きくなりすぎた蕗の薹が出ていました。揚げ物はしないのですが、何かと合わせて炒めたらいいかもしれない、と買った後で、それは酒肴だと気がつきました。どうも未だ節酒の目になりきれず、つい肴向きの食…

源平の人々に出会う旅 第15回「長野市・横田河原合戦」

『平家物語』において、木曽義仲の活躍が最初に描写される合戦は横田河原合戦です。『平家物語』には、諸本間で大きな異同があったり、史実とは異なる日時に設定されるエピソードがありますが、横田河原合戦もそのうちの一つです。 【横田城址】 平家方の越…

笹の雪

友人の三回忌が近いので、誘い合わせて護国寺へお墓参りに出かけました。同窓の5人、年齢幅20歳。境内では、いろいろな種類の枝垂桜や八重桜が見事でした。 お参りした後、夕食までには時間があるので、バスで不忍池まで行き、池端をぶらぶらしました。大…