2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

大和便り・かき氷篇

天気予報が中りません。明日までは暑いが、と言う予報に、もう1日頑張れば、もう1日、と引きずられて暮らしています。奈良の高木浩明さんから写メールが来ました。 黄粉黒蜜こおり 【自宅近くの閑静な住宅地の中で、あんこ屋の主人が営む甘味屋のかき氷で…

アイスランド便り・娘の留学篇

あんまり暑いので、安宅正子さんからのアイスランド風景をもう少し紹介します。 氷河が氷も含めて流れ出しているヴァトナヨークトル 【 シンクヴェトリル国立公園、 ゲイシール間欠泉 、グトルフォス滝にも久しぶりに行きました。グトルフォスも氷河の水の川…

回想的長門本平家物語研究史(3)

昭和45年(1970)夏、突然金井清光さんから「鳥取大学教育学部研究報告」の抜刷が送られてきました。私は当時、大学院の修士課程3年目(入学直後に東大紛争が始まり、授業も図書館もずっと異常な状態で、もう後のない3年目でした)で修論の構想に苦しん…

豊後便り・千日紅篇

別府暮らしの友人から写メールが来ました。 【九州では唯一大分県だけが「蔓延防止重点措置」の対象になりませんが、感染者が急拡大していることに違いはありません。県独自の対策として大分駅前では、毎日、予約なしに抗原検査を受けられ、陽性者はあらため…

救急サイレン

昭和37年(1962)5月3日、当時高校生で小石川に住んでいた私は、深夜から未明まで、遠くで絶え間なく救急車のサイレンが行き交うのを聞きました。常磐線で三重衝突のため死者160,負傷者296人を出した三河島事故です。今でも救急車のサイレンを聞…

大政奉還後の延岡藩

古林直基さんの「大政奉還後における延岡藩の政治行動―「公議」意識と「條理」の観点を中心として―」(「明治維新研究」19号)という論文を読みました。研究ノートという欄に載っていますが、分量も内容も、他雑誌ならば論文として扱われるものでしょう。…

新時代と付き合う日

長野の友人から、ミナト君とそのお姉ちゃん(小学6年生。仮にサキちゃんとしておきましょう)と過ごした1日についてメールが来ました。友人は彼らの祖母の姉に当たります(何と呼ばれているのかな)。ミナト君はもう特別支援学校3年生です。 【サキは、前…

回想的長門本平家物語研究史(2)

現在の研究地点から長門本を見る人は、延慶本との兄弟関係がまず視野に入るようですが、長門本は延慶本よりもはやく(近世から)、壇ノ浦の阿弥陀寺にある平家物語として注目されていました。しかしそれ以前については、殆ど何も手がかりがありません。 成立…

阿波国便り・帰化植物篇

大雨を心配していた徳島から、原水民樹さんの写メールが来ました。 紫蘇畑 【ほぼ2週間ぶりに日の光を見たので、散歩に出かけました。オリ・パラ、高校野球と浮かれている間に恐れていた事態になり、徳島でも感染者がぐんと増えました。】 水害は無事だった…

回想的長門本平家物語研究史(1)

昭和41年(1966)、平家物語研究では富倉徳次郎、高橋貞一、佐々木八郎、渥美かをる氏らが大家で、歴史社会学派の石母田正、永積安明、むしゃこうじみのる氏らが新鮮な論陣を張っていた時代です。説話文学と軍記物語は、中世のイメージを一新し、文芸の誕…

夏から秋へ

長野の友人に豪雨見舞を出したら、夏から秋へ移る時季の写真が来ました。 グラマトフィラム 【県内では南信や中信が被災し、終日公共交通機関はほとんど不通となりました。上高地へ通じる道路に架かる橋の橋脚1本が沈んだだめ、橋の一部が傾き、いつ復旧する…

数字と言葉の復讐

眼前にある事象が複雑怪奇に縺れすぎている時、どうほぐして、検証・分析可能な課題に組み直すか、それが分野を問わず研究者に求められる能力と習慣でしょうが、いまの事態はあまりにも酷すぎる―昨日今日、政府のコロナ対応を見ながら、簡潔に問題点を書くこ…

この8月

今年の8月は、例年よりも「さきの大戦」を想うことが多かった気がします。それは父母・祖父母の世代の暗く沈んだ、複雑な表情よりももっと生々しく、灼けた鉄の匂いや蒸れた傷口の匂いのする、まがまがしさに近いものでした。香港、ミャンマー、そしてアフ…

女の現場・介護保険篇

アラ還の女性たちが直面するのが親の介護です。先週のゼミ会で出たのは、親たちは施設には入りたがらない、結局は娘に負担がかかる、という話題でした。兄弟がいても男は指示を出す側、実行するのは女、それがごく自然の態勢になってしまう、せめて「有難う…

王に勝る果報

原田敦史さんの論文「慈光寺本『承久記』の一側面」(「国語と国文学」9月号)を読みました。承久の乱を扱った『承久記』には流布本のほかに慈光寺本という異本があり、こちらが古態本とされています(新日本古典文学大系所収)が、諸本群を擁するのが通例…

アイスランド便り・サガ篇

安宅正子さんから、夫の親戚を訪ねてアイスランドを1周中、との第2信が来ました。 シングヴェトリル国立公園 【レイキャビクを離れるとどこに行っても大自然です。山には木が無いので、山肌に雲の影が映って、山の色が1日のうちに変化するのも面白いです。…

家ごとの「さきの大戦」・甘味篇

九段育ちの母と結婚した博多育ちの父は、商工省に勤めてから召集令状(いわゆる赤紙)を受け、郷里で入隊、新兵の訓練を受けました。母と祖母は、面会日にはおはぎかおにぎりを作って重箱に詰め、隊を訪れました。潔癖性だった父のためにおしぼりなども用意…

島原の雨

昨晩は東京でも大雨、伸びすぎたコリウスが雨露の重みで倒れました。九州・中国地方から中部の山国にかけて、洪水や土砂災害への警戒が頻りに呼びかけられています。 氾濫の危険が報道されている久留米は、筑後川の水べりが美しい町です。島原から熊本にかけ…

女の現場・教育支援篇

先日のゼミ会の幹事役は、我が子が卒業した後、ボランティアで小学校の支援員を始めたそうです。今は週5日、特別支援の必要な児童2名に付き添っているとのことで、1人は普通学級、もう1人は特別支援学級と普通学級の両方に所属しているが、多動性症候群…

風の電話

人から勧められて、『風の電話―大震災から6年、風の電話を通して見えること―』(風間書房 2017)を読みました。東北大震災の後、死者への思いを語りかけるための、電話線の繋がっていない電話ボックスを造り、その後も宮沢賢治の思想をよりどころに活動を続…

女の現場・アラ還篇

先日のゼミ会で出た話題の幾つかが、まさに現代日本の課題を衝いていると思うので、もう少し詳しく書いてみます。「女の」という冠詞は不本意なのですが、社会の問題はまず女の現場から溢れ始めるのが常なので、敢えてこのシリーズにはつけました。 彼女たち…

五輪変容

五輪前半が終わって、ようやく「日常」が戻ってきました。ほっとした、というのが大方の感想ではないでしょうか。「やってよかった56%」というアンケート結果は、無理矢理でも実施してよかったという意味ではなく、ともかく無事に済んでよかった、という…

氷と火の国から

米国で日本語教師をしながら「国際家族」(このブログで以前紹介した際のタイトル)と暮らす安宅正子さんからメールが来ました。鳥取赴任1年目のゼミ生でした。 【先生のブログを毎日楽しみにしています。今、夫の故郷のアイスランドに来ています。今日、シ…

ゼミ会オンライン

35年前、横浜の女子大で教えたゼミの卒業生たちが、WebExで懇親会を開きました。非常勤講師の9年目に卒論指導と今昔物語集の演習を受け持ち、若かった私はごく普通にやっている心算でしたが、彼女たちは容赦ないツッコミに衝撃を受け、そのうち「あれがだん…

神道の中世

伊藤聡さんの『神道の中世―伊勢神宮・吉田神道・中世日本紀』(中公選書 2020)を読みました。コロナのため久しく本屋に行けず、昨年立ち読みして買ってきたままツンドク状態だった1冊です。書名に並んでいるテーマは、ずっと気になりながら最新の研究成果…

許すまじ原爆を

公共放送を標榜するNHKが今年は、8月6日に恒例の特番を組まないこと、広島の平和記念式典スピーチを総理が大量に読み落としたこと(棒読みしたとしても意味が通らなかったはず。せめて広島への移動時間中に、原稿に目を通すくらいのことはしておかなかった…

死者に掛ける電話

大道晴香さんのコラム「「電話」と「死者」」(「國學院雑誌」6月号)を読みました。東日本大震災の後、死者と会話するために岩手県大槌町に設置された、つながっていない公衆電話「風の電話」のことは有名です。突然喪った死者との対話がかなり長期間続く…

源平の人々に出会う旅 第55回「神奈川県・三浦一族」

頼朝挙兵時から、頼朝に従った武士達の中に三浦一族がいます。三浦義明をはじめ、和田義盛、朝比奈三郎、石田為久など、有名な人物が数多く存在します。語り本系の『平家物語』には、ほとんど記されていませんが、読み本系諸本や『吾妻鏡』には、頼朝の挙兵…

隠れた縦糸

岩城賢太郎さんの「義仲の”命の親”実盛」(国立文楽劇場「第160回文楽公演パンフレット」 2020/10)を読みました。観劇パンフレットの解説ですから、分量も読者対象も限定されており、研究論文ではありません。岩城さんの文章は必ずしも読みやすく…

コロナな日々 19th stage

食生活に変化がなくなってきたのと、予報では最高気温が今日だけ低そうだったので、播磨坂まで食材の買い出しに出かけました。「買い出し」とは、もともと昭和20年代前半、母と祖母がもんぺ姿にリュックを背負い、農家のある地域へ出かけて南瓜などを入手…