2017-06-01から1ヶ月間の記事一覧

守宮

寝る前に北向きの窓を閉めたら網戸に妖しい影が映りました。守宮のようです。こんなコンクリート建ての環境でよく棲みついたと思いましたが、周辺には木造の古い家もあれば木立も多い所なので、不思議はありません。 改めてヤモリとイモリの違いをネットで調…

境界と女と絵巻

恋田知子さんの『異界へいざなう女―絵巻・奈良絵本をひもとく―』(平凡社)を読みました。境界を超えた異界への案内者として、また創作者、享受者、伝播者としての女性を中心に据えて、中世から近世への物語や絵巻の誕生と享受について楽しげに語った本です…

添景の花

TV番組の中に添景として出てくるフラワーアレンジメントを見るのも、けっこう楽しみです。NHKーETVの「日曜美術館」の背景には、豪華で番組内容に合った、大型の生け花が置かれています。BS4の「こころの歌」にも、センスのいい生け花が置かれま…

瑞風

豪華列車で行く旅が話題になっています。九州一周は未だしも、山陰本線一泊二日の旅には違和感を覚えました。あの辺は、路線バスや単線の列車を延々と乗り継ぐか、自転車・バイクなどで道を辿って行って初めて、土地柄のよさがわかるルートではないでしょう…

茶漬

ベーコンのお茶漬というものがあります。未だ働き盛りだった父が料亭の朝帰りに出されて覚えてきたものを、我が家でアレンジしました。ベーコンをかりかりになるまで焼き、油を落とします(今どきのコンビニで売っているベーコンは、薄くて油が少ないのでか…

國語國文特輯号

雑誌「國語國文」が3号合併で大谷雅夫さんの退職記念号を出しました(臨川書店)。全712頁、53本の論文が載っており、壮観です。これでも平成4年以降のOB全部ではないようで、まさに多士済々の京大ならでは、です。まえがき・あとがきがあっさりし…

流布本保元・平治物語

滝沢みかさんの「流布本『保元物語』『平治物語』における乱の認識と物語の改作」(「中世文学」62)を読みました。流布本保元物語は「秩序」を価値基準として「世を乱してはならない」と説き、流布本平治物語は「武士の振舞い方」を価値基準として「臣下…

清水の冠者

戸倉みづきさんの「国立国会図書館蔵『清水の冠者』攷―挿絵紙背を巡って-」(「汲古」71)を読みました。国会図書館蔵の奈良絵本「清水の冠者」中巻4オの紙背にある墨書は説経浄瑠璃「こ大ぶ」の一部であることを発見、このことから①「「こ大ぶ」の物語…

梔子の花

我が家の梔子が咲き始めました。20年前、宇都宮大学の同僚から頂いた枝6本を挿し木し、知人たちにも分けましたが、今は私の背丈より高くなり、ベランダの目隠しの高さに合わせて剪定しています。八重の純白の花が開いてゆく時は惚れ惚れします。青虫がつ…

史実と人物造型

清水由美子さんの「『保元物語』の流動―平基盛の造型をめぐってー」(「中央大学文学部紀要」 119号)を読みました。基盛は早世した清盛の次男で、語り本平家物語では殆ど抹殺された存在ですが、保元物語では、保元元年7月6日、崇徳院に参上しようとす…

版本

高木浩明さんの「本文は刊行者によって作られる―要法寺版『沙石集』を糸口にしてー」(「中世文学」62)を読みました。要法寺の日性によって版行された『沙石集』の古活字版2種を比較して、別版のように見える慶長10年版と無刊記版とが、じつは同版の匡…

桑の実

街路樹の下の植え込みになぜか1本だけ別種の木が枝を伸ばしていることがよくあります。たいていは桑の木(たまにそよごの木)です。桑畑が見かけられなくなった東京でも、鳥が落として生える種子は桑の実なのでしょうか。意外に桑の木(それも種類が何種か…

文学散歩

信濃から上京した友人姉弟に、近所の文学遺跡を御案内すると言ったのはよかったが、地元の近代文学関係の旧跡のことなど何も知りません。泥縄でイラストマップを買い、にわか勉強。地元の者は、あそこでしくじって叱られた、ここでは◯◯が手に入る、といった…

奨学基金平成29年度選考

ここ15年来関わっている(選考委員ではありませんが)奨学基金の、今年度選考が終わりました。これから採択者には在籍する大学経由で通知が行き、本人の意志を確認した上で決定します。選考では修士課程4名・博士課程6名の計10名が採択されました。こ…

見果てぬ夢

三角洋一さんの遺稿集『中世文学の達成―和漢混淆文の成立を中心に-』(若草書房)を読んでいます。殆どが講演録や講義ノートをもとにしているので分かりやすく、硬い本ではありません。しかし、壮大な課題に、背伸びせず自前の言葉で取り組んでいく、いわば…

鴨東通信101

きっと待たされるだろうと、ツンドクの山の中から抜き出した小冊子を持って銀行へ出かけました。拾い読みしているうちに視線が止まりました―「特定の理論体系に史料を〈埋め込む〉姿勢」、「あたらしい理論ないし巧妙なレトリックで古典テクスト理解に新機軸…

アメリカン・チェリー

黒っぽく熟したアメリカン・チェリーが店に出ています。一年中出回っているような感じですが、噛むとぷつっと音がしそうに果肉の充実した、旬の季節があることを知りました。子供の頃読んだ「トムおじさんの小屋」(アンクル・トムズ・ケビン)に、主人公の…

早歌

岡田三津子さん編著の『資料と注釈 早歌の継承と伝流―明空から坂阿・宗砌へ―』(三弥井書店)という本が出ました。早歌は宴曲ともいい、中世の武士たちに愛好された歌曲ですが、彼等にとっての「古典」の語句をびっしり鏤めた詞章で出来ており、その大半は1…

印度の壺

暑くなってきました。真夏にはベランダの照り返しで半身だけ日焼けします(机がベランダ側にあるので)。連日の暑さで夜になってもコンクリートが冷えなくなると、つらい。かつてインドへ行った時、素焼の壺に水を入れて売り歩く人がいました。素焼の肌から…

夢中の五感

子供の頃、夢は白黒で見る、ということが分かりませんでした。私の夢の中の世界は、通常の世界とまったく同じようだったからです。しかし「私の夢はカラーよ」と言ったら、「自慢してる!」と怒った大人がいたので、それ以来口に出せず、白黒の世界にとつぜ…

文字摺

買い物の帰りに、ビルの軒下の僅かな土に、もじずりの花が咲き始めているのを見つけました。本来、芝生など日当たりのよい平地に生える蘭科の草です。葉が芝とそっくりなので、手入れのいい庭園でも除草を免れ、季節になると、小さなピンクの噴水のようにい…

転法輪鈔

牧野淳司さんの「『転法輪鈔』解題」(「国立歴史民俗博物館研究報告」188)を読みました。国立歴史民俗博物館蔵(田中穣旧蔵)『転法輪鈔』の紹介及び「転法輪鈔」と呼ばれる資料群の中での位置づけ、著者澄憲の意識について述べています。ここ十数年に…

山椒と梅干

近所の公園で山椒の木を見つけ、小指ほどの枝を失敬しました。葉をこすると得も言われぬ芳香にうっとりさせられます。粉山椒は鰻には欠かせませんが、あの乾いた香りとは違って、もっと甘く艶めかしく、ねっとりした芳香です。食卓に飾るだけでは満足できず…

説林

伊藤伸江さんの「花園山考」(「説林」65号)という論文を読みました。説林(ぜいりん)はかつて渥美かをる先生が、その後森正人さん、黒田彰さんがよくお書きになった名門の紀要(愛知県立大学)です。伊藤さんの論文は、三河国岡崎の俳人鶴田卓池と刈谷…

梅シロップ

梅を漬けました。梅干しではなく梅シロップ(梅ジュース)とか梅酢と呼ばれている飲料です。もともと頂き物の蜂蜜2L用の空瓶が溜まったので、毎年2kgずつ漬けて近所に分けていたのですが、だんだん重い物を持てなくなり、小梅で漬けたり(ちゃんと出来…

夏仕様の表紙

ブログの表紙を夏仕様に替えました。ハワイの浜辺を描いたクレパス画で、表紙のサイズに合わせ、椰子の木が分かるよう中央部分を残してトリミングされていますが、原画はデュフィばりの速描で、点在する浜辺の人々をお見せできないのが残念です。 原画:松尾…

源平の人々に出会う旅 第6回「神戸・福原遷都」

治承4年(1184)5月30日、以仁王の乱の鎮圧直後、突如清盛は翌月3日に福原遷都を行うと公表します。まさに青天の霹靂で京都は大混乱になりますが、清盛が遷都の日を2日に繰り上げたため、ますます混乱を極めます。 【雪見御所】 清盛は以前から福原の別邸に…

空蝉の家

親の家を売りました。50年前は南西に富士山、北には年に何度か筑波山が見え、護国寺の杜では時鳥の鳴くのが聞こえ、丸ノ内線の1番電車の出て行く響きが枕につたわってくる家でした。感無量というか脱力感というか、一種の喪失感が疲労となって被さってき…

5月が終わりました。新陳代謝が変わる季節だからか、5月は寝ても寝ても眠い月です。勤めている頃は殊に、新学期のどたばたがようやく一廻りし、演習など学生の顔ぶれを見て授業内容を調整する時期でもあり、春休みに用意した講義ノートも受講者の反応によ…