スリランカより

明翔会の鈴木慎也さんが、スリランカへ4年ぶりでフィールド調査に行ってきた、というので、その報告を投稿して貰いました。

【私は2017年から古代スリランカの水利施設の調査を行っている。この8月に実施したジャングル内での遺跡探査の様子(今回のテーマは水事情)について、ご紹介したい。

 真夏にコロンボ市内のインド洋に面したゴールフェイスの広場を訪れると、大空を舞う無数の凧に目を奪われる。「凧あげ」と聞くとわれわれ日本人はお正月、つまり1月頃を思い浮かべがちだが、コロンボでは南西モンスーンが吹き込んでくるこの時期が、凧あげのベストシーズンとなる。

ゴールフェイスの夕方

このモンスーンの影響により、スリランカには乾期と雨期があり、国土の4分の3を占めるドライゾーンと呼ばれる乾燥地域(北部・東部・南東部)の年間平均降雨量は約1100㎜で、そのほとんどは雨期(10~3月)に集中している。そのため、ドライゾーンでは天水による乾期の耕作が困難であったことから、限られた水資源を有効活用するために、古代から水利システムが高度に発達してきた。スリランカではこのドライゾーンを中心に、高度に発達した水利システムを基盤とした仏教文明が興った。

 今回の調査地であるスリランカ南東部は、年間降雨量が特に少ない地域として知られており、乾季になると川の水もほとんど干上がってしまうような状況であった。

川床を行く

そのため、毎日、ベースキャンプに戻ってくると河床を掘り、そこから染み出してくる水をバケツですくい、その水を煮沸して翌日の水を準備する、といった生活を送った。幸い、キャンプの近くには、川の水が2mほど溜まっている大きな水たまりがあったので、そこで水浴びをすることができた。毎日10㎞近くジャングルの中を探査していたので、キャンプに帰ってくる頃には、汗まみれ、土まみれの状態、水たまりでの水浴びは最高に気持ちの良いものだった(ただ、水浴び中にふと我に返り、その水が日本の自宅で飼っているメダカの水槽の水と同じ匂いだと気づいた瞬間があった)。

獲れたてのテナガエビ

スリランカには自然岩丘が多数分布しており、中・小規模の岩山には名称がついていない。写真は今回の探査地域(ウバ州モナラーガラ県)の中にあった岩山のうちの1つ。岩山の上にはストゥーパ(仏塔)が築かれていることが多いため、探査前にできるだけ登って確かめる(鈴木慎也)】。

名も無き岩山からの眺望

あのテナガエビを食べたのでしょうか。考古学は体力第一の学問だと、鎌倉の遺跡発掘に携わる、若い女性考古学者から教えられたことがありますが、なるほど。