2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧

コロナな日々 9th stage

数日前、好天に誘われて、大塚駅までパンを買いに出かけました。秋薔薇を見られるかなと思ったのですが、ぽつり、ぽつりと咲いている花は、却って寂しい気がしました。野菜とパンを買って帰りのバスに乗ったら、背後の席からしきりに咳き込む声。やはり街へ…

挑発する軍記

大津雄一さんの『挑発する軍記』(勉誠出版)という本が出ました。『軍記と王権のイデオロギー』(翰林書房 2005)、『『平家物語』の再誕―創られた国民叙事詩』(NHK出版 2013)を継いで、ここ10年間の論文を集め、大津さんの主張を打ち出す1冊…

阿波国便り・棗篇

徳島の友人から、散歩途中で見かけたらしい青い毬栗や烏瓜、棗の実の写真が届きました。温かい土地でも季節は、確実に進んでいます。 棗の実 亡父はよく、歴史的局面の条件が整った、というような際に、「庭に1本棗の木」と言いました。私が怪訝な顔をする…

巨大動物

名古屋に勤めていた頃、北海道への出張から帰っての土産話に、トドの缶詰というものがあった、と言ったところ、堅物の教育学の同僚が、さぞ大きいんでしょうねえ、と訊いたので、思わず笑い出してしまいました。丸ごと入ってるわけじゃないんだから、気持ち…

國學院雑誌1362号

國學院雑誌の10月号(通算1362号)に、近世史の根岸茂夫さんが「目安箱は民衆の意見を政治に反映させたのか」というコラムを書いています。享保の改革で将軍吉宗の善政の象徴として有名な目安箱の実態を、明快に説く。 享保6年(1821)7月に出さ…

体験的電子事情・学会篇

土・日にかけて、中世文学会秋季大会がオンラインで行われました。参加申し込みはしていなかったのですが、当日参加も可、ということだったので、研究発表最後の1本と閉会の辞だけ視聴することにしました。事務局から来た通知を見ると、最初の動作は書いて…

川越便り・ダリア篇

子供の頃は、ダリアはあまり好きな花ではなかったのですが、最近は品種改良が進んだようです。NHKTVの「プロフェッショナル」という番組で、ダリアの新種開発で有名になった父子2代を取り上げたことがありました。秋田の雄和町に広大なダリア園があるらしい…

川越便り・牧水篇

川越の友人から、秩父の両神ダリア園へ行って来た、というメールが来ました。解析度の高いカメラを使っているらしくて、我が家の小さなNPCでは全景写真は受け取れませんでした。 ポンポンダリヤ かつて蔵王の麓のダリヤ園を訪ねたことがあります。背が高く、…

キャッチコピー

コロナ禁足で精神的に逼迫する毎日。朝のメールチェックのついでに、ツイッターで「今朝」と富士、花、空、猫などの検索語を組み合わせ、投稿写真を見て風穴を開けていることは前にも書きましたが、最近は「海」という語も加えました。湘南育ちなので、海を…

流用

その道の専門家たちには当たり前の知識になっているのかもしれませんが、古活字版の本文を翻刻しながら迷うのは、「活字の流用」について、どの程度の共通認識があるのだろうか、ということです。 古活字版を制作する際には、頻繁に出てくる文字は活字の数が…

季節を追いかけて

この秋は晴天が少なくて、夏物をしまうための洗濯が追いつきません。しかも秋らしい気温の日が足早に去って行く。ついこないだまで彼岸花が盛りだったのに、街へ出ると風の中に木枯の気配が感じられます。これは徳島の原水民樹さんからのメール添付写真。何…

信濃便り・通草篇

信濃の友人からメールが来ました。庭の紅葉が始まり、すでに炬燵を出したそうです。 ヤマボウシの紅葉 [近所にこぢんまりとしたギャラリーがあります。主が庭木を丹精して育てていますが、アケビの実が色づき始めました。もう少し待てば白い果肉がはっきり見…

コロナを詠む

歌誌『玉ゆら』70号を頂きました。めくりながら、少しずつコロナ下の生活詠が増えているのに気がつきました。紺野裕子さんの「コロナ禍の中で詠う」というアンソロジーも掲載されています。 医療なく村閉ざさるるペスト禍の死はつね在りてつね近きもの(笠…

説話文学研究55

説話文学会の機関誌『説話文学研究』55号が出ました。近年、説話文学研究会と仏教文学会の企画内容や発表が殆ど同じようになり、合併してもいいんじゃないか、と思うくらいでしたが、実際には説話乃至説話集に関する研究は、もっと幅広く行われていて、そ…

川越便り・杜鵑篇

川越の友人から、「蛇足」と銘打ったメールが来ました。先日、本ブログで私が、竜胆の花はないのか、杜鵑草の花には斑点がなくちゃそれらしくない、と書いたのが気になっていたらしいのです。 川越花便り・卓上篇 秋薔薇を切って硝子瓶に挿してみたとあって…

コロナな日々 8th stage

叔父の一周忌が近いので、皮膚科を開業している従妹に電話を掛けました。クリニックは完全予約制にして、消毒用アルコールを使いながら営業している、高齢者施設の訪問医療も引き受けているので、外食もしない、人と会わない、マスクとゴーグル装着で自宅と…

衝撃の万葉集伝本

田中大士さんの『衝撃の『万葉集』伝本出現―広瀬本で伝本研究はこう変わった―』(はなわ新書 美夫君志リブレ)を読みました。田中さんとは、2004~06年度科研費(C)による共同研究「汎諸本論構築のための基礎的研究―時代・ジャンル・享受を交差して―…

阿波国便り・牧水篇

徳島の原水民樹さんからメールが来ました。本ブログの牧水の歌を見て、自分はこの歌が好きだが、という内容です。 紫陽花のその水いろのかなしみの滴るゆふべ蜩(かなかな)のなく 牧水の歌には「かなし」とか「寂し」といった感情語が多く、しかしその内容…

秋草の園・完

若山牧水の「かたはらに秋ぐさの花かたるらく」という歌は有名で、小諸城趾に歌碑が建っていますが、私は若い頃、彼のこんな歌が好きでした。 吾木香すすきかるかや秋くさのさびしききはみ君におくらむ(『別離』) 杜鵑(桃源) メールの添え書きには、以下…

秋草の園・その3

川越花便りの続々篇です。沢桔梗は湿地を好む丈の高い草本。花は桔梗に似ていませんが、花弁が裂けているように見えるだけで、ミゾカクシの仲間。調べたら、ロベリアと同類だと分かって納得しました。 夏櫨と沢桔梗 背景の夏櫨の紅葉を褒めたら、鉢でも育て…

秋草の園・その2

川越の山野マニアの花便り続編です。 秋桐 この花は見た覚えがないな、と思って調べると、シソ科で、その仲間には私がサルビアの一種だと思い込んでいたものもありました。 段菊 これもあまり露地では見かけませんが、大ぶりにばさっと活ける、近代ビルの盛…

秋草の園・その1

川越の友人から9連発メールが来ました。写真添付で、「秋の庭への御招待」というタイトルがついています。豊後国の別荘に出かける前に、数日かけて秋草の花が咲く庭の草むしりをしたそうです。 [川越は都内より一足早く秋が深まったようで、朝夕は10度前…

いずみ通信45

和泉書院の宣伝誌「いずみ通信」45号が来たので、関心のあるところを読んでみました。巻頭は吉田永弘さんの「「尊敬」形式の成立」。助動詞「(ら)る」が尊敬の意を持つようになった過程を「主催」という概念を導入して考察したもの。著書『転換する日本…

信濃便り・唐辛子篇

長野の友人から、写真添付のメールが来ました。定年後の弟さんが手伝っている農園では、唐辛子の収穫がはじまったそうです。 信濃町の唐辛子 [3人で午前中いっぱい作業をして、収穫量は約20キロ。作業はまだまだ終わらない。長野市内の老舗唐辛子店に納める…

主権者のひとりから

日本学術会議会員候補者の政府による一部任命拒否に関して、「学問の自由」「言論の自由」を根拠に批判が始まったとき、一瞬、それじゃ駄目だ、と思いました。公務員の任命権を楯にしてくるだろう、という現政権の姿勢は当初から推測できたからです。おまけ…

コロナの街・part10

注文しておいた本を受け取りに、春日町まで出かけました。高額の本なので、銀行へ寄ってATMで現金を出し、用が済んで振り向こうとしたら、そのままふらーっと倒れてしまいました。周囲が吃驚して抱え起こしてくれたので、歩き出すことができましたが、自分で…

今昔物語集巻31

川上知里さんの「『今昔物語集』の仏法と王法―巻三十一「本朝付雑事」と王法仏法相依論―」(「国語と国文学」10月号)という論文を読みました。 中世には、大寺院勢力を中心とする「仏法」と、朝廷・世俗権門の権力による秩序「王法」とが助け合い、釣り合…

アメリカの夢

アメリカ文学が専門の友人から、メールが来ました。米国大統領選挙候補者討論会を実況中継で見たそうです。 「October surpriseと言うそうですが、愕き二乗でした。討論会の衝撃と、当事者の、この時期のCOVID感染。討論会は、3人(Trump, Biden, Wallace)…

源平の人々に出会う旅 第45回「修善寺・範頼最期」

平家滅亡後、義経を都へ追い返した頼朝は、今度は義経を暗殺しようとします。義経は奥州へ逃亡しますが、伯父の行家、義憲と次々に親族を排除していきます。もう一人の弟範頼も例外ではありませんでした。蒲冠者範頼は、蒲御厨(静岡県)出身とされ、『平家…

自転車

昭和24年の初秋、私の一家は湘南海岸で暮らしていました。未だ戦争の跡がそこここにあって、東京は住宅難、母方の実家が持っていた別荘の離れに間借りしていたのです。 近所の子供たちと走り回って遊んでいた時、別荘の裏口には小さな石段があったのですが…