平家物語を読むには

平家物語の読者、もしくは読んでみたいという人はこんなにいるんだなあ、とやや意外でした。新作アニメがTV放映予定とのニュースに反応するツイッターを見ての感想です。折から小説連載も始まったらしい。大河ドラマが失敗して以来(あれは日本史とCGとに頼りすぎ、脚本に一貫性がなかった)、軍記物語は不人気と思い込んでいました。

しかし研究の前線と、読者の期待との間は果たして貫通しているのか。私自身、読者のための平家物語論(単なる解説や梗概書ではなく)をどう書けばいいのか、ここ数年ずっと考え続けていました。「こう読むべき」だの「これが正解」だのではない論で。

そこで、ふつうに平家物語を通読するためのお勧め本を列記してみます。基準は原文全体があり、現代語訳か語注があって、入手しやすく読みやすい、誤りの少ないもの。

Ⅰ 持ち歩いて読める ①杉本圭三郎『平家物語全訳注』(講談社学術文庫 覚一本)*1巻1冊。全訳 ②高橋貞一『平家物語』(講談社文庫 流布本 上下2冊)*脚注に時々新見がある 

Ⅱ じっくり読むには ③市古貞次『平家物語』(小学館新日本古典文学全集 覚一本   2冊)*全訳・教科書表記 

Ⅲ 異本を読んでみる ④水原一『平家物語』(新潮日本古典集成 百二十句本 上中下3冊)*解説が名文。覚一本とは異なる終結平家物語 ⑤福田豊彦・服部幸造『源平闘諍録』(講談社学術文庫 上下2冊)*千葉一族のための抄出本。全訳 ⑥麻原美子・小井土守敏・佐藤智広編『長門本平家物語』(勉誠出版 全4冊)*赤間神宮に奉納された平家物語 ⑦『源平盛衰記』(三弥井書店 全8冊の予定)*増補改修の後出本、とする説は今や時代遅れ。まもなく最終巻を出します。