東大中世文学研究会第345回

午後からオンラインで開催された東大中世文学研究会に参加しました。いつもなら夕方から始まるのですが、大学側の事情があるようです。失敗は、先週夜半にちあきなおみを聴いたまま、PCの音量を絞っていたことで、zoomが始まってからでは調整できず、ヘリや救急サイレンなどで何度も音声がかき消されました。

発表1本目は杉山翔哉さんの「謡曲〈放生川〉の構想」。世阿弥作、永享2年(1430)以前成立とされる「放生川」が、応永の外寇鎮圧という時代の要請に基づき、国家規模の殺生滅罪と祝賀を構想として成立したこと、謡曲が時流に敏感な芸能であったことを論じました。聞きながら、芸能の時流追随は本質的なものだが、謡曲の場合と平家語りとは異なるなあと思いました。

2本目は清水由美子さんの「『吾妻鏡』と読み本系『平家物語」―頼朝挙兵譚における千葉氏関連記事をめぐって―」。資料や本文がぎっしり詰まった発表資料は11枚、先行研究紹介にかなりの時間を割き、肝心の日胤・頼胤記事や源平闘諍録との関係については駆け足でした(幾つもの新見や、今後に伸びていく芽があったのに残念!)。吾妻鏡治承5年5月8日条に、日胤が頼朝の依頼を受けて大般若経を「600日」見読したとあるのは「600巻」の誤りで、頼朝が早くから挙兵の意思を持っていたことの証明にはならないこと、吾妻鏡は頼朝挙兵を皇室からの命によるものとしたかったこと、源平闘諍録には胤頼の記事が少なく、千葉氏内部の勢力争いに成立の動機があったかもしれない、など重要な提言がありました。

その後、コロナ下の授業や大学院生活について東大はどうしているか、リモートの長短など雑談しました。但し研究会は今後もハイブリッドでやる方がいいということでした。