軍記物語講座読後感2-2

アメリカ文学専門の友人から、軍記物語講座(全4巻 花鳥社)の読後感が送られてきました。第2巻『無常の鐘声』を中心に読んだそうです。専門外の人からの感想は嬉しい。一部、紹介させて貰うことにしました。

【まず、古典文学および古典文学研究の確かな存在感に圧倒されました。佐倉由泰氏による「まえがき」冒頭の一節、「『平家物語』の表現はよく動く』」は、修辞法を駆使するテキストの表現法を端的に示していると思いました。また、激しい動きがある一方、無常観に代表される単一性が目立つとの指摘は刺激的でした。

平家物語の軌跡」中の「現代人にとっての『平家物語』」は、私のような一般読者には興味深い観点だと思いました。「避けられぬ死を前に彼らはどのように行動したか、どのように生を全うしたかという具体例が差し出されているのである。それが読めるならば、『平家物語』はもはや遠い世の物語ではない」(p18)。深く頷きました。

平家物語』(他の軍記も同様でしょうが)がなぜ、書かれたかという構想に関する問いの部分(p14~15)も興味深く読みました。以前、日本史の方からのコメントにも、「いつの時代でも、自分が生きている時代がどのような時代で、どう総括すればいいかは、重要な課題であったというのは、確かにその通り」とありましたね。同感です。『平家物語』に描かれている事件が起きた時代と、物語が成立した時代との間がほどほどに離れていたため、事件を様々に伝えることができた、その時代を生きた有名無名の人々がそれぞれの立場なりに納得できるような「現代史」が書かれた、そして、その「現代史」が蓄積された結果、諸本が成立した、ということになるのでしょうか? 

20年先の研究の頭出しをとの願いが込められた講座刊行だったとのことですが、他ジャンル(歴史学、芸能、和歌、音曲など)とのコラボによる研究への期待、次世代の研究・研究者へのバトンパスに対する強い意識、を本の随所で感じました。私も『平家物語』通読を今後の目標の一つとしました。楽しみながら読みたいと思っております。】

読みやすいテキストとして『完訳日本の古典 平家物語』(全4冊 小学館)をお奨めしました。