山城便り・羨望篇

鳥取時代の同僚が、京都郊外に移住し、悠々の老後を送っています。

【先週、京セラ美術館(京都市美術館)に「上村松園展」を見に行きました。予約制でしたが、それでもかなりの人が入っていました。展示作品はかつてないほど集めたということで、美人画がずらりと並んでいて壮観でした。そのなかで、「夕暮」という、障子を開けて外に向かって針に糸を通している絵が、少し前に亡くなった母親を思って描いたという解説を読んでから見たせいか、感動的でした。上村松園の絵で、画家の思いを感じるということはあまりなかったので、新しい体験でした。】

その絵は私も観た覚えがあります。松園は、宮尾登美子の小説『序の舞』を読むと、あの時代の女性芸術家の一生の凄絶さにたじろぐ思いですが、幾つか心安らぐ作品もあって、できればそういうイメージで覚えていたい。

【春先からずっと胃腸の具合が悪くて、食べ物に気をつけていても治らないので、先月末に医者に行きました。症状を言ったら、「典型的なストレス性の症状」と言われました。何か思い当たることはありませんか、と聞かれ、あります、どんなことですか、論文が書けなくて四苦八苦しています、という会話をしました。

定年後は、すべて自由な時間だから、ストレスなくいろいろできる,と思っていたのですが、自由な時間はあるとしても、先がないから、結局、焦ってしまって、ストレスがたまるのだと思います。薬は良く効いて、ほぼ治りました。】

これって、羨望を通り越して口惜しい!定年後の自由と言っても、私の場合、若い時にし残したこと、不十分なまま放置したので後進が誤ってはいけないと道をつけ直す仕事ばかり。彼は書けないストレスに悩むほど、定年後の自由を謳歌しているじゃないですか!