源平の人々に出会う旅 第55回「神奈川県・三浦一族」

 頼朝挙兵時から、頼朝に従った武士達の中に三浦一族がいます。三浦義明をはじめ、和田義盛、朝比奈三郎、石田為久など、有名な人物が数多く存在します。語り本系の『平家物語』には、ほとんど記されていませんが、読み本系諸本や『吾妻鏡』には、頼朝の挙兵記事が豊富です。中でも、三浦一族の戦いである小坪合戦や衣笠合戦は詳細に記されています。

【三浦大介戦死之処碑(腹切松公園)】
 治承4年(1180年)、悪天候により石橋山の合戦に間に合わなかった三浦一族は、衣笠城に籠城して畠山軍と戦います。高齢の大介義明は息子達を脱出させ、自らは城に残ろうとしますが、江戸太郎らに討たれてしまいます。地元には、義明は切腹して果てたとする伝説もあります。

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佐原城趾】
 義明の子佐原十郎義連は、一の谷の合戦で、鵯越の坂落しを真っ先に駆け下りたことで知られています。逆落しの場面を描く絵画作品の多くに、先頭に描かれているのが佐原十郎です。

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【和田塚】
 鎌倉幕府の初代侍所別当として有名なのが和田義盛です。石橋合戦に敗れて真鶴から船で逃れた頼朝は、海上で三浦一族の船に遭遇し、九死に一生を得ました。この時義盛は、平家を滅ぼしたら侍所の別当に任命してほしいとねだったのでした。後に和田合戦で破れ、和田一族は滅びます。

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〈交通〉
腹切松公園…JR横須賀線衣笠駅佐原城趾…京急久里浜線 北久里浜駅
和田塚…江ノ島電鉄和田塚駅
                          (伊藤悦子)