島原の雨

昨晩は東京でも大雨、伸びすぎたコリウスが雨露の重みで倒れました。九州・中国地方から中部の山国にかけて、洪水や土砂災害への警戒が頻りに呼びかけられています。

氾濫の危険が報道されている久留米は、筑後川の水べりが美しい町です。島原から熊本にかけては、名水の湧く場所があちこちにあります。山と川のある故郷を持つ人をずっと羨望していましたが、こういう時は大変なんだなあと思いました。長崎、大分も、坂や川、橋のたたずまいが印象的な地方。石畳を濡らす雨に慕情を募らせる「長崎は今日も雨だった」という歌謡曲は名曲だと思いますが、梅雨の末期などには決まって出水があり、もともと火山灰地だった傾斜地では心配が絶えません。

もう40年くらい前のこと。学会の後、久しぶりに上京してきた人たちも交えて賑やかに呑んでいた中に、当時長崎大学に勤めていた人がいました。あっちは大雨らしいよ、と誰かが言い、彼は自宅に電話して妻と話していましたが、暫くして「電話がかからなくなった」と言う。1回目の電話で何か買って帰る必要品があるかと訊いたら、ちょっと考えると言われたので、間を置いてかけたらつながらない、と言うのです。一瞬、みんなしんとしましたが、今ここで心配してもどうしようもありません。そのまま賑やかに呑み続けて解散しましたが、あの時の彼の気持ちはどんなだったろう、と今頃になって申し訳なく思います。

先週、島原文庫に調査に行った高木浩明さんから、かき氷の写真が送られてきました。

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島原の宇治ミルク金時

明治10年(1877年)創業の「猪原金物店」に併設された『茶房&ギャラリー速魚川(はやめがわ)』が、店の井戸から湧く水で作っているとのこと。私も島原には2回ほど行きましたが、静謐さと水の清らかさとがよく似合った町でした。遙かに無事を祈ります。