2024-09-01から1ヶ月間の記事一覧

蒙古襲来絵詞

松薗斉さんの論文「『蒙古襲来絵詞』についてーその文化史的考察ー」(「人間文化」愛知学院大学人間文化研究所紀要39)を読みました。数ヶ月前、軍記物語研究で蒙古襲来絵詞を扱った論文にはどんなものがあるか、と質問されて、はたと考え込んでしまいま…

信濃便り・甘藷篇

長野の友人から、塩尻で暮らす弟さん夫婦の話が来ました。定年後、仲間と小さな農園をやっていて、かたおか農園と名付け、現在はさつまいも、落花生、インゲン、野沢菜、秋の葉物いろいろを栽培、毎日の収穫を直売所へ出しているそうです。 かたおか農園 シ…

新体制

昨日はさわがしい一日で、夜、よく眠れませんでした。朝刊はぶち抜きで袴田さんの再審無罪を報じ、しかし未だ面子に拘る検察OBの談話も載せている。控訴するのでしょうか。私は今回初めて、死刑制度は廃止すべきだ、とつよく思いました。彼のお姉さんは偉い…

古活字探偵21

高木浩明さんの「古活字探偵事件帖21」(「日本古書通信」1142)を読みました。今回は「遠藤宗務と『拾芥抄』」と題して、慶長頃の古活字版を囲む人脈を取り上げています。『拾芥抄』は南北朝時代に成立した類書(現代でいう百科事典)ですが、慶長年間に…

越前だより・平泉寺篇

福井高専の大谷貞德さんが、平泉寺白山神社を訪ねたと写真を送ってきました。 平泉寺参道 平泉寺には半世紀前、友人の一家と訪れたことがあります。広大な境内は苔に埋もれ、木漏れ日が美しかったのですが、幼かった友人の息子(今は流通経済大の教授になっ…

バター缶

奥田勲さんが9月11日に亡くなったと知り、改めて人の上を流れる歳月を想いました。奥田さんは大学院の先輩です。連歌が御専門、高山寺資料調査に尽力されました。 東大図書館では明治以来の平曲の貴重な録音テープを保存していて、関連分野を専攻する大学…

彼岸過ぎまで

昨日今日、やっと秋らしい日和になりました。気温や晴天だけでなく、湿度が下がったのが大きい。あまり報道されませんでしたが、今夏が苦しかったのは、ずっと高湿度が続いたから。風も爽やかになり、昨夜は冷房を停めて寝ました。 昨日は久しぶりに播磨坂の…

靖国と交流分析

臨床心理士の東畑開人さんのコラム「靖国で考えた 私たちは一緒に居たいのか」(朝日朝刊9/19「社会季評」)を読みました。東畑さんは文章が巧く、心理士にしては珍しく、肩に力を入れずに大きな問題を語れる人です。「8月15日に靖国神社へ行った。直…

季節の行事

扇屋へおはぎを買いに行きました。彼岸だというのを忘れていて、昨日の夕方行ったらもう売り切れ、若女将から明日もやってますから早い時間に来て下さい、と言われてしまいました。端午の節句だろうが彼岸だろうが日曜日はしっかり休む老舗でしたが、方針が…

信濃便り・葡萄篇

長野の友人から小さな箱が届き、開けたら葡萄が2房、綺麗に包装して入っていました。まるで宝石箱のよう、とメールしたら、いま葡萄の季節で店頭は色とりどり、ぶどう三姉妹と銘打って特産銘柄を宣伝中、とのこと。写真を送ってくれと頼みました。 葡萄売り…

中世文学研究会352

夕方から東大中世文学研究会352回例会をオンラインで視聴しました。参加者は30人弱でしょうか。冒頭、先輩の奥田勲さんの訃報を知らされて、ショックでした。 発表の1本目は村瀬空さんの「鎌倉時代における藤原秀能の評価」。秀能は地下でありながら後…

越前だより・中之島訪書篇

福井高専の大谷貞徳さんが、大阪府立中之島図書館へ調査に行ってきた、と写メールを送ってきました。1904年に豪商住友が建てた洋館です。【建物の外側は改修されたところもありましたが、中は当時のままのところもありました。そろそろ学校も後期の準備…

ニホンザル型とゴリラ型

山極寿一さんのコラム「ヒトが選ぶべきリーダーとは」(朝日新聞朝刊9/12オピニオン欄)を読みました。山極さんはゴリラの生態研究が専門、京大総長や日本学術会議議長なども務めました。霊長類の生態から人類の誕生や人間社会の成り立ちなどを屡々論じ…

阿波国便り・虹の彼方篇

徳島の原水民樹さんから、久しぶりで虹を見た、と写メールが来ました。 徳島の虹 【虹を見たのは、12年前に先代犬が死んだ時以来です。写真では虹の美しさは中々出ません。】 原水さんは大の愛犬家、12年前には愛犬の追悼文集を出したほどでした。ペット愛…

歴史への責任

昨夜、Nスペ「第4の被曝事件」を視聴し、衝撃を受けました。日本は広島、長崎と2度の被爆体験があり、1954年のビキニ環礁水爆実験で漁船が被曝した「3度目」が記憶されていますが、じつは「4度目」があり、それは政府によって隠蔽された、というので…

コロナな日々 41st stage

山城の錦織勤さんから先週、夫婦揃ってコロナに罹った、とのメールが来ました。 【土曜日の夜中に、突然、冷水につけられたような寒気がして、その後、風邪の症状になりました。ふつうの風邪だと思っていたのですが、妻も月曜の朝に熱があるというので、そろ…

中世前期政治史研究

4月9日に亡くなった元木泰雄さんの遺稿集『中世前期政治史研究』(吉川弘文館)を頂戴したので、拝見しました。随分早くできたんだなあと思ったのですが、巻末の解説(佐伯智広執筆)を読むと、元木さん自身がすでに準備されていたのだそうで、全424頁…

越前だより・阿野の津篇

福井高専の大谷貞德さんから、津市図書館へ3度目の調査に行ってきた、と写メールが来ました。どうやら伊勢の国学者たちのネットワークに、長門本平家物語の書写・校訂作業が繋がっていくようなのです。まるでパズルが填まるように、伝本の関係がつぎつぎ集…

信濃便り・羽化篇

長野の友人から久しぶりに写メールが来ました。 羽化 【玄関の前の植木鉢で、キスジアゲハが羽化しました。妹が、レモンの鉢に産み付けられた薄緑色の卵を点検して、毎日、あれこれ幼虫の成長状況を報告してくれていたのですが、とうとう、幼虫の姿が消え、…

授業料値上げ

東大が来年度入学者から授業料を値上げするという。学部生は年間¥64万2960、大学院修士課程は2029年度から上げるのだそうです。その代わり、授業料全額免除の条件を世帯年収¥600万以下にする、2021年度の学生の54%が世帯収入¥950…

過ぎたるは

この夏は足の湿疹に苦しめられました。現役時代は酷かった水虫がようやく退き(靴を履かなくなったので)、6月には皮膚科で、あの薬は効いたね、という話をして帰ってきたのですが、高温多湿のこととて油断は禁物と、せっせと薬を塗り続けました。すると7…

首長の条件

関西の一県知事の言動が、毎日世上を賑わせています。県民はさぞ肩身が狭いことでしょうが、彼に投票しちゃった有権者は、この際苦い思いを噛みしめて貰うしかない。選挙の時にはああいう人物だったとは分からなかった、というのが正直な声でしょうか。 報道…

ひやおろし

明日が今年最後の猛暑日、と天気予報が言うので喜んでから、何回猛暑日があったでしょうか。なかなか秋らしくなりません。しかし日が短くなってきたので、さすがに夕方は気温が落ちます。昼間の暑さも1ヶ月前のようなアグレッシブな暑さではなく、やや弱気…

和の魔力

家事代行で毎週やって来るエノキさんが、和裁をやっている友達を訪ねた、とやや興奮気味で話し始めました。彼女は仕事仲間だけでなくSNSを通した友達も多く、それぞれの違う世界を覗き見するのが新鮮で愉しいらしい。浅草で育って、今は和裁で生活を立ててい…

長門本平家物語の新研究

松尾葦江編『長門本平家物語の新研究』 花鳥社 10月7日刊行予定 ポスター 口絵(旧国宝本・明倫館本・三田葆光本・松平定信書簡) 長門本とは何か◉松尾葦江重要文化財 平家物語長門本 戦災焼損修復の記録◉水野直房大内文化と「阿弥陀寺本平家物語」◉佐々…

越前だより・東博訪書篇

福井の大谷貞德さんから、上野の東京国立博物館へ行ってきたとメールが来ました。 東京国立博物館 【上野は混んでいました。東博の神護寺展が目当てなのか、動物園も賑わっていたようです。パンダが中国に帰ってしまうからでしょうか。】 東博は私も院生時代…

サライを聴く

1日の晩、日テレの「24時間テレビ」を視ました。サライを聴きたかったからです。あの番組の最後に歌われるのが一番、似合う。 私が視たのは熟年のコメディアンが能登の高校生を率いてダンスに挑戦するVTRからで、番組全体を視てはいません。恒例のマラソ…

越前だより・富山訪書篇

NHKの「ドキュメント72時間」という番組で、石川県立図書館を紹介していました。地方公立図書館の充実ぶりには目を見張るばかりです。低声でお喋りできる席、食事も摂れる席、くつろげる椅子などの空間を棲み分けできるようになっており、学術誌閲覧で訪れ…

ポリオ

ガザ地区でポリオが流行し、ワクチン接種が始まった、という報道を読んで、え、ポリオはすでに絶滅したのではなかったの?と改めて調べてみました。かつて日本では、小児麻痺(ポリオ)と日本脳炎とが、子供にとって最も怖い病気でした。命を落とすだけでな…

女性の進学

8月21日が「女子大生の日」だとは知りませんでした。東北大学が日本で初めて、帝国大学への女性の入学を許可し、官報に記載された日なのだそうで、去年が100周年だったそうです。受験したのは4名、いずれも理系で、すでに教員として教壇に立っていた…