女の現場・介護保険篇

アラ還の女性たちが直面するのが親の介護です。先週のゼミ会で出たのは、親たちは施設には入りたがらない、結局は娘に負担がかかる、という話題でした。兄弟がいても男は指示を出す側、実行するのは女、それがごく自然の態勢になってしまう、せめて「有難う」の一言が欲しいーそれは私も親族の女性たちからよく聞かされたことでした。

そもそも介護保険は、女性だけが家族介護を担うのはおかしい、高齢化社会になることが判っているのだから社会全体で支えるシステムを作るべきだ、との理念で作られたはず。ところが近年は、地域で支えるという美辞麗句の下に、町内会などを通じて近所の高齢者の世話まで女手を当てにする動きが見えます。おまけに介護保険の利用手続きが紙と印鑑ベースで煩雑なため、しょっちゅう施設から呼び出されて書類作成を求められる。

グループホームでアルバイトをした人もいて、介護に人が集まらないのは給料問題だけでなく、終わりが見えず、下降、衰退に直面し続けるからでもある、と言っていました。理解できます。そういう現場を支える思想が広く共有される必要があるでしょう。

私は定年後2年間、区の地域包括ケア推進委員を務めて、現在の老人福祉の仕組みを学んだことはとてもよかったと思っています。何も知らずに介護保険に期待しても失望が大きいし、福祉や行政のどこがネックになりやすいかを知っておくことは有益です。

老後は世話の行き届くホームに入る心算で用意しておいたんだけどね、と私は言いました。でも介護保険利用のため身元引受人に手間をかけることや今回のコロナ対応を見ていて気が変わった、逆説的だが老人ホームは世話をする家族がいないと入れない、施設側も時々見に来る家族がいないと手抜きする、しかし年金はじりじり下がり、高齢者保険料と介護保険料はどんどん上がる、それが老後の現実。公助なんて遙か地平の彼方だと。