許すまじ原爆を

公共放送を標榜するNHKが今年は、8月6日に恒例の特番を組まないこと、広島の平和記念式典スピーチを総理が大量に読み落としたこと(棒読みしたとしても意味が通らなかったはず。せめて広島への移動時間中に、原稿に目を通すくらいのことはしておかなかったのか?!)を知り、憤慨しました。

「原爆を許すまじ」という歌を知っていますか。若い頃、学生運動でも、高校教諭になって参加した日教組の集会でも、よく歌いましたが、歌詞の記憶がところどころ曖昧になっていたので、YouTubeで聞いてみました。アコーディオン伴奏、混声合唱というのはこの歌に相応しいのですが、聞いてみてテンポが遅いのに吃驚しました。あの当時はもっとはやく、たたみかけるように歌った、こんな悲しみの歌ではなく、被爆体験のない私たちでさえ秘めた怒りを歌う歌でした。殊に「ああ許すまじ原爆を」というフレーズの、低音からスタートして高まっていく「嗚呼」という部分は、踏みにじられた人間の尊厳への思いが、腹の底から圧し出されてくるような気持ちでした。

ウェブで調べてみると作詞者は浅田石二という人で、東京の工員だったそうです。ビキニ環礁の水爆実験(1954年3月1日)後に作られた(同年7月28日発表)との解説が出ていて、えーっ、と愕きました。「ふるさとの街焼かれ 身寄りの骨埋めし焼け土に 今は白い花咲く」と始まる歌詞の「花」は広島に多い夾竹桃の所存だったそうですが、歌詞としては鎮魂の野の花のイメージになったとのこと。

今でも歌えるかな、と歌ってみました。あの時代と違ったのは、現代では平和な日常そのものを守るべき対象と考えること、そして核兵器以外にも被曝の機会はあるのだと判ったことでしょう。慰霊碑に刻まれた誓詞は、「過ちは繰返しませぬから」。