日々雑録

慈円の文化圏

尾崎勇さんの論文2本を読みました。「梶原景時の頼朝救済の説話をめぐって―『愚管抄』と『平家物語』のあいだ」(『説話の形成と周縁 中近世篇』臨川書店)・「今様をうたう徳大寺実定の意味―屋代本『平家物語』からー」(「文学・語学論集」49・50合併…

私的太平記研究史・補遺

学部2年から3年にかけ、一念発起して、日本古典文学大系(赤い表紙の方です)を全巻読破しました。太平記を通読したのも、たぶんその時だったと思います。幾つも印象的な場面や挿話があり、平家物語とはまた別の魅力を感じました。第3部はやたら人名が多…

2人の草分け

学部の近代文学の授業は、自然派と反自然派の二つの特講があるだけでした。隣接の大学へ、憧れの吉田精一先生の授業に潜ってみたりしましたが、4年次の後期に突然、三好行雄先生の演習が開講されることになりました。同級生で近代の卒論を書く人は1割しか…

もぐり受講・その1

学部時代、近代文学の授業が少なくてもの足りなかった(当時は未だ、近代文学は研究の対象ではない、という考えがありました)のに、隣接の教育大学には有名な吉田精一先生がおられました。3年の新学期、数人で示し合わせて吉田先生の講義(文学史だった)に…

遙かな海と空に

宮古島からマンゴーが届きました。真っ赤な果実の一部がぽっと紫がかって、工芸品のような美しさです。早速、仏壇に上げました。明日はフィリピンのミンダナオで戦病死した叔父の命日。以前、本ブログにも書きましたが、終戦の6日前に亡くなった通知だけで…

写本の事情

昨日に引き続き、終日、写本の様態を細かに観察してはメモを取りました。遠くから聞こえる列車の音、よく手入れされた古い調度品、静かで丁寧な応対・・・わけあって、始めるまでは気の重い調査でしたが、2日間、3人が異なる角度から調査した結果、どうやら…

8月6日

出かける直前、TV中継が広島から始まりました。台風の影響か、雨天だそうです。川の街広島を初めて訪れたのは、56年前、幼なじみの友人と一緒に、夏の暑い日でした。原爆ドーム、原爆資料館、そして人影の灼き付いた石段も見に行きましたが、いま思えば未…

楠公飯

京アニメ関連のニュースを見ながら、つくづく思ったのは、アニメ―ションという媒体がいかに時代を変えたか、でした。あんなに多くの人たちが泣きながら「救って貰った」と述懐するほどの影響力をもつ文学が、同時代にいまどれだけあるでしょうか。未だにサブ…

中世百首歌の生成

野本瑠美さんの『中世百首歌の生成』(若草書房)という本が出ました。序章和歌史における百首歌 1応制百首としての久安百首 2院政期歌人の試み 3奉納百首としての寿永百首 4神からの応答「天神仮託歌集」 終章百首歌が生み出したもの という構成になっ…

梅雨明け

東京の梅雨明け宣言が出た日から、蝉の声が蝉らしくなりました。それまでは口ごもりながらでしたが、油蝉もみんみん蝉も、それと分かるように鳴き始めました。しかし蝉時雨ではなく1匹ずつ。この界隈も続々家が建て替えられ、敷地一杯にコンクリートの箱が…

手に持つ道具

新聞の投書欄が最近、ときどき10代の意見特集をします。なるほどなあと思う時もありますが、苦笑することもなくはありません。編集部までがその短慮に同調しているような場合は、困ったもんだと思いつつも読み過ごします。 小学校で、手が変形するという理…

私的太平記研究史

軍記物語講座『平和の世は来るか―太平記』の初校が始まりました。力作揃いの1冊です。25年前、「太平記の意志」という論文を出した時、仲間から、随分肩に力が入ってますね、と言われました。それも当然、当時の太平記研究は、諸本が多くて大変だとするバ…

大天狗

菱沼一憲さんの論文「「大天狗」頼朝書状からみる政治の舞台裏―文治元年の諸国地頭制度・廟堂改革をめぐって―」(國學院大学栃木短期大学「日本文化研究」4号)を読みました。 文治元年(1185)12月に頼朝が全国に守護地頭設置を許可され、この制度が…

中世説話の環境

「日本文学研究ジャーナル」10号を取り寄せて読みました。「中世説話の環境・時代と思潮」と題する特集です。目次には、「西安の玄奘三蔵学会に想う」小峰和明、「見えない仏」本井牧子、「源隆国晩年の対外観と仏教」荒木浩、「熊谷惣領家と直実説話の継…

東京駅の恐怖

8月末の軍記・語り物研究会は、紀伊田辺で開催されるとのことで、参加可能かどうかをリサーチしました。2日目の研究発表の1番目から聴こうとすると、どうしても前日に出かけなければならないことが分かりました。 紀伊半島は、学部最後の春休み、友人と一…

太平記の伝来

太平記を書写し、その本を保存し、伝えて来た人たちーその多くはかなりの知識人層だったと思われますが、記録や資料に現れてこない名前も多い。多様な分野の資料を博捜する指向を見せる近年の国文学研究でも、分野を超えた情報交換が自由自在とは言えません…

芋の茎

本井牧子さんの「見えない仏―仏像の霊験を語る話型ー」(「日本文学研究ジャーナル」10号)を読みました。「日文協日本文学」7月号に立木宏哉さんが書いていた、絵巻が神仏の顔を明確に描くか否かの問題と繋がっていて、興味深く読むことができました。本…

ちがうだろ

参議院選挙が終わり、どの党も結果を都合よく解釈した談話を出しています。しかし、憲法改正の議論を進めよというのが民意だ、という談話には、それ違うだろ、と言いたい。まず、記録的な低投票率で決まった勝敗が、大きな変化を望む民意だとは思えません。…

平重衡

原田敦史さんの「平重衡」(日文協「日本文学」68:7)を読みました。以仁王の乱に荷担した南都を攻めて、東大寺・興福寺を炎上させる結果を招いてしまった重衡(命を下した清盛はその報いを受けて熱病死する)。心ならずもとはいえ、仏像・経典・僧侶を…

軍記・語り物研究会422

軍記・語り物研究会第422回例会に出ました。会場は駿河台の明治大学。久しぶりでお茶の水駅から歩くと、両側の楽器店にはギターがずらりと吊されていて、売ってしまった若い頃の愛器が思い出され、胸が疼きます。 発表は2本。梅田径さんの「近世末期索引…

七難隠す

朝日新聞日曜版に、「サザエさんをさがして」という連載があります。かつて同紙に連載されていた長谷川町子の4コマ漫画の中から選んできた1本をもとに、記者が書く時世評なのですが、今日の「肌の色への偏見 無批判に取り込んだ日本」には、どうしても反論…

自尊心

選挙戦もあと3日。駅前や宣伝カーの演説を聞いていると、何だかカネをくれる(くれた)話ばっかりのような気がしてきて、有権者としての自尊心が傷つきます。ある党は好景気になった、雇用も税収も保険料納入額も増えた増えた、と言う。賃金も上げる、教育…

続古今集

和歌文学大系38『続古今和歌集』(明治書院)が出ました。藤川功和・山本啓介・木村尚志・久保田淳の方々による校注本です。まず解説を読み、それから木村さんの担当した箇所の訳注を拾って読んでいきました。 最近の歌集の注釈を読みながら、本歌だけでな…

天正本太平記

李章姫さんの「天正本『太平記』の記事構成と霊剣」(「法政大学大学院紀要」82号)と、「天正本『太平記』巻27「諸卿意見被下綸旨事」における漢楚合戦記事をめぐって」(「日本文学誌要」95号 2017/3)を読みました。 太平記の諸本は平家物語…

軍記物語年表

軍記物語講座第1巻・第4巻に掲載する年表の、3回目の作成打ち合わせをしました。会場には、作成者の1人加美甲多さんが勤務する、跡見女子大学文京キャンパスの1室を借りて貰いました。私にとっては、高校生時代から60年近く桜の咲く校門の前を通りな…

夏野菜の炒めもの

夏の野菜は生で食べるものが多く、つい手間を省いてしまいますが、簡単に炒めるだけで目先が変わって美味しくなることがあります。先日、パセリの束が安く出ていたので買ってきました。まず水に漬けて活きを取り戻し、小房に分けて、ちりめんじゃこと塩で炒…

詐欺誤認

先々週のことです。午前10:30(詐欺電や勧誘電話のゴールデンタイム)、電話が鳴りました。いつもは留守電にしてあるのですが、ちょうど空調交換や本の編集で電話連絡の多い時だったので、うっかり出てしまいました。こちらが名乗ると、「◯◯のOでえす…

長門本平家物語

佐々木孝浩さんが、早稲田大学図書館蔵の18冊本長門本平家物語(巻1・2欠)について、フェイスブックで言及していると教えられ、ご本人に問い合わせました。 「ちょっと必要があって早稲田の平家の画像を眺めていたんですけど、題簽が小さくて、各冊末尾…

有朋

遠方から友人が上京したので、久しぶりにお喋りし、夜は近所の蕎麦屋兼呑み屋で呑みました。友人は30年前の教え子と昼食会をした帰りだそうで、私と話す間にも、彼女たちから繰り返し、楽しかったねメールが届いていました。 私との話は専ら、老老介護の体…

鬼灯

ほおずきを作れる子はもう少数派でしょうか。子供の頃、夏にはほおずきを作って鳴らしました。祖母に教わった作り方です。 赤い、提灯のような萼を天辺から8つくらいに裂き、折り返しててるてる坊主のような格好にします。片手で足の方を持ち、片手で頭のつ…