102年目の魚屋

父の命日が近いので、花を買いに出ました。この近辺では頼れる花屋がなくなって、不自由しています。週末だけ出す店があって、品数は少ないが花が新鮮なので、まずそこへ行ってみました。黄色いフリージアがある。白か紫ならもっとよかったけど、父の好きな花だったので、ここで揃えることにしました。紫のベロニカ、白いオルニソガラム、黄色のラナンキュラス、オレンジ色のカーネーション。彼が気に入っていた石川窯の花瓶に挿せば、何とかなりそうです。

戻ってくる途中で、魚よしの新装開店に出くわしました。創業102年目の魚屋です。このところ店を建て替えていたのですが、3階建ての真黒なビルの背後に真白な賃貸ビルが接続していて、到底鮮魚を売る建物とは思えない。正面だけ見ると博物館か何かのようです。美容院で聞いた話では、もともとアパート経営もやっていたのだそうで、代替わりを睨んで踏み切ったのでしょう。華麗な祝花が並んでいましたが、「本郷小学校同級生一同」の名札のあるのがいかにも地元らしい。

店主は区の福祉事業や中学校の料理教室にも参加している「意識高い」系。声が大きくて、朝など坂の上の我が家まで筒抜け。コロナの間は敬遠していたのですが、魚屋の声が大きいのは本来でしょうね。店の間口は半分になり、ショーケースも小さくなりましたが、見本だけ置いて、客の注文次第で捌くやり方にしたようです。毛蟹が1杯、鎮座していました。硝子戸には水紋のような絵が描いてあり、暖簾にも。どうしたのか訊くと、知り合いのデザイナーに頼んだそうで、付き合いが広いのでしょう。今どき建築デザインは高くつくはず。こりゃあがんばんなくちゃね、と言ったら、頑張るために建てたんだから、との答えでした。鮃の刺身を買って、新築祝いの魚形スポンジを貰って帰りました。