漫画立国

1人の漫画作家の訃報が、世界中で悲しまれているという報道が気になって、ウェブで少々調べてみました。竜の玉7個を集める話は1984年から95年まで、おかしな発明を繰り返す博士が造った少女ロボットの話は1980年から84年まで、いずれも少年漫画週刊誌に連載され、TVアニメや映画、やがてゲームキャラクター化され、空前のヒットを記録したのだそうです。世界各国で、爆発的に売れたらしい。

以前にも書きましたが、世代を超えて共通の物語が受け継がれていき、一つの文化になる、という現象は大事なことです。古典文学を扱っている私たちにとっては、時代の動きとして常に気になることでもあります。しかし漫画、アニメ、そしてゲームというメディアは、一種の画期をもたらしました。言語の障壁がない分、世界的に拡がることができますが、少なくとも私やそれ以前の世代は、それらの「物語」を永続的に共有することが困難でした。私にとってそれらは、いわば大量消費文化の象徴だったのです。

奇妙な日本語を喋る女の子の漫画は知っていましたが、彼女がロボットで、奇想天外なギャグ漫画であることは今回初めて知りました(手塚治虫や「どらえもん」のパロディという一面もあるか)。西遊記八犬伝の影響を受けた漫画の方は、スポ根ものかと思っていました。長期連載の漫画・アニメの内容やキャラクター設定を知悉するには、幼少年時代が重ならない者の場合、膨大な時間が必要になる(漫画期以前の人間は、つい吹き出しを熟読してから画面を見渡すので、文章を読む以上に時間がかかるのです)。それに読了後の蓄積は応用範囲が狭く、つまりタイコ(時間的効率)がわるい。

古い奴だとお思いでしょうがー経済産業省が推すクールジャパン、漫画立国の世の中に、愕き、佇み、嘆息するしかありません。