開花宣言の日

春の嵐が去って、アスファルトの地面もたっぷり雨水を吸い込み、やっと三月尽に相応しい天候になりました。一昨日若い人の首途の祝膳に出した鯛の頭で、潮汁を作って朝食。重い冬の掛布団を畳んで、軽い羽根布団を干しました。ベランダでは紫蘭の蕾が出て、大島桜や石榴がやや遅い芽吹きを見せています。しかし空は快晴なのにぼうっと霞んでいる。黄砂が降るらしい。

メールを開けたら、月末締め切りの原稿が届いていました。近世書誌学に詳しい後輩に頼んでおいた原稿です。きっちり仕上がっている。思わず雄叫びーいい本ができそうだ!このトシだから片付けと言い残しになってしまうかも、と不安を抱えて企画した本ですが、手を付けてみると、どんどんクリエイティブになって(というか、今まで棚上げにしていた問題が一気に顕在化して)、パズルのピースが填まっていく。もっと早く始めればよかった。

九段の桜が11輪咲き、東京にも開花宣言が出たようです。午のニュース映像では、未だ1分咲き程度の上野や目黒に、どっと人が出ていました。みんな待ちきれなかったのでしょう。近所の長泉寺の境内の桜の咲き具合を、確かめに行きました。老木の山桜は朽ちかけた幹を残して小さく刈り込まれていましたが、東側の枝に数輪の花が開いていて、染井吉野は未だ咲かず、烏が1羽、もっさりと止まっていました。

3月4月は別れと出発の季節ですが、これからも未だ出発はあるようで、若い人を見送るだけでは済まないらしい。見苦しい独り相撲にならないよう、その時々の体力や環境を考えて質の確保に努めなくてはなりませんが、半世紀前に諦めかけた作業の糸口がほぐれ、行き止まりは未だずっと先にある、ということが判ってきました。