山城便り・天南星篇

鉢植えの武蔵鐙の花が見頃になった、と錦織さんからメールが来ました。

鉢植えのムサシアブミ

もう1鉢、近縁種らしい株を育てているが、花(正しくは仏炎苞)が色づかない、浦島草だろうか?と、さらに数枚の写真が送られて来ました。

私は誰でしょう

浦島草は釣り糸のように花の口から蔓が垂れるのが特徴で、これは違うようです。同じ天南星の仲間では蝮草があちこちで見られる、と川越の山野草マニアが教えてくれたので、ウェブで検索しました。なるほど蝮草は地域によってさまざま変種があるらしく、錦織さんはこの鉢を名和町で買ったという話でしたから、大山(だいせん)や松江の鍵語でも検索してみましたが、どうも葉の形は武蔵鐙のそれで、蝮草とは違う。

緑色のムサシアブミ?

ウェブ上の画像は説明が合わないものもあり、天南星属の判別は難しいことがよく分かりましたが、どうやら武蔵鐙には、花が暗紫色のものと緑白色のものがあるらしい。雌雄異株であることも分かりました。秋には玉蜀黍のような形の真赤な実をつけます。

登山中に人けのない林の中などで突然この花に出くわしたら、ちょっと不気味でしょうが、見慣れてくると面白い花ですね。花に見えるのは苞で、その中にある芯のようなものが真実の花穂です。この後、曲がって覆い被さっている部分が伸びて靱の蓋のようになり、仏像の光背を思わせるので、仏炎苞と呼ばれます。

我が家で仏炎苞の花をつけるのは、白いスパティフォーラム。観葉植物で、冬は室内に入れるのですが、今年は早々と3月から2輪も咲き始め(通常は初夏に咲く)、困ったことに花が熟すと加齢臭のような臭いを出す(熱帯雨林では昆虫を惹き寄せるのでしょう)ため、やむなくベランダに出しました。未だ寒いようで、葉が黄ばみながらも健気に咲いています。