中世文学会大会129

中世文学会春季大会2日目。初日のオンラインがスムーズだったので、今日の研究発表も聞く気になりました。1本目は北条暁子さんの「臍の緒を自ら切る女院たちー待賢門院璋子の吉例と院政-」。『古事談』が伝えた噂を「実証」した角田文衛氏以来、璋子の生涯は数奇なものと捉えられ、崇徳院出産時に自ら臍の緒を切った(『長秋記』)行動にも深い意味を読む説がありましたが、史料を検討し、その誤解を解く論。物語や日記文学の人物関係を正しく理解する上で、重要だと思いました。

2本目は内田澪子さんの「『貞観政要』享受の一様相」。特に仮名文に翻訳された『仮名貞観政要』について、北条政子菅原為長に作らせたとの伝承は事実ではなく、為長の子孫秀長、清原業忠あたりの講義録がもとになったのではないか、文禄4(1595)年の奥書を持つ伝本の書写者梵舜も、その縁続きであると考証しました。源平盛衰記本文の流動と絡んで、私にはたいへん有益な発表でした(今日は視聴だけの心算だったのですが、質問に手を挙げてしまい、むさ苦しく紙の積まれた仕事部屋が画面に出てしまって、後悔しきりです)。『仮名貞観政要』が通読できるようになったことも知り、早速取り寄せの葉書を書いていたら、研究仲間から、感想メールが飛び込んできました。

午後も聞いてみました。和歌の研究は、軍記とは懸隔が大きいので却って為になります。廃品回収車の大音声に邪魔されたり、突然の夕立に干し物を取り込んだりしながら、終日いい勉強をしました(参加者は200人弱)。感無量なのは発表、司会、事務局と、女性の活躍がめざましいこと。但し、講演・シンポは男性、発表や裏方は女性、という傾向が固定化されないように留意して欲しい(以前、委員会でもそう発言したことがある)。無理なマイノリティ操作には反対ですが、多彩な領域の人選と同程度には性別にも配慮を。