阿波国便り・忍冬篇

徳島の原水民樹さんからの花便りです。

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スイカズラ(忍冬)

昔読んだ英国の田園小説(もう題名も作者も、あらすじも忘れてしまいましたが)で、若いカップルを取り巻く緑の中にこの花の甘い香りがずっと漂っていて、結婚式当日、花嫁が着付けをしている部屋の窓から、新郎がすいかずらの花を1つかみちぎって投げ込み、「ぼくの○○(ヒロインの愛称。ハッチだったかしら)。見てもいいかい」と声をかける場面がありました。それが素敵で、そのためだけに結婚したい、と思いました。

白い花は日が経つと黄色くなり、金銀花という別名の由来になったらしい。何故か蚊がこの花を好み、夕方などよく集まっています。

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箱根ウツギ

【この花は、関西や四国ではほとんど見かけない木です。母も50歳代で初めて実物を見たと言っていました。(原水民樹)】

写真は箱根卯木と呼ばれる木(しかし特に箱根とは関係がない)で、古くは錦帯花と言ったようです。『平家物語』の人物を花に喩える『平家花揃』という小品(室町時代成立)では、藤原隆房をこの花にたとえています。八重咲きもあり、庭木によく植えられます。かつて小石川に住んでいた頃、護国寺の鳩がベランダに糞をするので追い払っていたのですが、ある日、この花を2.3輪咥えてきて手すりに置いていきました。蜜を吸うために食いちぎったのでしょうが、何だかお詫びのしるしのようで、心が温まりました。