よみがえる承久の乱

京都文化博物館特別展示「よみがえる承久の乱」の図録を取り寄せました。展示は4月6日~5月23日の予定でしたが、緊急事態宣言発出、延長によって休館のまま終了することになったのです。図録を見ると、個人蔵も含め多様な資料が120点以上出ていたようで、少々詰め込みすぎの感もありますが、後鳥羽院及び承久の乱をめぐっては、それだけ多面的な問題が、未開拓の部分を抱えたまま存在しているということでしょう。

図録には学芸員の長村祥知さんの総論のほか、梅澤惠さんの『一遍聖絵』、貫井裕惠さんの密教修法、西谷功さんの俊芿の宗教活動に関する論考も載っています。私は中でも、この半世紀以上所在不明になっていた『承久記絵巻』全6巻に興味がありました。近世初期の奈良絵巻です。承久の乱の絵巻は寡聞にして今まで知らなかったのですが、軍記物語の絵巻・奈良絵本が盛んに制作された頃のもので、詳しく調べれば同時期、同工房での作品を認定できるのではないかと思われます。

なお展示10の京都文化博蔵の長門切は、かつて紹介された翻字を孫引きしているようですが、脱字・当て字違いなどがあり、自前で翻字して欲しかったと思います。今回鮮明な画像を見ることができ、ミセケチや誤字があることも判って、改めて長門切を考える手がかりが増えました(「最古の源平盛衰記本文」というキャプションは不正確)。

昨晩、YouTubeのニコニコ美術館で約2時間、展示ガイドが放映されました。絵巻の部分的なアップなどは有難かったのですが、PCを抱えて従いて歩いた男性スタッフが、無意味にやたら高笑いするのが不愉快でした。解説者がハンドカメラを持って、独りで歩いた方がよかった。本展示の独自性、狙いなどに絞って、再度実施してみては如何。

図録通販の方法は、京都文化博の公式サイトに載っています。