労働の対価

逃げるは恥だが役に立つ」(略称「逃げ恥」。最近のドラマにはむやみに長いタイトルが多い。ラテ欄を独占するための作戦だとか)というTVドラマが放映されていた頃、エノキさん(家事代行業です)とその同僚たちは、たいへん共感したそうです。

中でも彼らの間で盛り上がった話題は、なぜ結婚した途端に家事は無料労働になるのだろう、というものだったらしい。その時は古くて新しいテーマだな、と聞いていたのですが、介護現場を取材したNHKドキュメントが、結論を、もはや現場の美談に頼らず、我々の負担を増やすことを考えるべきだと結んだのを視て、待てよと思いました。

定年後2年間、区の地域包括ケア推進委員会に出て、いろんなことを知りました。介護職の給料が安すぎるという話が出た時、「そんなには安くないですよ(介護職の希望者が集まらない理由はほかにもある)」という意見と、「安すぎる。家族を養えない」という意見とが出て、前者は中年の女性委員、後者は若手の男性委員だったことを思い出しました。TVドキュメントが示したグラフでは、介護職の平均給与は他の企業の約7割でしたから、決して高いとは言えませんが、両委員の見解の相違はいま思えば示唆的です。

私は介護職に人が集まらない理由は、給与額だけではないと思っていますし、「我々の負担を増やす」と、未だ給与所得のある男性の口から簡単に言われると、むっとします。介護保険は、もはや当初に謳った理念を果たせていない。家事や介護の労働対価が低く抑えられる理由、その根本的なところから考えないと問題は潜在化するだけでしょう。

ところでエノキさんは、「逃げ恥」の主役2人の演技がリアルすぎると感じた理由が、婚約発表報道を見て呑み込めたそうです。朝ドラ「ごちそうさん」の主役2人の演技についても、同様な雰囲気だった、とのこと。