川越便り・ダリア篇

子供の頃は、ダリアはあまり好きな花ではなかったのですが、最近は品種改良が進んだようです。NHKTVの「プロフェッショナル」という番組で、ダリアの新種開発で有名になった父子2代を取り上げたことがありました。秋田の雄和町に広大なダリア園があるらしい。父親の鷲沢幸治さんは元船乗りで、寄港地で見たダリアの花が印象に残り、やみくもに栽培を始め、軌道に乗るまでは家庭をも顧みず、当初は家族から白眼視されたとか。今では息子の1人が、後継者をめざして手伝っているそうです。

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秩父両神ダリア園にて

面白かったのは、父子で新品種開発の方法が異なること。父親は虫媒に頼り、自然交配でできた変種が翌年咲かせた花から、いいものを選んで残す。そのためには、残したい1本の周囲の花を根こそぎ抜いてしまうというのです。息子は人工交配し、事後は袋を被せておくというやり方です。父親のやり方は効率が悪いし、残酷なようにも見えますが、偶然の面白さがあるという。2004年には仏蘭西の国際コンテストで入賞し、「黒蝶」という豪華な大輪が有名になったらしい。茎を長くし、臭みのある葉は取り除いてしまって、いかにも人工的な環境向き(ビルのホールに置く盛り花や、モデルが片手に持ってランナウェイを歩くためなど)に仕立てたようです。

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秩父のダリア

ダリアが活けにくいのは、日にちが経つと周囲の花弁が萎れて目立つことです。毎日花弁を抜いてやらないと、全体にみすぼらしくなってしまう。ホールの盛り花やモデルのアクセサリーなら構わないでしょうが、家庭で愛されるにはもう一工夫欲しいところ。