秋草の園・その2

川越の山野マニアの花便り続編です。

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秋桐

この花は見た覚えがないな、と思って調べると、シソ科で、その仲間には私がサルビアの一種だと思い込んでいたものもありました。

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段菊

これもあまり露地では見かけませんが、大ぶりにばさっと活ける、近代ビルの盛り花の中に見たことがある気がします。外来種だと思っていましたが、秋桐ともども日本風の名前がついているところから推すと、以前から栽培されていたのでしょう。未だ蕾です。我が家では春先には紫系統の花が多いが、秋は赤や黄色など暖色系統の花が多い。でも考えてみたら、川越では周囲に落葉樹が多く、紅葉の中で見れば寂しくないのでしょうね。

鳥兜や竜胆はないのか、と訊いたのですが、ないようです。鳥兜は毒草ですが、剪って活けると、ほかにはない存在感のある花です。竜胆は花屋で売っている頑丈なものでなく、林の下草に混じって、草紅葉しながらそっと咲く姿が愛おしい。益子の浜田庄司記念館で、足元に咲いていた一輪を思い出します。

枕草子』で、春の花尽しが木の花ばかりなのを不審に思ったことはありませんか。俳句の季語でも「草の花」「花野」は秋。思うに日本古来の春の草花は菫くらいで、後は外来種が多かったのでしょう、紫雲英も蒲公英も。それに対して、去りゆく彩りを惜しむ秋の野は、萩や薄、苅萱なども含めて草を掻き分けながら歩くのが万葉時代以来の楽しみ方だったのです。きらめく露や、虫たちの声をも心に留めつつ。