いずみ通信45

和泉書院の宣伝誌「いずみ通信」45号が来たので、関心のあるところを読んでみました。巻頭は吉田永弘さんの「「尊敬」形式の成立」。助動詞「(ら)る」が尊敬の意を持つようになった過程を「主催」という概念を導入して考察したもの。著書『転換する日本語文法』(本ブログ2017/10/4,2019/3/3でも紹介しました)のエッセンスです。

日比野浩信さんの「古筆の資料的価値と文化的価値」は、『古来風体抄』の新出断簡2葉を紹介していますが、古筆切の紹介は単独で扱わず、ツレの出るまで待つことにしているとか、古筆研究者は美術的価値をも、書家や古筆愛好家には文学としての内容にも注目して欲しいとの提言には共鳴しました。

稲田秀雄さんの「新出・宝暦名女川本(能研本)から見えること」は、山口に伝わる鷺流狂言の台本の一部が発見され、その内容には、近世狂言の中央と地方の関係を考える手がかりが多く含まれていることを報告したもの。坂口弘之さんの「満仲と仲光」は、金平浄瑠璃のヒーローである四天王の形成過程解明の難しさ、明暦万治頃の江戸では浄瑠璃本が大量に出版され、佐渡や東北の芸能とも交流したことを述べたもの。院生時代、『国書総目録』の補助アルバイトで書誌調査をした時、くたくたになった浄瑠璃本に出逢うと、扱いに困惑したことを思い出しました。

井上さやかさんの「さまざまな「持統天皇」像」と石尾和仁さんの「古墳の再利用と「将軍塚」」は、自分の専門から離れて面白く読めました。老後は消費者として古典を楽しみ、気ままな旅に明け暮れるはずでしたが・・・せめてこういう、こぢんまりしてはいるが想像力を広げてくれる文章によって、窓を開けておこうと思いました。