信濃便り・揚羽篇

最近、ネット上で「あつ森」という語をよく見かけますが、てっきり一ノ谷で直実に討たれた平敦盛のことだと思っていました(当然でしょ?)。じつは「あつまれどうぶつの森」というサイトの略語だそうです。初夏になっていくこの季節、植物だけでなく小動物も、生を楽しみ始めました。

長野の友人から、メール添付で揚羽蝶の写真が来ました。やや暗いのは、明け方の室内で撮ったからです。新聞紙は勿論、信濃毎日。

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生まれたての揚羽蝶

[一昨日、妹が育てていたチョウが羽化し、濡れた羽が乾くと、飛び出して行きました。飛び立つ前、体を休めている写真をお送りします。カラスアゲハだそうです。]

友人の一家は、もう子供たちは独立し、故郷にUターンした70代の3人暮らし。地元の文化財保護など忙しいのに、何度か失敗しながら揚羽蝶の孵化に挑戦しているのは微笑ましく、共感を持ちます。子供の目がなくなったからこそ、やってみたいことがある。

揚羽蝶は平家の紋所でもありましたが、蝶の中でもやはり特別に思えます。子供の頃は紋白蝶、紋黄蝶、それに酢漿草につく紫蜆が、身辺にありふれた蝶でした。夏が近づくと、揚羽の仲間がひらひらと舞い出てきて、その度にはっとしたものです。キアゲハ、タテアゲハ、アオスジアゲハ(ヤブカラシの花が好き)、カラスアゲハ(鬼百合の花によく似合う)・・・今でもたまに、彼らに出会うと胸がときめきます、その日は何かいいことがありそうな。

我が家でも鉢植えの金柑の木に、蛹が出現したことがあったのですが、ある日忽然と姿を消しました。雀か鵯に食われたのでしょう。あいつら梔子の青虫を退治してくれるのは、嬉しいけれど。