荻野検校

尾崎正忠さんの『増訂版 荻野検校』(荻野検校顕彰会 限定500部 非売品)が出ました。林和利さんの監修です。初版は1976年に出され、入手しにくい本でしたが、その後『平家正節』の影印が刊行され、荻野検校の業績が見やすくなったこともふまえて、増補改訂した伝記が出たのは、喜ばしいことです。

荻野知一(1732~1801)は広島に生まれ、6歳で失明、鍼の修業のため京都へ行き、そこで前田流平曲と波多野流秘事を学び、明和2(1765)年、検校となりましたが、明和8年に尾張藩主に招かれて名古屋に移住。多くの弟子を育て、尾崎家と姻戚関係を結び、平曲譜本の編纂校訂を思い立って、安永5(1776)年に『平家正節』を完成させました。この荻野検校の事績が、現在に到る名古屋平曲と、津軽系も含めた晴眼者伝習の基になっているのです。

それゆえ、現代の私たちが体験できる平曲(平家語り)は、荻野検校なくしては伝わらなかったと言っても過言ではありません。初版刊行の際には故渥美かをる先生の御助力があったようです。今回は、名古屋の平曲保存に尽くしている荻野検校顕彰会の活動が詳しく記され、いま平曲の保存伝承はどんな状態にあるか、よく分かります。

お問い合わせは 名古屋市中区新栄2-6-13 (社)荻野検校顕彰会 まで。