中世文学研究会

母校の大学院の中世文学研究会に出ました。参加者は現役の院生からOBまで約20人、豪雨で山陽新幹線が不通になったりしていましたが、岡山、神戸、名古屋からもOBがやって来ていました。発表は2本。石井悠加さんの「真宗絵巻『拾遺古徳伝』の法然詠歌」と木下華子さんの「『西行物語』構想の方法―名所歌との関連をめぐってー」です。

前者は、複雑な諸本関係にある法然伝の中でも、親鸞法然の関係を強調する『拾遺古徳伝』(正安3年1301成立)を取り上げ、和歌と絵の検討から、編集意図を考察しようとするもの。『慕帰絵』で同様のテーマを追究してきて、さらなる発展を試みているようです。緊張のせいかやや聞き取りにくいのは、改善の余地あり。

後者は文明本『西行物語』をテキストに、鳥羽院の死去や西行の複数回の旅について虚構が設けられていることを取り上げ、その構想は名所歌・定数歌に基づいて立てられたのではないかという仮説を述べたもの。そして作者は、念仏聖よりも貴族社会の知識人の方が可能性が高い、と締めくくりました。西行の専門家が何人も来ていたので、いろいろな角度から質疑応答があり、名所歌に結びつける必然性はかなり薄められたようです。多様な先行研究を読みこなし、大量の内容を早口で、しかも分かりやすく述べた発表でしたが、いい発表はいい議論を呼ぶものでもあり、もともと先輩も同輩も決して甘くないのが学風なので、結論部分の再検討が必要になったところで、散会しました。

外へ出てしばらくしたら土砂降り。今日の発表は2本とも絵巻に関連があり、私も最後の職場で絵画資料を勉強するはめになったのはよかったな、と思いながら帰りました。折り畳み傘だったので、帰宅したら半身ずぶ濡れ。TVニュースが中国・九州の土砂災害警戒情報を連呼していました。