朋有り、遠方より来たる

長野の友人が上京のついでに我が家へ寄ってくれて、久しぶりにあれこれお喋りをしました。お土産は名産の杏。見事な大粒で、友人の妹さんから、種を埋めれば必ず生えます、との伝言と、宇和島信用金庫が企画した『豊姫物語』という絵本が添えられていました。

絵本は、延宝元年(1673)、宇和島藩から松代藩江戸屋敷へ13歳で嫁いだ豊姫が、故郷の形見に持って行った杏の種を、夫の真田幸道と共に育て、それがやがて松代にも広がって、藩を支える産業の基ともなった、というお話です。豊姫が松代の杏の里を見たのは、50年以上添い遂げた夫の死後だったそうで、彼女は晩年の6年間を松代で暮らしたとのこと。杏は信濃の名産、とばかり思い込んでいて、四国の宇和島との間に、こういう関係があったとは知りませんでした。

4時間ほどお喋りした後、大通りに最近開店したカジュアル・フレンチという赤い暖簾を出した店に行ってみました。エスカベーシュが美味しい。白ワインを飲みながらメニューを見たら、何と餃子がある!シェフが宇都宮出身なので、とのことでした。ニラがたっぷり入った、ふつうの大きさの餃子です。フレンチ風の調味料入れに入ったラー油の辛さが、半端でない。仏蘭西語で餃子は、何と言うのかなあと考えながら、2個ずつ平らげました。

友人は食道の手術をし、私は胃腸の具合をいたわりながらではありますが、未だこうして、街でその日の美味を試すことのできる楽しみを、大事に抱えて駅前で別れました。