書陵部新収『古筆手鑑』

田代圭一さんの「〈資料紹介〉宮内庁書陵部所蔵『古筆手鑑』(新収本)」(「書陵部紀要」69号)を読みました。平成19年2月に、『思文閣古書資料目録』に出た『古筆手鑑』が書陵部の所蔵になり、このほど調査が一通り済んだので、書誌や伝来、内容などを紹介したということです。合計221枚の古筆切が入っていますが、制作当時そのままではなく、一部改変が加えられたらしいとあります。

一旦は池田継政に嫁ぎ、伊達家に戻った心定院和子の名が箱書に見えるところから、元文2年(1737)~延享3年(1746)に制作されたこと,また添付のメモにより昭和24年、市場で琳琅閣が落札したことが知られます。内容は豪華なもので、長門切も1葉含まれており、かつて私も、平成20年度教育研究報告書『國學院大学で中世文学を学ぶ 第2集』の中で紹介したことがありました。その時は思文閣の目録に掲載された写真に拠り、現物を見なかった(買うあてがない)ので、伝来のことや界の有無などが分からないままでしたが、源平盛衰記巻27「天下餓死」の1節に当たる6行(この箇所は長門本もほぼ同)でした。

新出の長門切か、とどきどきしましたが、既知のものです。しかし最も安全で、その価値に相応しい所へ、終の棲家が定まったのだなあと,親心めいた安堵感に浸りました。