文字摺

買い物の帰りに、ビルの軒下の僅かな土に、もじずりの花が咲き始めているのを見つけました。本来、芝生など日当たりのよい平地に生える蘭科の草です。葉が芝とそっくりなので、手入れのいい庭園でも除草を免れ、季節になると、小さなピンクの噴水のようにいきなり咲き出し、親指姫のように小さくなって、下から見上げたくなる衝動に駆られます。三宅坂国立劇場の裏や母校の学生会館前の芝地にたくさん生えていましたが(しかし密生はせず、ちょうどいい距離を置いて屹立します)、今はどうなったかしら。

花穂が螺旋状に捩れて咲くのでねじばなとも呼ぶようですが、「みちのくの信夫文字摺・・・」の歌から採った名前の方がしゃれています。小さいながらも蘭なので、穂の中の花を1つ1つよく見ると、カトレアと同じ形をしています。塊根が地下で冬を越すようですが、花の後、細かな粉のような種子ができます。鉢で育てたくて、一昨年、路傍で種のついた茎を抜いたら、近所の子に「お花を採っちゃいけないんだよ」と注意されました。とっさに説明出来なくて、へどもどしました。そのせいか我が家では、芽は出るのですが咲いてくれません。